一昨日、パラ卓球選手の別所キミヱさんが東京にお越しになり、お会いすることができた。
別所さんは車いす卓球選手として、2004年アテネ、2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオと4大会連続でパラリンピックに出場しており、パラリンピックでの最高成績は5位だ。もちろん、2020年の東京パラリンピックも期待されている。
そんな別所さんだが、実は昨年、パラリンピックが危ぶまれる大きなピンチに見舞われていた。
短期間に3つもの不運な事故に遭ってけがをし、パラの世界卓球選手権大会を含むいくつかの国際大会を欠場。世界ランキングは2018年10月の時点で7位だったが、今はランキングリストから名前が消えてしまった。
東京パラリンピックを前にしたこの時期、こんな不運に見舞われて、動揺しない選手はいないだろう。別所さんはとても朗らかで前向きな人柄だが、それでも、けがをした直後は、涙にくれたという。
だが、別所さんはやはり前向きだった。壊れた車いすをあつらえ直すとともに、足や腰に負担をかけないような打法や、相手のレシーブを限定させるためのサービスを試行錯誤しているという。
「けがをしたことで、今まで見えなかったことが見えてきたんですよ」
試行錯誤する中で得た技術的な発見を、別所さんはうれしそうに教えてくれた。
打法のこと、用具のこと、競技用車いすのこと、健常者のトップ選手の試合を観戦したことなどを、別所さんは生き生きと話してくれる。別所さんがエネルギッシュな人であることは知っていたけれど、あらためて、ああ、別所さんはすごいなあと思った。
今は回復に向かっているものの、まだ万全ではない。試合復帰は早くて3月のジャパンオープン・パラ卓球選手権大会(国内大会)、国際大会はそれ以降になるだろう。それでも、東京パラリンピック出場の可能性はある。
別所さんは現在71歳。その挑戦はまだまだ続く。
文=川合綾子