4回にわたって攻撃対攻撃のときのレシーブの心構えを述べたけれど、以前よりレシーブがよくなったかな?
レシーブは試合のかなめ。レシーブのうまいへたで試合の結果が大きく変わってくる。「レシーブ番はチャンス」と思えるほど、しっかり練習をしよう。
さて、レシーブ番で得点をするには、レシーブそのものの技術はもちろん、4球目以後の技術がしっかりしていないとできないものだ。だからレシーブの強化をする場合、レシーブの練習だけでなく、レシーブからの4球目~6球目攻撃と、4球目守備からの6球目攻撃の練習を並行してやっていかなければ、真に効果的なレシーブにはならない。
ところが多くの中学生・高校生はもちろん、大学生の練習を見てもサービス+3球目やレシーブだけの練習はよくやっているが、レシーブから4球目攻守+6球目攻撃の練習はほとんどやっていない。そのためにレシーブ後のプレーの悪い選手が大変多くいる。
そのために本試合ではレシーブだけできても、次からの展開がうまくいかず、中盤からはレシーブのリズムそのものも悪くなって試合に負けてしまう選手が多くいる。また相手がサービスからの3球目攻撃がものすごくうまい場合もどうすることもできない。
そこで今回は、レシーブからの4球目攻守と6球目攻撃ができるようになる練習のコツを紹介しよう。
サービス、レシーブの戦術に幅ができる
試合で最後まで自信をもってレシーブをするには、レシーブしたあとの次のボールをしのぐ練習、次のボールを攻撃する練習をたくさんやることだ。この練習をやると確実に4球目のしのぎと次球の攻撃がうまくなる。そのため、今までは攻められたときには得点できなかったのが得点できたり、レシーブのときに相手に打たせてから攻撃する"後の先"の戦術がとれたりする、などレシーブの戦術にも幅ができ、試合がやりやすくなる。
また、スマッシュやパワードライブをしのぐ練習をすることで、サービスを持ったときにも余裕をもって大きいサービスを出し、相手に打たせてから攻めるサービス+3球目戦術がとれるようになったり、ラリー中にもスマッシュやパワードライブをしのいで反撃する、などラリー戦に強い選手になるものだ。最近、スマッシュや強ドライブを連発するとミスする選手が多いので、以前にも増してしのぎからの攻撃の練習は非常に効果が高いといえる。
真に思い切りのよい攻撃ができる
また、しっかりレシーブしてから4球目でしのぎ、6球目を攻撃する練習をたくさんやると、逆に思い切りのいいレシーブ攻撃や4球目攻撃ができるようになったり、試合中の攻守の判断が大変によくなったりする。
というのは「いつでもしのげる」という自信がこの練習で身につき、気持ちに余裕ができるからだ。そのため、攻撃するときは心配なく思い切り攻撃ができるし、守るときも守りに徹することができる。また、攻めるか守るかの判断も早くなり、体に無駄な力が入りすぎないため、攻守の切りかえも早くなる。
このようにしのぎを覚えるとプラス面が非常に多い。ぜひしっかり4球目をしのぐ練習をやってほしい。そして、試合中は守れるからといって消極的にならないようにすれば、相手にとって大変やりにくい選手になれる。
やさしい練習から始める
4球目のしのぎからの攻撃練習は、このように効果が高い。が、練習のやり方を間違えると一向に上達しない。そればかりか、他のレシーブに悪影響がおこる。
この練習を行なうときに大切なことは、まだしのぎの技術が未熟な選手は、いきなりむずかしい練習から入らないことだ。なぜなら、体の使い方に変なクセがつきやすく、大きく伸びなくなってしまうからだ。だからはじめはやさしい練習から入り、正しいしのぎ方をしっかり覚えることだ。
たとえば、ドライブマンと対戦したときにもっとも多いと思われる、ドライブをバックショートでしのぐ技術を覚えたい場合、まずバック前にカットサービスを出してもらい、バックのツッツキでバックに返す。それをバックに少し山なりのドライブをかけてもらい、バウンドの直後をとらえて、正確にストレートとクロスにショートで返す練習をする。
フォア側にきたドライブをしのぐ練習をしたい場合は、フォア前にカットサービスを出してもらい、フォア側で待っていて、フォア側にツッツキで返す。それをドライブでクロスに攻めてもらい、バウンド直後をとらえて正確にクロスとストレートにフォアハンドで返す。
次にストレートコースに打ってもらったのをクロス、ストレートにしのぐ。それができるようになったら、通常の位置からフォア前に大きく動いてレシーブし、レシーブの位置から一番遠いところにドライブをかけてもらい、それをしのぐ練習をする。というように練習していくことだ。
ツッツキ打ちや、ショートレシーブに対するスマッシュ、ストップレシーブに対する強打などに対しても同じやり方でしのぎを身につけていくことだ。そうして、まず各コースのボールに対する正しい体の使い方をしっかり覚えることが大切なことだ。このあと、試合と同じようにいろんなコースに打ってもらったのを、コースを決めて返したときと同じように返す練習をする。このような練習方法で行なうと正しい取り方を覚え、大きく動けるようにもなり、4球目でしのげるように成長する。
6球目攻撃もコースを決めてやる
守備から攻撃の技術を身につける場合も、コースを決めて繰り返し反復練習をやるのがいい。そうして、正しい動き方や正しいフォームをまず覚えることだ。そうすると無駄な動きが少なくなりコントロールも威力もつき、早く試合で使えるようになる。コースを決めてやる注文練習をしっかりやろう。
このとき注意することは、4球目を中途半端にしのぐのではなく、正しく打球してから素早く動くようにすることだ。それから、コースも厳しいコースに返すようにすることと、常に試合と同じ気持ちでやることだ。
このようなことに注意してやれば必ず4球目のしのぎから6球目攻撃もみるみるよくなるものだ。
しっかり踏み込んでからしのぐ
レシーブから4球目でしのぎ、6球目を攻撃するプレーで次に大切と思われることは、レシーブのときはよい位置までしっかり動き、よいレシーブをしてから4球目をしのぐことだ。こうするとより実践的で効果が高い。
ところが、ショートサービスに対し、この踏み込みを忘れている選手を多く見受ける。そのため、練習のときは3球目攻撃をしのげても試合になると相手によいボールを打たれ、しのげなくなってしまう選手が大変に多い。
ではどうしたら良いか。それは、練習の時から試合と同じようにしっかり踏み込んで良いレシーブをしてからしのぐ練習をすることだ。
また、これには2つのプラス面がある。1つは、実戦的ですぐに試合で通用すること。もう一つは、しっかり踏み込んでレシーブするため、払うレシーブなどレシーブ自体がうまくなることだ。
現日本チャンピオンの斉藤選手(明治大)は、しのぎの技術も抜群にうまいが、それは足をしっかり踏み込んでパッと払ったり、ツッツいたり、レシーブ後、一瞬わざと戻るのを遅らしてからしのぐ練習をするなど、練習を常に工夫しているからだ。だから試合で相手に思い切り3球目ドライブ攻撃をされても、レシーブ後の動きが速く凡ミスが大変に少ない。
みなさんも、工夫したレシーブ+4~6球目練習をたくさんやり、試合に強い選手になろう。
レシーブは試合のかなめ。レシーブのうまいへたで試合の結果が大きく変わってくる。「レシーブ番はチャンス」と思えるほど、しっかり練習をしよう。
さて、レシーブ番で得点をするには、レシーブそのものの技術はもちろん、4球目以後の技術がしっかりしていないとできないものだ。だからレシーブの強化をする場合、レシーブの練習だけでなく、レシーブからの4球目~6球目攻撃と、4球目守備からの6球目攻撃の練習を並行してやっていかなければ、真に効果的なレシーブにはならない。
ところが多くの中学生・高校生はもちろん、大学生の練習を見てもサービス+3球目やレシーブだけの練習はよくやっているが、レシーブから4球目攻守+6球目攻撃の練習はほとんどやっていない。そのためにレシーブ後のプレーの悪い選手が大変多くいる。
そのために本試合ではレシーブだけできても、次からの展開がうまくいかず、中盤からはレシーブのリズムそのものも悪くなって試合に負けてしまう選手が多くいる。また相手がサービスからの3球目攻撃がものすごくうまい場合もどうすることもできない。
そこで今回は、レシーブからの4球目攻守と6球目攻撃ができるようになる練習のコツを紹介しよう。
サービス、レシーブの戦術に幅ができる
試合で最後まで自信をもってレシーブをするには、レシーブしたあとの次のボールをしのぐ練習、次のボールを攻撃する練習をたくさんやることだ。この練習をやると確実に4球目のしのぎと次球の攻撃がうまくなる。そのため、今までは攻められたときには得点できなかったのが得点できたり、レシーブのときに相手に打たせてから攻撃する"後の先"の戦術がとれたりする、などレシーブの戦術にも幅ができ、試合がやりやすくなる。
また、スマッシュやパワードライブをしのぐ練習をすることで、サービスを持ったときにも余裕をもって大きいサービスを出し、相手に打たせてから攻めるサービス+3球目戦術がとれるようになったり、ラリー中にもスマッシュやパワードライブをしのいで反撃する、などラリー戦に強い選手になるものだ。最近、スマッシュや強ドライブを連発するとミスする選手が多いので、以前にも増してしのぎからの攻撃の練習は非常に効果が高いといえる。
真に思い切りのよい攻撃ができる
また、しっかりレシーブしてから4球目でしのぎ、6球目を攻撃する練習をたくさんやると、逆に思い切りのいいレシーブ攻撃や4球目攻撃ができるようになったり、試合中の攻守の判断が大変によくなったりする。
というのは「いつでもしのげる」という自信がこの練習で身につき、気持ちに余裕ができるからだ。そのため、攻撃するときは心配なく思い切り攻撃ができるし、守るときも守りに徹することができる。また、攻めるか守るかの判断も早くなり、体に無駄な力が入りすぎないため、攻守の切りかえも早くなる。
このようにしのぎを覚えるとプラス面が非常に多い。ぜひしっかり4球目をしのぐ練習をやってほしい。そして、試合中は守れるからといって消極的にならないようにすれば、相手にとって大変やりにくい選手になれる。
やさしい練習から始める
4球目のしのぎからの攻撃練習は、このように効果が高い。が、練習のやり方を間違えると一向に上達しない。そればかりか、他のレシーブに悪影響がおこる。
この練習を行なうときに大切なことは、まだしのぎの技術が未熟な選手は、いきなりむずかしい練習から入らないことだ。なぜなら、体の使い方に変なクセがつきやすく、大きく伸びなくなってしまうからだ。だからはじめはやさしい練習から入り、正しいしのぎ方をしっかり覚えることだ。
たとえば、ドライブマンと対戦したときにもっとも多いと思われる、ドライブをバックショートでしのぐ技術を覚えたい場合、まずバック前にカットサービスを出してもらい、バックのツッツキでバックに返す。それをバックに少し山なりのドライブをかけてもらい、バウンドの直後をとらえて、正確にストレートとクロスにショートで返す練習をする。
フォア側にきたドライブをしのぐ練習をしたい場合は、フォア前にカットサービスを出してもらい、フォア側で待っていて、フォア側にツッツキで返す。それをドライブでクロスに攻めてもらい、バウンド直後をとらえて正確にクロスとストレートにフォアハンドで返す。
次にストレートコースに打ってもらったのをクロス、ストレートにしのぐ。それができるようになったら、通常の位置からフォア前に大きく動いてレシーブし、レシーブの位置から一番遠いところにドライブをかけてもらい、それをしのぐ練習をする。というように練習していくことだ。
ツッツキ打ちや、ショートレシーブに対するスマッシュ、ストップレシーブに対する強打などに対しても同じやり方でしのぎを身につけていくことだ。そうして、まず各コースのボールに対する正しい体の使い方をしっかり覚えることが大切なことだ。このあと、試合と同じようにいろんなコースに打ってもらったのを、コースを決めて返したときと同じように返す練習をする。このような練習方法で行なうと正しい取り方を覚え、大きく動けるようにもなり、4球目でしのげるように成長する。
6球目攻撃もコースを決めてやる
守備から攻撃の技術を身につける場合も、コースを決めて繰り返し反復練習をやるのがいい。そうして、正しい動き方や正しいフォームをまず覚えることだ。そうすると無駄な動きが少なくなりコントロールも威力もつき、早く試合で使えるようになる。コースを決めてやる注文練習をしっかりやろう。
このとき注意することは、4球目を中途半端にしのぐのではなく、正しく打球してから素早く動くようにすることだ。それから、コースも厳しいコースに返すようにすることと、常に試合と同じ気持ちでやることだ。
このようなことに注意してやれば必ず4球目のしのぎから6球目攻撃もみるみるよくなるものだ。
しっかり踏み込んでからしのぐ
レシーブから4球目でしのぎ、6球目を攻撃するプレーで次に大切と思われることは、レシーブのときはよい位置までしっかり動き、よいレシーブをしてから4球目をしのぐことだ。こうするとより実践的で効果が高い。
ところが、ショートサービスに対し、この踏み込みを忘れている選手を多く見受ける。そのため、練習のときは3球目攻撃をしのげても試合になると相手によいボールを打たれ、しのげなくなってしまう選手が大変に多い。
ではどうしたら良いか。それは、練習の時から試合と同じようにしっかり踏み込んで良いレシーブをしてからしのぐ練習をすることだ。
また、これには2つのプラス面がある。1つは、実戦的ですぐに試合で通用すること。もう一つは、しっかり踏み込んでレシーブするため、払うレシーブなどレシーブ自体がうまくなることだ。
現日本チャンピオンの斉藤選手(明治大)は、しのぎの技術も抜群にうまいが、それは足をしっかり踏み込んでパッと払ったり、ツッツいたり、レシーブ後、一瞬わざと戻るのを遅らしてからしのぐ練習をするなど、練習を常に工夫しているからだ。だから試合で相手に思い切り3球目ドライブ攻撃をされても、レシーブ後の動きが速く凡ミスが大変に少ない。
みなさんも、工夫したレシーブ+4~6球目練習をたくさんやり、試合に強い選手になろう。
筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1984年6月号に掲載されたものです。