丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)で開催されている平成30年度全日本選手権大会。5日目は女子シングルス5~6回戦が行われ、ベスト8が出そろった。
女子シングルス5回戦
平野が木原に破れる波乱。伊藤は浜本に競り勝ち、出澤もランク入り
●女子シングルス5回戦の結果
伊藤美誠(スターツSC)−8、7、−14、5、11、5 浜本由惟(木下グループ)
出澤杏佳(大成女子高)11、−12、−4、5、9、7 前田美優(日本生命)
橋本帆乃香(ミキハウス)7、8、5、−10、9 鈴木李茄(日立化成)
安藤みなみ(専修大)9、5、9、10 平野容子(豊田自動織機)
木村光歩(中国電力)5、5、3、−9、−7、−10、10 松本優希(サンリツ)
芝田沙季(ミキハウス)8、11、−10、8、9 森薗美咲(TOP名古屋)
石川佳純(全農)1、1、7、1 中畑夏海(愛知工業大)
田中千秋(豊田自動織機)10、5、8、7 土井みなみ(中国電力)
早田ひな(日本生命)7、3、9、2 小鉢友理恵(広島日野自動車)
塩見真希(四天王寺高)−9、7、−9、5、7、−7、7 塩見紗希(同志社大)
加藤美優(日本ペイントホールディングス)7、7、5、−9、7 牛嶋星羅(日立化成)
梅村優香(中央大)8、13、9、−9、7 杉田陽南(香ヶ丘リベルテ高)
森さくら(日本生命)−11、10、9、7、5 野村萌(愛み大瑞穂高)
佐藤瞳(ミキハウス)7、5、6、6 木村香純(専修大)
平侑里香(サンリツ)5、−9、4、−4、11、−9、9 森薗美月(木下グループ)
木原美悠(JOCエリートアカデミー)−3、10、9、8、9 平野美宇(日本生命)
女子シングルスラン決のハイライトは、木原対平野。第1ゲームは平野が圧倒するが、木原は速いバックハンドと変化ブロックを巧みに使い分け、第2ゲームをジュースでもぎ取る。すると、驚くべき反応とラケットさばきで「ハリケーン」と称される平野両ハンドドライブを前陣でことごとくさばき、チャンスにはフェイントを入れて逆を突くベテランばりの落ち着いたプレーで4ゲームを連取。大波乱を演じた。
よもやのランク落ちに平野は「普段からもう少し気持ちを強く持たないと勝てないと感じた。チャンスボールを逸してしまったのは自分のせいなので、集中力を持たないといけない。相手がやりにくいわけではないが、今日は自分があまり良くありませんでした。消極的な試合でした。若い選手が強くなっている印象ですが、一番強いと思うのは自分と同年代の選手だと思います。これからは、年下の選手にも勝てるようにしないといけない」と肩を落とした。
2連覇を狙う伊藤は浜本と対戦。「サービスもレシーブも利かないと思って準備した、サービスを出した後がよかった」という浜本の猛攻にあい、ゲームを先行される苦しい展開が続いたが、5ゲーム目を競り勝つと、速い攻めと強打で押し切った。
ジュニア女子を制した出澤は前田に勝利。バック面のツブ高ブロックとフォア面の表ソフトスマッシュが火を吹き、一般でもランク入りを果たした。
また、このラウンドでは塩見紗希(同志社大)と塩見真希(四天王寺高)の姉妹がランク入りをかけて対戦。ゲームオールまでもつれる接戦になったが、最後は妹でインターハイ2位の塩見真希がミスの少なさ、コースの厳しさで振り切った。
女子シングルス6回戦
早田が会心の出来で石川を撃破。ラリー巧者の加藤も好調をキープ
●女子シングルス6回戦の結果
伊藤美誠(スターツSC)4、5、8、7 出澤杏佳(大成女子高)
安藤みなみ(専修大)8、-9、7、-9、6、7 橋本帆乃香(ミキハウス)
芝田沙季(ミキハウス)-5、6、9、6、4 木村光歩(中国電力)
早田ひな(日本生命)7、6、-11、8、5 石川佳純(全農)
加藤美優(日本ペイントホールディングス)6、10、3、8 塩見真希(四天王寺高)
森さくら(日本生命)-11、9、-5、4、7、10 梅村優香(中央大)
佐藤瞳(ミキハウス)9、4、5、5 田中千秋(豊田自動織機)
木原美悠(JOCエリートアカデミー) 10、-15、7、5、17 平侑里香(サンリツ)
このラウンドのトピックスは何と言っても早田対石川だろう。昨年も同じラウンドで対戦している両者だが、そのときは石川が早田をほぼ完璧に押さえ込んだ。しかし、最近の早田はワールドツアーやTリーグなどで結果を残しており、今回はどのような試合になるのか注目が集まったが、早田が強すぎた。
得意の変化サービスに加え、ボールの左側をこするような横回転を入れるバックハンドや石川が押そうと強めに打ってきたバックハンドを逆に前に出て押し返すバックハンドなど、バックハンドで面白いように得点を重ね、石川を終始圧倒。結果、早田が石川にゲームカウント4対1で勝利し、昨年をリベンジを果たした。
長く全日本を取材してきて石川がベスト16で破れるのはにわかに信じ難く、彼女がここで姿を消すのは寂しい限りだが、あの石川が負けたのが波乱と呼ぶには失礼なほど、今回の早田は強かった。
「今日は厳しい戦いになると思っていたので準備はしていましたが、バック対バックで押されてしまいました。粘ったり変化をつけたりしたが、思ったより変化がつかなくて、それを狙われたりミスしてはいけないボールをミスしたりしてしまいました。今日はちょっと弱気だったと反省しています。出足に先手を取られてしまったので苦しい展開になってしまい、自分の攻めるパターンに持っていけませんでした。(早田のバックハンドは)威力がすごく上がっているように感じ、コースが分かりにくかった。思い切って振っているので、ボールが伸びてきて威力を感じました。今日は私のサービスやレシーブのコースをすごく相手が理解をしていて、早田さんがバック対バックの勝負をしたいからバック側に攻めてきたと思います。10年以上ベスト8に入っていたので今回はとても残念でした。いい勉強になったので次の大会に活かしたいと思います」と敗戦後の石川。
今大会のジュニア女子を制し、台風の目になっている出澤は伊藤と対戦。出澤の独創的なプレーが女王にどこまで通用するのか注目したが、伊藤はつなぐとやっかいな出澤の変化ボールに対して徹底して強打を打ち込み、出澤の持ち味を全く出させずにシャットアウト。圧巻の強さでベスト8入りを決めた。「全然相手になりませんでした。実力不足。もっと練習を頑張ろうと思いました。何をやっても返されるし、全部打たれると思ったので動いて相手のボールを拾うようにしたのですが...。伊藤選手と試合するまでは今までにないような結果を出したので100点でしたが、最後の試合は全然相手にならなかったのでだめでした。自分のような戦型はほかにいないので今回はたまたま上がれたようなものですが、これから対策されて慣れられる展開が増えていくと思うのでそれに対応できるようまた一から練習を頑張ろうと思います」と出澤は敗戦後、謙虚に精進を誓った。
好調なのは加藤。予測とラケットワークが非常によいためラリー戦に抜群に強いことに加え、しゃがみ込みサービスからの3球目攻撃など短期決戦も得意とする。強豪たちが絞り込まれた明日からのタフなトーナメントをどう戦っていくのか、加藤のプレーに注目したい。
(文=猪瀬健治 写真=佐藤孝弘)
卓レポツイッターでは大会の速報をお届けしています。
詳しい試合の結果は大会公式サイトでご確認ください。
全日本卓球:http://www.japantabletennis.com/zennihon2019/