男子シングルス:ティモ・ボル(ドイツ)が2連覇達成
ティモ・ボル、2大会連続三冠王の大偉業! |
ヨーロッパ勢にとって、北京オリンピック後の最初のビッグゲームとなったヨーロッパ選手権大会。
この大会は、9月1日からのグルー(弾む接着剤)と補助剤を使用できないという新ルールで初めてのヨーロッパ選手権大会でもあったが、団体戦で伝えた通り、明らかに補助剤を使用してプレーしている選手が数多く見られた。
そんな中、男子団体ではチームとして補助剤を使用しないと決めたドイツが優勝したことで、補助剤なしでも実力があれば勝てることを選手たちが自らのプレーで証明した。そして、団体優勝の立役者となったボル(ドイツ)は、個人戦に入ってさらに強さが増した。
ボルはズュース(ドイツ)と組んだ男子ダブルスで優勝すると、男子シングルスでも並み居る強豪を押さえて優勝を飾った。
新ルールで初となったヨーロッパ選手権大会で、クリーンな用具(ラケット+ラバー+水系接着剤)を使用して見事三冠王に輝いた。ボルは前回ベオグラード大会でも三冠王を手にしており、2大会連続での金字塔となった。
今大会のボルのプレーは、補助剤などを使用しなくてもしっかりとおり、性能の高い用具(ラケット、ラバー)を使用すればルール違反を犯さなくても十分勝てるということを実証した。
ボルは、団体戦で負けているシュラガー(オーストリア)とサムソノフ(ベラルーシ)に、シングルスでリベンジした。ボルは、団体戦ではシュラガーのカウンター攻撃を浴びて敗れたが、シングルス準決勝で対戦したときは、ループドライブの回転量を増やしてバウンドに長短の変化をつけた。これにより、シュラガーはカウンター攻撃の精度が落ちてミスを連発してしまった。
サムソノフに対しては、団体戦で敗れたときはドライブの打ち合いになるとボルが不利な状況が続いた。しかし、シングルス決勝では形勢が逆転。ボルは早い打球点での両ハンドドライブで得点を重ね、ラリー戦になってもサムソノフを押し込んだ。グルーが使用できなくなり、『テナジー・05』を使用したボルだが、試合をしていくにつれて『テナジー・05』の性能を引き出すような打法と戦術を身につけていった。
圧倒的な強さで三冠王を手にしたボル。彼に補助剤を使用している選手が多いことについて聞いてみると、こう答えた。「周りが使っていようが僕には関係ない。僕はルールを守って『テナジー・05』で全力で戦うことを考えるだけさ」。
ボル、得意のドライブで強敵を圧倒 |
サムソノフは王座奪還ならず |
見事に2連覇を達成した! |
3位のシュラガーとガルドシュ(オーストリア)も新ルールに則った用具を使用(2人とも両面『テナジー・05』)。
男子シングルスの表彰台には、優勝したボルを始め、『テナジー・05』を使って3人の選手がクリーンな用具でメダルを獲得した。
元世界王者のシュラガーが4強入り |
ガルドシュ、うれしいベスト4 |
クリーン・スピリットで戦ったナイスガイたちの笑顔 |
女子シングルス:パスカウスキーネ(リトアニア)が混戦制す
パスカウスキーネが初のヨーロッパ女王! |
女子シングルスは波乱の連続だった。
まず、前回女王で今大会もオランダを団体優勝に導いたリ・ジャオが、疲労を理由に女子シングルスと女子ダブルスを棄権。また、第3シードのウー・ジャデュオ(ドイツ)、団体優勝に貢献したリ・ジエ(オランダ)の2人が、ともに2回戦でロシアの若手選手に敗れた。
優勝候補筆頭のリ・ジャオがいなくなったことで、多くの選手に優勝のチャンスがめぐってきたわけだが、ふたを開けてみると予想外の選手が初優勝を遂げた。
その選手の名はパスカウスキーネ(リトアニア)。結婚して名前が変わったが「ガルカウスカイテ」という旧姓を書けばピンと来る人もいるだろう。これまでシングルスで目立つ成績はあげていないが、カラカセビッチ(セルビア)と組んだ混合ダブルスでヨーロッパ選手権大会を制していて、ヨーロッパでは混合ダブルスの名手として知れ渡っている選手だ。
フォア裏ソフト、バック表ソフトのパスカウスキーネは、両ハンドのピッチの早いミート打ちで攻めまくるプレースタイル。目立つ武器と言えば「ピッチの早さ」だけになってしまうため、アジアのトップクラスにはまったく及ばないものの、ヨーロッパではこのようなプレースタイルでも勝ててしまうのが現状だ。
今大会のパスカウスキーネは試合を重ねるごとに勢いが増し、得意のピッチ打法が冴えに冴えた。特に準決勝と決勝では、明らかに格上の選手を破った。ピッチ打法が故に、これまでは相手に強弱をつけられた攻撃でラリーされると自滅してしまっていたが、今大会は攻める気持ちを失わず、最後まで迷うことなく強気のプレーができていた。旧ソ連のリトアニア選手の快進撃に、サンクトペテルブルグの観客は大いに盛り上がった。
パスカウスキーネが速攻決めて王座に駆け上がった |
2位はリュウ・ジャ(オーストリア)、3位には女子ダブルスで優勝したトート(ハンガリー)とタン・モンファルディニ(イタリア)が入った。
リュウ・ジャ、3大会ぶりの優勝ならず |
ベテランのトートが健在ぶりをアピール |
タンが堅実なプレーでベスト4入り |
男子ダブルス:ボル・ズュースが2連覇
ドイツペアが2大会連続優勝 |
男子ダブルス決勝は、連覇を狙うボル・ズュース(ドイツ)とシュラガー・ケーン(オーストリア・オランダ)の国際ペアで争われた。
ゲーム序盤はシュラガー・ケーンが主導権を握り、3−1とリードを奪った。しかしここからドイツペアが盛り返して3ゲームを連取して、逆転勝利を収め、見事に2連覇を達成した。
シュラガー・ケーンは惜しくも敗れたが、今大会で引退するケーンの花道となっただろう。
ボル・ズュース、逆転勝利で連覇達成 |
ケーン、シュラガーとのペアで花道飾る |
女子ダブルス:トート・ポータが優勝
ポータとトートが栄冠 |
女子ダブルス決勝は、トート・ポータ(ハンガリー)とタン・ステファノバ(イタリア)という強豪ペアの対戦となった。 ゲームは中盤まで互角の展開で2−2となったが、第5ゲームを奪ったトート・ポータが第6ゲームもジュースで競り勝って、第1シードの面目を保った。
第1シードの貫録で見事に優勝 |
イタリアペアはあと一歩及ばず |
大会の記録は国際卓球連盟のホームページをご覧ください。
国際卓球連盟 公式HP:http://www.ittf.com
今大会の模様は 12月号(11/20発売予定)に掲載予定。
現地取材班:中川学(卓球レポート編集長)