■男子シングルス
男子シングルスの決勝は序盤から木造のプレーが冴えていましたが、その中で最後まで三部がよく耐え抜いた試合でした。
木造は打球点の早い直線的なボールを叩き込み、終始、試合の主導権を握っていました。それに対して三部は、後手に回ってしまい、非常に苦しい試合だったと思います。しかし、そういった苦しい状況下でも泥臭く戦い、勝利をもぎ取りました。特に試合の要所で三部が山なりに入れたボールを、木造がミスをするなど、自分の得点のパターンを見出せない中で、勝利への強い思いが得点につながっていました。
競った試合では得てして、つないだり、山なりに回転をかけたボールに対してミスが出ることが多々あります。今回の決勝もそれと同様のことがいえると思います。序盤は木造が山なりのボールに対して、打球点の早い攻撃で得点を重ねていましたが、競った場面や試合の終盤など、要所ではミスが多くなりました。三部が意図していない苦し紛れに回転をかけたボールで粘ったことで得点につながった場面もあり、三部の勝利への執念が木造を上回ったと言えますね。
敗れはしましたが木造は非常に良いプレーをしていました。打球点の早い直線的なボールはミスが多くなりがちで、失点するリスクもありますが、入ったときには強烈なボールを相手に返すことができます。特に、バック側から回り込んで打球点の早いところをとらえたバックストレートへのボールが素晴らしかったですね。また、木造は卓球台から離れてプレーすることが少なくなりました。これまではフォアハンドのフォームが大きいために、連打をしているうちに台から下がってしまう傾向がありましたが、今はコンパクトにスイングしています。それでいてスピードのあるボールを打つことができているので、パワーもついてきたと言えるでしょう。
このほか、優勝候補として挙げられていた及川は木造との接戦に敗れました。及川は木造を台から下げようとして積極的にフォア側を攻めましたが、それを読まれて、強打されるというケースが目立ちました。
三部に敗れた松山は高い攻撃力を備えていますが、三部との試合では、オールラウンドなプレーができる三部に敗れました。三部は松山に攻められたあとも攻め返すなど、幅の広いプレーを見せてくれました。
■女子シングルス
女子シングルスの決勝はバック面に表ソフトラバーを貼る田口とカット主戦型の橋本という対決になりました。田口は表ソフトラバーを駆使して橋本のカットやツッツキの変化に惑わされないように、丁寧につないでいました。このような我慢強い粘りのプレーが勝利に結びつきました。
田口からすると、得点を取るための絶対的なパターンはありませんでしたが、男子の三部と同じように我慢強く戦うプレーが良かったです。橋本のカットに対してはミスが非常に少なく、丁寧につなぐという戦術を徹底していました。加えてとにかく橋本のフォア側を攻めてバック面のツブ高ラバーで、回り込んでレシーブさせた後、ストップするという形で好機をつくりだしていたと思います。徹底した戦術をやり続けることでつかんだ優勝であり、3年間努力してきたことが実った優勝だと思います。
対する橋本は2年生ながら、カット技術が多彩で、攻撃力もありました。決勝では流れの中で攻撃のチャンスがあったときには両ハンドで攻撃を仕掛け、得点に結びつけるなど、得点をとるためのパターンも持っていましたが、田口の粘りの前に惜しくも敗れました。また、昨年に比べてカットでコースを突くのがうまくなりました。特に準決勝の芝田との一戦は、コース取りで、相手のミスを誘うなど、技術の進化が見られました。
渋谷浩
平成11年度全日本チャンピオン
第52回インターハイ名古屋大会(1983年)
学校対抗優勝(熊谷商業)、男子シングルス2位、男子ダブルス優勝
第53回インターハイ横手大会(1984年)
学校対抗優勝(熊谷商業)、男子シングルス優勝、男子ダブルス優勝
第54回インターハイ鶴来・野々市大会(1985年)
学校対抗優勝(熊谷商業)、男子シングルス優勝、男子ダブルス優勝
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試合の詳細な記録は下記サイトをご覧ください。
平成25年度全国高等学校総合体育大会:http://www.fukuoka-koutairen.com/2013ih/
全国高等学校体育連盟卓球専門部:http://www.koutairen-tt.net/
今大会の模様は卓球レポート10月号(9/20発売)に掲載。