日本中学校体育連盟が主催する「全国中学校卓球大会(通称:全中)」、全国高等学校体育連盟が主催する「全国高等学校卓球選手権大会(通称:インターハイ)」、日本学生卓球連盟が主催する「全日本学生卓球選手権大会(現在:全日本大学総合卓球選手権大会(通称:全日学))、そして日本卓球協会が主催する「全日本卓球選手権大会」。これらのいずれの大会も制したのは、現在、愛工大名電高校で指揮を執る今枝一郎監督だ。
今枝一郎監督の同学年にはオリンピックや世界選手大会などで日本代表として活躍した田崎俊雄選手や鬼頭明選手、1学年下には仲村錦治郎選手、周晅選手、村上裕和選手、竹谷康一選手ら世代のスター選手が名を連ねる。その中で「全中」「インターハイ」「全日学」の激戦を制してきた今枝一郎選手が、ついに日本一に上り詰めたのは平成6年度全日本選手権大会でのことだった。
男子シングルス5回戦ではペン表ソフト速攻型の田崎俊雄選手(明治大・当時)、6回戦ではシェーク攻撃型の倉嶋洋介選手(埼工大深谷高・当時)に勝ち、準々決勝ではカット主戦型の山本恒安選手(シチズン時計・当時)、準決勝ではシェーク異質攻撃型の遊澤亮選手(上宮高・当時)を退けた。そして、決勝ではペンドライブ型の松下雄二選手(協和発酵・当時)に勝ち、この大会ではそれぞれ異なるプレースタイルの選手から勝利を収め、この年のクリスマス(12月25日)に日本の頂点に立った。
優勝から1カ月後の幣誌インタビューで「全日本チャンピオンになるために必要なことは?」という問いに対し、今枝一郎選手はこう答えた。「そうですねぇ、気力と集中力は絶対に必要だと思います。試合では、いつ落とし穴があるか分かりませんし、いつ挽回できるか分かりませんよね。特に、全日本選手権大会などの大きな大会は何が起こるか分からない。だから、ずっと集中し続けられる持久性の集中力が必要だと思います」。
そして、その集中力を高めるために、彼は中高校時代に一風変わったトレーニングと取り入れていたという。「中学生になってから高校2年くらいまでの5年間、集中力を高めるトレーニングをやっていました。その方法というのは、ちょっとおタクっぽいですけども、部屋を真っ暗にしてロウソクを立て、静かに正座したままロウソクの炎を15分くらい見つめるんです。この間、集中して卓球のことだけを考える。これを毎日欠かさずやっていました(卓球レポート1995年4月号)」。
世代を代表する強豪たちとの激戦を勝ち続ける華やかな記録の裏には、人知れず寡黙に努力を続ける姿があるものだ。弱点のない強さを見せる今枝一郎選手の強さの裏には、技術や戦術、試合での駆け引きだけではない、ずば抜けた集中力があった。(編集長)
詳しい情報は日本卓球協会ホームページに掲載されています。
日本卓球協会:http:/www.jtta.or.jp
全日本卓球(特設サイト):http://www.japantabletennis.com/zennihon2018
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全日本選手権大会の特集は卓球レポート3月号(2月20日発売号)に掲載します。