名手 今選手の教訓(2)
今選手より田舛への手紙
(昭和十六年十月出版の田舛彦介著“私の卓球道”より)
第二十一信(昭和十六年一月七日)
二十七世紀(注、日本式で当時は云った)の新年を迎へて益々御健勝のことと存じます。新年初頭の東郷優勝旗争奪戦は豫想通り早立戦となり、早関戦となりましたが、優勝は早大のものとなりました。
関学は崔の不調と、ラバーに対する研究不足と無策で易々と早大の軍門に降りました。
「プレーボール」と同時に僕はレシーブ。(ジャンケンで勝ってレシーブをとりました。それはゲームの最後のサーブが僕に来るからです)
フォアのカットでとって崔のミドルに返球、バックに打って来るのをバックのストレェトで崔のバックを攻め、返ってくる球をもう一球崔のバックを衝けば、崔ミートせず、返ってくる球高し。それをフォアでミドルよりバックに決定球をすれば崔軽し。
焦って強引に来るのを、カットを左右に切って返せばミートせず、ミス多し。崔自信なきが如く、初めから終りまで僕の薬籠中のものとなりました。無策、二セット目あたりから何とか策戦を変へて来るものと思ったが、崔は僕のバックを攻める以外に手をもってゐない。
僕のバックのカットは曲り、又切れて打てない所を逆に打たれては最早や策なし。ホルツリヒターに崔君が敗れた時にも、バックに攻めて抜けず、フォアに粘ってバックに打てなかったのが崔君の敗因だった。
複に入り一セット目、崔僕の球打てず、上げて須山に決められ、二セット目、西山又ラバーの球打てず、楽々と昨年の雪辱は成りました。
オールラウンドプレーの勝利。堂々たる勝利であったことを断言します。「ラバーに活路を見ひ出した早大カット陣の勝利」如何ですか、この文句は。
ラバーで打つ時には普通のコルクで打つ時と違ひます。貴兄の叔父さんが使用してゐるのでお解りでせうが、僕はラバーに依る戦法打法に新しい方法を見ひ出す ことが出来て喜んでいます。一ヵ月の研究でしたが、サーブも外人が出す様な鋭いのは出ませんが、崔、西山君が複で空振りしたり、ラケットの角に當ててミス したのは愉快でした。(中略)
最後の試合に崔、西山組を破って優勝出来た事はいい卒業の思ひ出です。
ラバーはやりにくく、打つ時にスピードは出ませんので考へさせられますが、それはそれで打ち方によって心配なく、未だ未だ、研究の必要を痛感致します。(後略)
第二十二信(一月二十四日)
お手紙有難う御座ひました。優勝の御報告を詳しくして頂いて恐縮です。ラバーについての意見とか、私の卓球に對する御注意等も後程試験が終ってから御ゆっくり申上げたいと思ひます。
ラバーでも種類が沢山ありますから、それによって又影響することも大きいですが、問題は廻転とバウンドの程度如何にあるのですから、これについても私のやったものを御報告致しませう。
「バックハンドを余り使ひ過ぎるな」これは私も絶対に支持したいものです。フォアを主にしてバックを従に使ってこそ、ほんとの實力を出せると私は私に関する限り考へます。
理由も後程述べます。(フォアとバックとでは攻撃範囲に非常な差のあることを御わかりになれば、私の後に書いた事は解決つくと思ひます。)
第二十三信(二月二十八日)
田舛さん。永い間御無沙汰致しました。
一月二十一日附の貴君よりの御手紙に第七回西日本国際式選手権の際のラバーラケットのことがあり、それに對して私から試験が終ったら私の考へてゐた事を御 一報すると御約束致した筈でしたが、もう一ヵ月にもなりますので、私以上にマスターして、御研究なされたことと思ってゐますが如何ですか、其後の調子は…
西日本の大會には指を痛めてゐたのによく堂々と勝たれましたね。それにしてもゲーム中、ラバーとコルクを両方を用ひたと聞いて、いささかびっくりしました。
何と云っても試合中に両方用ひて勝てる位なら山口県の地方の人はゴム張りラケットに對して余程研究が足りないと思ひました。
ラバーでやるなら初めから終りまでラバーでやり通せるやうでなければならないと思ひます。
コルクに変へる時には、その人が既に萬策盡きて致し方なくなって、ゲームを捨てた時においてやることではないか、と考へるやうです。
然し又相手があんまり弱くて何をやっても勝てる時にも可能と考へます。
ラバーを使ったプレーヤーが自分の思ふ様にゲームが出来ずに両面を使ってゐる時には、精神的に余裕はなくなっている時ですから、相手がほんとうに強いプレーヤーなら、ぐんぐん押して来ますから、結局策の施しやうもなくなるのが當然の様にも考へられます。
逆襲。これは無理に強く打つ必要はないと思ひます。要するにボールのバウンドが違ひますから(コルクと)返球する場所をよく考えて、大きくバウンドさせてやっても平気だと思ひます。
却って強く打つと効果はなくなる様にも考へられます。そして又何本も強く打つことは不可能ではないですか。(コルクに對して)
カットした場合。サーブでも自分が廻転をかけてやった時には、返って来た球はレギュラーではありませんから、自分はその球を強く打たずに、よく球を見て軽く返球すべきだと思ひます。
自分が切って相手が打てず、高く上げて来た球は、強く打とうとしたら失敗します。
何故ならば、バウンドが違ふし、打ってもスピードが出ないのですから、むしろ軽く返した方が向ふへ行ってから前進力がないので、相手がボールに對して力の入れ方がよく判らないから、相手にとっては非常にやりにくいのです。
強く打つとラバーにボールがひっつくので、アウトしたり、角度があまり違ってネットに引掛ったりすることが非常に多いのです。それにスピードがないの で、相手がカットの選手などでしたら、ラリーが続きますが、その時に、あはてて強く打って早くきめてやらう等と考へてはいけないので、むしろゆっくりと落 付いてやらなければなりません。それに又こちらから仕かける時には、早くなってはいけないのです。
サーブは上からぶっつけるのがいいと思ひま す。圖解するといいのですが、私は圖が下手ですのでかけませんが、左に持ったボールを上から落すと同時に、ラケットを下から上にあげて引っかけるのです。 左手を上にあげます。そして、右手のラケットを右斜めにあげる時に上のボールを下にぶっつけるのです。するとその球は相手のコートに入ったら右に曲がりま す。(相手から見て右、即ち相手のフォアへ)右に曲るその球を、相手が力を入れずに軽く返球して自領コートに入った時は、右に曲らずに左に(自己の)曲り ます。ですから、相手の右に曲る球を出してやった時に返って来た球は左に曲るのです。
反對の場合、即ち左に曲る球を中田君(早大)のやうに出し た時には返って来た球は右に曲ることは明らかです。自分がカットで守ってゐて、逆襲する時には、強く打たなくても高くボーンと深く打つと、関学の永田君の やうに、押さないで強く打つ人でしたら、ボールが下へさがらずに、途中で流れてしまひます。
所がこちらから強く打って、低く入れると、こちらの コートに強く返ることになるのですから、コルクとはその点が違ふやうです。それに又ボールは硬いほど、効果があります。軟いと効きません。又ラケットのエ ボ(今さんの癖でイをエと書かれる)が三週間かそこらでこわれて来ますが、最大の缺点です。ゴムは硬い方がよく切れますが、打つ時には打ちにくいです。や はらかいと、攻撃は楽でもカットは切れません。
切る時には直角に切ってストップするやうな球を出すのでしたら、コルクの方がよく効きますが、ラバーは左右、横に曲げることの出来るのが最大の特徴ですから、あまり強く切らずに軽く右、左に曲げたらよいので、その球を相手があげて来た時に決定球を軽く打てばよいのです。
私の卓球をよく研究されてゐられる貴君はもう既にこんなことはお解りになってゐると考へてゐますが、小さい球などはやはり切って返したらよいと思ひます。
相手につられて早くならないことです。
私の卓球をやるにしても、身長の関係もありますので無理とは思ひますが、私は決して不合理にはやってゐないつもりです。相当誰にでも出来るやうに合理的に研究してやってゐるつもりです。(中略)
何だかわけがわからない圖や説明になって来ましたが、御研究されてゐる貴君のことですから、何かヒントがあることを期待して、あまり駄辯になりそうですから、これで失禮致します。
四月一日から會社に出ます。社會人になっても會社の人を指導して少しづつやるつもりです。では貴君もしっかりラバーの研究をやって下さい。そして何かいいことがありましたら教へて下さい。
サーブでアンダーソン(米国選手)がやってゐたやうに左下から、右斜上にボールをもって行って、右斜上から直角程度に下ろす、ラケットにぶっつける球は、短く出すと相手のコートに入ってから左に曲がり、伸びませんから左の人には効くやうです。研究して見て下さい。
第二十四信(四月十二日)
大分暖かくなって参りました。二十一日附、お手紙中、日本式にはラバーを使用しない方針を貴兄御採りの由、私も未だよく研究はしてゐませんが、私はとにかくラバーでやってゐます。
随分、練習とは遠ざかってゐますが、時々学校で須山君や、現役の選手と試合しても一度も負けません。ラバーの威力は偉大なりと云うべしか。「ラバーを征服 しても今さんを征服できないのだ」と部員はコボしますが、そうでもなさそうで、ラバーでやられるので、やりにくいらしいです。
攻撃には確かにしにくいやうですが、戦法を変へたら又面白いです。
ゴムの性質によって非常に差がありますが、私のはロンドン製のもので、これがこわれるまでは一寸負けないつもりです。(心臓が強いでショッ、OBになりましたからネ)
ゴムを張って二十七匁位です。木は厚く、硬いものを使用してゐます。
日本式の時には比較的厚くて、少し軟いものを用ひましたが、国際式になってからは特にゴムを張るやうになってから、硬いもので厚い木で軽いもの、随分条件は難しいですが、理想的です。
最近船を造る時に用ひる、ごく軽いベニヤ板を見つけましたので(勿論ラケットを造る所で、少ししかありませんが)それ(三枚のベニヤ)にゴムを張って、やって見るつもりです。何匁になるか解りません。二十七匁にとまれば大成功だと思ってゐます。
ゴムを張ったり、はがしたりする時にベニヤですと曲りませんので便利だと思ってゐます。やって見なければ結果はわかりませんが、よかったらゴムも三種類位 もってゐますから、それを全部張って、試合の時にも庭球のやうに、ラケット四枚位持って行って、全部を使って見るつもりです。
ゴムは大体重量とか、グリップに大なる差異のない限り、別にラケットを変へても、コルクの様にやりにくいと云ふことを感じないやうです。これは實業界に入ったからと云はれるかも知れませんが、實際に研究して見てそうです。
攻撃を貴兄御始めの由、大いにやって下さい。攻撃は相手の逆をついてから、ゆっくり打てばいいわけで、別にそんなに強い球を打つ必要もない、と思ひます。要するに相手の虚をつけば、それでいいわけですから。
叔父様も益々好調とか、うらやましい限りです。私なんか會社に入ってからは、ほんとうにラケットを握って、とび廻ることもそう出来ないやうです。いまのうちは暇がないのかも知れませんが…
五月に入ったら實業のリーグ戦があって、日立でも出ますので、日本式でやらされそうです。ゴム張りでやりますから、結果がよかったら又お知らせ致しませう。今日はこれで。おそくなって失禮致しました。何しろ會社の新米は多忙ですから。
第二十五信(四月二十六日)
昨年四月中華台北よりの帰途、御世話様になった時のとこを憶ひ出して感慨無量です。
あの時は愉快でした。
日本式に對するラバーの攻撃力の劣っている点は、私も二、三回やって見て、確かに不充分の点を認めます。
しかし、その外に何かコルク以外の優れた点を見え出さうと思ってゐます。(見えの「え」はこれも東北調)
日本式は會社でやってゐますので、先日引張り出されてやって見て、實にやりがいのないのにがっかりしました。フォーム等も別に苦心して整へる必要もない位ですからネ。
會社に入って文書の方をやってゐまして、私の所はとにかく、商法、特に會社法と首ッタケです。勉強になりますので将来のためにはいい所かもしれません。
四月には運動會ですので私は俵かつぎに出ます。優勝候補です。勿論チーム十名です。個人なら見込みはありません。俵につかまって走る方ですから。(中略)
では又日本式に對する御意見、何か変ったことがありましたらお願ひします。ラバーの種類によっても異ると思ひますが、ラバーはとにかく板が固くなかったら駄目だといふ事ははっきりわかりました。
第二十六信(五月二十四日)
御手紙有難う御座いました。相変らず御活躍御よろこび申上げます。後輩のコーチも御熱心になされてゐられる様子、後輩も良き先輩を持って喜んでゐることで せう。全く貴兄のやうな先輩を持たれた後輩は幸福と云はねばなりません。光田君とやら、貴兄が折紙をつけられたのなら先ず間違ひない大選手の卵でせう。
カットを四ヶ月、しかも貴兄の云はれる通りにコーチを受けてゐるとは感心致しました。
カットと云ってもフォアから對角線(相手のフォアへ)、フォアから平行線、同じくバックの對角線、平行線を自由に(程度の問題ですが)打てるやうになった ら、その球を切って返す球と(廻転はボールの下にかかる為に、落下と同時にバックする球)、普通に前進力のみをあたへる球(これは相手のボールの力を利用 する)の使ひわけをよくのみ込ますことが必要と思ひます。
そしてカットの選手は、ミドルの球はなるべくフォアとかバックの打法をとらずに、右足を前にして、コートの眞中に位置して、返球する様にした方がいいと思ひます。そしてミドルから相手のフォアにカーブさせる球も練習の要があると思ひます。
それからフォアでもバックでも、カットストップを練習します。カットの球をコート上で、二回以上バウンドするような球だったら、カットストップと云っていいでせう。
さて、これからいよいよロングになりますが、フットワークを速く変化させることはよくよく練習させて下さい。國際式においてはオールカットでは勝てませんから、光田君にはそろそろ打たせた方がいいと思ひます。
フォアを打つ時には、フォアに来た球を相手のフォアに切って返すか、又はフォアに押してカーブをさせて返して相手をフォアに寄せて、その球がフォアに来た ら、フォアに平行線を打つのを最初練習したらいいでせう。そしたらその球が返球されても、バックに来ますから、今度はバックハンドストロークを平行線でや ります。
フットワークは上圖の如くなります。(フォアの平行線は左足前で打ち、バックの平行線は右足前で打つ)
バックの平行線の時に も、フォアの時にも強く打つ必要はなく、要するに相手の虚をつけばそれがいいのであって、その球一球で得点するのは目的ではなく、こちらに平行線を打たれ て相手が逆をつかれ、漸く返球してもボールが上るので(この時は相手の体勢崩れる)、それをこちらで決定球とするのであるから、あわてずゆっくりと軽く打 てば、事足りるのである。
フォアの對角線は勿論練習しなければなりませんが、自領コートのバックに寄って、フォアで相手のフォアに打つ(平行線)事も練習しなければならないことは勿論です。この平行線を打つ時には、右足を左足の後(左)の方に引きつければ楽に打てます。
注(バックに寄り足りなくて、ボールが体に當りそうな時に右足を引けばそれだけ、身体が左に寄ることになって打てるわけです)、(この足を引くのは打つと同じにやります。楽に間に合へばその必要はありません)
カットからロングに移らすには、最初の練習には、カットの選手にロングの選手が貼って打ってやります。それをカットの選手は軽く打って見ます。それを又ロ ングの選手が返したら又カットします。そして一球カットしたら二球目には攻撃に出ます。それを繰返したら、だんだん攻撃の仕方が速くなって来ます。
この時にカットの選手が打つ時には、一球で決めやうとせず、確實にフォームを正して、軽く自分の思ふ所に打つことが必要。
卓球の球はフォアに打てばフォアに返り、バックに打てばバックに返るのが原則ですから、それに従って策戦を立てれば大抵間違ひありません。フォアに来た球を相手のバックにうてば(フォアハンド)こちらのバックに返ります。
その相手のフォアに打てば(バックハンド又はフォアハンド)又フォアと云った具合です。自分より下手な相手でしたらこれが確實に出来ますから、試合の時にも三回戦までは身体を動かす必要もない位です。
カットから入ったオールラウンドプレーヤーは恐ろしいプレーヤーになります。
光田君にしっかり御指導してやって下さい。私の文も分り兼ねるでせうが、御判讀して御研究の御参考にしていただければ幸甚です。
第二十七信(六月二十一日)
日本式に國際式に、何時も御健闘なされてゐる柳井の皆様には敬服致してゐます。十五日にはお芽出度う御座いました。
三連覇。連覇をするといふ事は難事中の難事です。例へどんなにうまい人でも、その日の調子でどう変るか知れませんから、三年間も試合の當日に、自分のベス トコンディションをもって行くその努力、そして細密な頭脳の使ひ方は、どうして凡人の出来ることではありません。まして實社会にあり、種々仕事に追はれて ゐながらの連覇は實に尊い記録だと思って敬服してゐます。
私は十五日に近県聯合日立卓球大會(日立工場主催)に出場、準決勝では東京の阿木選手を破り、決勝では其田(青商卒)を破って出た中村(日立、青商卒)を軽く退けて優勝しました。(中略)
ラケットはラバーを使用しました。
某選手は日本式では相当強い筈ですが、私の切ったサーブを取るか、ミスかでレシーブの球が上るのでハタイでしまひました。勿論軽かったです。日本式の選手は強いやうでも、案外だと思ひました。ラバーは絶対的に効果的なる事を立証しました。(中略)
「兵役」私は甲種合格でした。
ラケットを握って多くの試合に優勝させて貰ったのですから、今度は銃を擔って、國家への御奉公の出来る事を喜んでゐます。
十一月の神宮大會には出場出来ますから、最後の大會故、何とかやりたいと思ってゐます。(後略)
第二十八信(七月二十一日)
二十日附速達便本朝會社にて拝見、小生の御返信の遅れました事を全く相済まなく思ってゐます。
御返事遅れた理由は抜きにして…。お申越のこと、小生より前に差上げた手紙の中に御参考になるやうなものが御座いましたら、何でもどうぞ御自由に御利用下さい。
小生柳井の印象記と云ったものを書かうにも何から書いていいのか全く見當がつきません。四月、中華台北からの帰途、御邪魔させて戴いたのが御縁の始りでした が、あの時から貴君には随分と啓蒙させられました。貴君よりの熱心な研究上の疑問等を打明けられて、自分もどれだけ参者になったか知れません。
質問と同時に、又山口縣、廣島縣地方の卓球界の詳報を御送り下さいましたので、「地方卓球界の聲」と云ったものに触れ得た事も、貴君に負う所甚大でした。
最近では「柳井の卓球」と云へば、本部でも知られてゐる事でせうが、「柳井の田舛」と云った方が、すぐに「あの真面目な卓球の研究者」として、関東学聯の選手の間に知れ渡っています。
貴君よりの質問がある度に、小生早大の選手を集めてこの話をし、「一体貴君だったらどうする?」と、その問題を出し、それから小生の意見を皆に話すやうにして来ました。その度毎に選手は「田舛さんは感心だ」とよく申し、よく自分自身を反省してゐたやうでした。
貴君の様な人が卓球界に一人でも多くなったら、それだけ正しい卓球道の普及がなされることを私は信じてゐます。常に、柳井は勿論、日本卓球界の発展の為にとの誠意のもとに書かれた小生への数々の書翰は、後輩指導の参考書にしたい位です。
卓球で活躍した身体で、今度は銃を擔ふべく、落付かない寸暇を利用して、柳井卓球界の皆へ贈る本を書かれる、といふ報を聞いて、ただただ敬服するばかり。 何卒一日も早く脱稿されますことを祈ってゐます。そして貴君の小生に寄せられた御厚情に対して、深謝の情を益々深めるばかりです。
小生も入営前に、卓球入門者のために、何か書かうかと思ってゐまして、話を出しましたら、日本卓球協會でも協力してくれる様な話もあります。
多忙のために書けるかどうかわかりませんが、私のはショートはショートとして、誰かに書いて戴いて、カットは自分で書いて、皆で寄せ集めて一冊出すのでなければ入営までに間に合ひそうもありません。勿論あてにはなりません。
貴君がゐたら何かと御手傳ひと云っては変ですが、カット編「バックの打方」「フォアの打方」「足の運び方」「腰の使ひ方」を書いていただこうか、とも思ってゐたのでしたが…
それから寫眞は二枚同じものが手もとになく、何か卓球をしてゐる所を撮ったのをお送りしようと思って、机のひき出しをヒックリ返して見ましたら、変なのが、出て来ましたから、そのうちにお送りしませう。會社にゐて今日は持って来ませんでしたから。(後略)
[卓球レポートアーカイブ]
「卓球は血と魂だ」 特別記録 名手 今選手の教訓(2)
2013.12.01
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