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わたしの練習74阿部勝幸 攻めの速さとスマッシュを重視

 中学、高校時代は、兄が協和醗酵で卓球をやっていたので学校の練習が終わると毎日のように練習をさせてもらいに行きました。おかげで卓球というものがどのようなものか少しずつわかりかけ、卓球がおもしろく感じたのもこの頃でした。兄のプレーがオールラウンドであったので、毎日見ているうちに、オールラウンドプレーに憧れて『自分の卓球はこれだ』と心に決めたことを覚えています。卓球が好きで、どうせやるなら徹底的にと、兄のすすめもあって専修大学に入学しました。
 現在の練習時間は3時間から3時間半ですが、部員が多く台が少ないので、なかなか自分のやりたい練習が満足にできず、時間のあいているときを見つけて練習をやるように心がけています。大学にはいった1年間というものは下級生であり、いろいろ仕事が多かったこと、また練習のときはほとんど先輩の練習相手だったので、自分の練習というものができず、ボールを打っている時間も1時間そこそこでした。自分の卓球がなかなか上達せず、苦しい毎日でした。それでも、ガムシャラに練習をやっているうちに、自分の卓球が少しずつではあるが上達していくのが成績に表れたときは、本当にうれしかったです。

 ~日卓協の強化合宿参加がプラス~

 伊藤選手、河野選手という最高の先輩をもつ自分の恵まれた環境を幸せに思っています。卓球を教えてもらっては『ぼくもはやくあのような、すばらしい卓球ができるようがんばろう』と努力したことがよかったと思います。それに、一流選手にまじって、数度強化合宿(日卓協)に参加させてもらったことも、たいへん参考になりました。特に自分の卓球に足りない技術、一流選手の技術を直接自分の体で知ることができたのも、たいへんプラスになりました。
 このころから、自分の卓球のスタイルというものを考えはじめ、諸先輩の意見も聞き、これから先のことも考えて、高校時代にめざしたオールラウンドプレーでは何か一つものたりない線の細い卓球になるのではと思い、自分の特徴ある卓球をつくるには、“攻めの速さとスマッシュ”が必要だという結論に達しました。ようやく練習も満足にできるようになり、考える卓球ができるようになりました。

 ~3球目攻撃がプレーの中心~

 現在の練習内容は基本練習が主体で、ゲーム練習はあまりやりません。フットワーク、バックハンド、レシーブ、3球目攻撃の練習を中心にやっています。
 フットワークは―①左右1本ずつ回してもらって、数本後にスマッシュ、②ショートでオールに回してもらってのフットワーク。
 バックハンドは―対ショート、対ロングをやり、フォア、バックの切り換えも行う。
 レシーブは―4球目との関連性をもたせて、サービスをバック前に出してもらい、フォアハンド、バックハンドではらう練習。ロングサービスをレシーブスマッシュする練習等。
 3球目攻撃は―ドライブで攻めるのとスマッシュで攻める方法の両方を行う。この3球目攻撃がどれだけ入るかで試合が左右されるので、特に重点をおいてやっています。

 ~試合前はレシーブとスマッシュ練習~

 試合が近づけば、レシーブ練習とスマッシュ練習を多く取り入れます。昨年の大学対抗前の合宿で、ほとんどレシーブ練習とスマッシュ練習だけをやったおかげで、本大会でレシーブに自信がもてて、先手がとれ、納得のいくプレーができ、好成績があげられました。
 トレーニングは毎日やっています。内容は、ランニング(45分間)、腕立て伏せ、腹筋が主体で、ときどきダッシュ、方向転換、階段を使ったトレーニング、馬とび等もいれています。特に腹筋とランニングは運動選手にとって必要なトレーニングなので、十分やります。

 ~パワーの強化と精神力の強化~

 今の自分にとって必要なことは“パワーの強化”なので、鉄アレイを使った筋力トレーニングもとりいれていこうと思っています。それから精神面の弱さを試合で幾度も思い知らされたので、“精神面の強化”も自分に与えられた課題であり、練習に対する心概え、私生活と卓球を結びつけることに気をつけています。
 先日、長谷川さんに「ゲームにおける精神面はどうですか?」とたずねたら、「絶対に勝つんだ。ただこれだけだ」と言われました。これは自分の卓球に自信がなければ言えないことですし、さすが長谷川さんだと思いました。勝負に対する執念のこもったことばを聞いて、少しでも精神力の強い勝負強い選手になれるように、勝つことだけを頭の中に入れて、試合をやるようになりました。今の自分は、技術面、体力面、精神面のどれをとってもまだまだですが、それだけにやりがいがあります。

 ~世界選手権出場をめざして~

 これからの自分の目標は、はやく自分独特の卓球を完成すること。技術的には、①攻めの速い卓球に対するもろさをなくすために、両ハンドが振れること、②先手攻撃のできること、③打球にスピードをつけること、だと思っています。体力面では腕力、足腰の強化と持久力をつけること、を目標にしています。
 少しでも目標を高くしていって、スローガンで終わらないよう、当面の目標である“71年の名古屋の世界選手権出場”を目指してがんばりたい。それには、一に練習、二に練習。これからの一年努力し、目標が達成できるようがんばるつもりです。


(1970年5月号掲載)
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