作戦あれこれも、ついに100回目を迎えることができました。これも読者の皆さんと編集スタッフならびに関係者の皆さんの協力のおかげです。ありがとうございました。まだまだがんばりますので、今後ともよろしく。
勝つためにはストレート攻撃が大切
さて、攻撃対攻撃の試合で勝つためのコツを前号までにいろいろ述べたが、まだまだ必要な練習がたくさんある。今回は中でも非常に大切なストレート攻撃について述べてみよう。
中・高校生の試合で、スマッシュやドライブがクロスにしかいかず「もったいないなー」と思う選手が多い。ストレート攻撃が下手だと
①相手に「クロスしか打ってこない」とコースを読まれ、スマッシュやドライブも待たれて止められるし、甘いボールは狙い打ちされる
②スマッシュやドライブで思い切り攻撃しても、コースを読まれているために逆に振り回されたり、弱点をつかれる
③クロス攻撃ばかりではなかなか決まらず、体力の消耗が激しい
...という試合展開になりやすい。パワーのある選手でもストレート攻撃ができないと、なかなか勝てないものだ。また、ストレートに打てる選手の中にも、クロスには威力のあるボールが打てるが、ストレートに打つと半分ぐらいの球威になってしまう選手や、クロスに打つときの打球点は高いが、ストレートに打つときは打球点が低くなってしまう選手がいる。このようなタイプも試合後半にはクセを読まれて、勝つことがむずかしい。卓球の試合では、クロスに攻めるときもストレートに攻めるときも、同じ打球点の高さから同じぐらい威力のあるボールを打てるようにすることが大切だ。しかも、どちらに打つかわからないフォームで打てるようにすることだ。それができるようになったら、グーンと試合に強くなるし、卓球が一段と楽しくなるにちがいない。
ストレートコースで強打対強打
では、試合でストレート攻撃ができるようになるには、どのような練習をしたらよいのだろうか?これには、基本練習と実戦練習を併用して練習することが必要だ。なぜかというと、応用練習ばかりでは正確なフォームが身につかず、大事なところでフォームが崩れてミスが出やすいし、実戦練習を意識してやらないと微妙なところで試合に使えなくなる。
基本練習では、まずストレート打ちをすることだ。が、それ以上にフォアのクロス打ちをするとき、いつでもフォアストレートに打てるように意識しながらクロス打ちをすることだ。なぜなら、フォアクロス・バックストレートの打ち方とバッククロス・フォアストレートの打法は違うため、フォアクロス打ちばかりすると、相手のフォアへは打てるがバックへは強く打てなくなりやすい。特にフォアストレート打ちは難しく、十分注意して試合でいつでも打てるように心がけながら練習することだ。
レベルが高くなったら、ストレートコースを使い、強打対強打や、ドライブ対ドライブ、プッシュ対ドライブなどの練習をやるようにしよう。このときの注意としては、できるだけサイドライン寄りに狙って打つこと。また、フォアストレートにフォアハンドで打つときは、フォームはやや小さ目にしてもどりを早くし、クロスに打つときよりやや左足前で打つことが基本だ。
N式フットワーク
では次にストレート攻撃を強化する練習をいくつか紹介しよう。
その一番手は、N式フットワークだ。これは、フォアハンドでアルファベットのN字型に動くことからN式フットワークと名づけられた。(①Aフォアクロスに打つ→Bフォアストレートへ打ち返す②A回り込んでバックストレートに打つ→Bフォアクロスに打ち返す③Aフォアストレートに打つ→B回り込んでバックストレートに打ち返す)このN式を毎日15~20分、高い打点をとらえ、どちらにも打てるバックスイングから打つ練習をすると、ストレート攻撃がかなりうまくなる。
また、2人で組み、1人はクロス、1人はストレートに打つ左右1本ずつのフットワーク練習もある。これもかなり効果があるが、ストレートとクロスを交替しながらやることが必要だ。
次に、試合で最も効果的なチャンスボールをストレートに決める練習だ。といっても、これはボールをたくさん使ってやるスマッシュ練習のときに、ちょっと意識すれば誰でもできる練習である。
ボールをたくさん使うスマッシュ練習のとき、よくワンコースにしか打たない選手がいる。が、これでは悪いクセをつけるためにやっているようなものだ。連続スマッシュのときでも、フォア、バック、ミドルの3コースを狙って打つようにすると試合でもそれができる。ボールを上げる人が、バック側にカゴを置いて「打ちずらいな」と思ってもカゴにあてることを相手に伝え練習するようにする。この練習をフォア、バックからすれば実戦的な両ストレート打ちが身につく。
またカットボールをあげてもらい、強ドライブで同じようにフォア、バック、ミドルを狙うようにするのも大変よい練習だ。このとき、両ストレートには逆モーションで決められるようにするとさらに効果が高い。
ストレートにレシーブスマッシュ練習
次に、さらに実戦的な練習を紹介しよう。といっても、ストレート攻撃の実戦的な練習方法は多く、とても全部は紹介できない。そこで私が現役時代に特に力を入れてやった練習を紹介したい。
私が特に力を入れてやった練習は、相手のドライブロングサービスやカット性のロングサービスを強ドライブで狙う練習である。
たとえば、相手にフォア側にドライブロングサービスを出してもらい、それを大きく動きながらはじめにクロスに思い切りドライブ攻撃したあと、次にフォアストレートに全力でドライブ攻撃をする。バック側のドライブロングサービスに対しても、同じようにクロスに思い切りドライブ攻撃をしたあと、バックストレートに全力でドライブ攻撃をする。
このとき気をつけることは、両サイドともバウンドの頂点をとらえて打ち返すこと、レシーブの威力を高めるために、自分が出せる一番速いドライブで打ち返すこと、コーナーぎりぎりを狙うこと、打球したあと素早くもどるようにすること...等だ。
なぜストレートに打つ前にクロスに打つ練習をするかというと、ストレート攻撃の練習ばかりでは、
①ボールをしっかりためて両サイドへ同じフォームで打てなくなる
②体の使い方が小さくなる
③ストレート攻撃ばかりするとクセがつき、クロスに攻めようと思ってもクセでストレートにいってしまう...などの恐れがあるからだ。
私は、この練習をたくさんやったおかげで、クロスにもストレートにも一発で打ち抜くドライブを身につけることができて、レシーブのときの得点が大幅に増えた。また、3球目攻撃にも大変に役立った。その上、相手が勝負どころでロングサービスを出してこなくなり、サービスが大変読みやすくなった。現役時代「長谷川は勝負強い」といわれるようになったのは、このレシーブを身につけたことが大きな原因のようだ。
勝つためにはストレート攻撃が大切
さて、攻撃対攻撃の試合で勝つためのコツを前号までにいろいろ述べたが、まだまだ必要な練習がたくさんある。今回は中でも非常に大切なストレート攻撃について述べてみよう。
中・高校生の試合で、スマッシュやドライブがクロスにしかいかず「もったいないなー」と思う選手が多い。ストレート攻撃が下手だと
①相手に「クロスしか打ってこない」とコースを読まれ、スマッシュやドライブも待たれて止められるし、甘いボールは狙い打ちされる
②スマッシュやドライブで思い切り攻撃しても、コースを読まれているために逆に振り回されたり、弱点をつかれる
③クロス攻撃ばかりではなかなか決まらず、体力の消耗が激しい
...という試合展開になりやすい。パワーのある選手でもストレート攻撃ができないと、なかなか勝てないものだ。また、ストレートに打てる選手の中にも、クロスには威力のあるボールが打てるが、ストレートに打つと半分ぐらいの球威になってしまう選手や、クロスに打つときの打球点は高いが、ストレートに打つときは打球点が低くなってしまう選手がいる。このようなタイプも試合後半にはクセを読まれて、勝つことがむずかしい。卓球の試合では、クロスに攻めるときもストレートに攻めるときも、同じ打球点の高さから同じぐらい威力のあるボールを打てるようにすることが大切だ。しかも、どちらに打つかわからないフォームで打てるようにすることだ。それができるようになったら、グーンと試合に強くなるし、卓球が一段と楽しくなるにちがいない。
ストレートコースで強打対強打
では、試合でストレート攻撃ができるようになるには、どのような練習をしたらよいのだろうか?これには、基本練習と実戦練習を併用して練習することが必要だ。なぜかというと、応用練習ばかりでは正確なフォームが身につかず、大事なところでフォームが崩れてミスが出やすいし、実戦練習を意識してやらないと微妙なところで試合に使えなくなる。
基本練習では、まずストレート打ちをすることだ。が、それ以上にフォアのクロス打ちをするとき、いつでもフォアストレートに打てるように意識しながらクロス打ちをすることだ。なぜなら、フォアクロス・バックストレートの打ち方とバッククロス・フォアストレートの打法は違うため、フォアクロス打ちばかりすると、相手のフォアへは打てるがバックへは強く打てなくなりやすい。特にフォアストレート打ちは難しく、十分注意して試合でいつでも打てるように心がけながら練習することだ。
レベルが高くなったら、ストレートコースを使い、強打対強打や、ドライブ対ドライブ、プッシュ対ドライブなどの練習をやるようにしよう。このときの注意としては、できるだけサイドライン寄りに狙って打つこと。また、フォアストレートにフォアハンドで打つときは、フォームはやや小さ目にしてもどりを早くし、クロスに打つときよりやや左足前で打つことが基本だ。
N式フットワーク
では次にストレート攻撃を強化する練習をいくつか紹介しよう。
その一番手は、N式フットワークだ。これは、フォアハンドでアルファベットのN字型に動くことからN式フットワークと名づけられた。(①Aフォアクロスに打つ→Bフォアストレートへ打ち返す②A回り込んでバックストレートに打つ→Bフォアクロスに打ち返す③Aフォアストレートに打つ→B回り込んでバックストレートに打ち返す)このN式を毎日15~20分、高い打点をとらえ、どちらにも打てるバックスイングから打つ練習をすると、ストレート攻撃がかなりうまくなる。
また、2人で組み、1人はクロス、1人はストレートに打つ左右1本ずつのフットワーク練習もある。これもかなり効果があるが、ストレートとクロスを交替しながらやることが必要だ。
次に、試合で最も効果的なチャンスボールをストレートに決める練習だ。といっても、これはボールをたくさん使ってやるスマッシュ練習のときに、ちょっと意識すれば誰でもできる練習である。
ボールをたくさん使うスマッシュ練習のとき、よくワンコースにしか打たない選手がいる。が、これでは悪いクセをつけるためにやっているようなものだ。連続スマッシュのときでも、フォア、バック、ミドルの3コースを狙って打つようにすると試合でもそれができる。ボールを上げる人が、バック側にカゴを置いて「打ちずらいな」と思ってもカゴにあてることを相手に伝え練習するようにする。この練習をフォア、バックからすれば実戦的な両ストレート打ちが身につく。
またカットボールをあげてもらい、強ドライブで同じようにフォア、バック、ミドルを狙うようにするのも大変よい練習だ。このとき、両ストレートには逆モーションで決められるようにするとさらに効果が高い。
ストレートにレシーブスマッシュ練習
次に、さらに実戦的な練習を紹介しよう。といっても、ストレート攻撃の実戦的な練習方法は多く、とても全部は紹介できない。そこで私が現役時代に特に力を入れてやった練習を紹介したい。
私が特に力を入れてやった練習は、相手のドライブロングサービスやカット性のロングサービスを強ドライブで狙う練習である。
たとえば、相手にフォア側にドライブロングサービスを出してもらい、それを大きく動きながらはじめにクロスに思い切りドライブ攻撃したあと、次にフォアストレートに全力でドライブ攻撃をする。バック側のドライブロングサービスに対しても、同じようにクロスに思い切りドライブ攻撃をしたあと、バックストレートに全力でドライブ攻撃をする。
このとき気をつけることは、両サイドともバウンドの頂点をとらえて打ち返すこと、レシーブの威力を高めるために、自分が出せる一番速いドライブで打ち返すこと、コーナーぎりぎりを狙うこと、打球したあと素早くもどるようにすること...等だ。
なぜストレートに打つ前にクロスに打つ練習をするかというと、ストレート攻撃の練習ばかりでは、
①ボールをしっかりためて両サイドへ同じフォームで打てなくなる
②体の使い方が小さくなる
③ストレート攻撃ばかりするとクセがつき、クロスに攻めようと思ってもクセでストレートにいってしまう...などの恐れがあるからだ。
私は、この練習をたくさんやったおかげで、クロスにもストレートにも一発で打ち抜くドライブを身につけることができて、レシーブのときの得点が大幅に増えた。また、3球目攻撃にも大変に役立った。その上、相手が勝負どころでロングサービスを出してこなくなり、サービスが大変読みやすくなった。現役時代「長谷川は勝負強い」といわれるようになったのは、このレシーブを身につけたことが大きな原因のようだ。
筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1984年9月号に掲載されたものです。