2年ぶり2度目の優勝に加え、混合ダブルス、女子ダブルスに続く三冠王を狙って女子シングルス決勝に臨んだ早田ひな(日本生命)だったが、ライバルであり、盟友でもある伊藤美誠(スターツ)の厳しい攻めに阻まれた。
伊藤の強さを賞賛しつつ、敗因や課題を冷静に語った早田のインタビューを紹介する。
ーまず、「難しい試合になる」とご自身で言われていた(加藤美優との)準決勝についてお聞かせください
まあ、よく耐えたなと。途中でテクニカルタイムアウトが入ったり、パネルの照明で試合が中断したりと自分の中ではあまり経験したことのないタイミングでのプレーの中断だったので、どれだけ自分を持っていられるかが本当に勝負だというのは感じていました。そこで最後まで自分を見失わずに試合をできたことが、準決勝は勝因なのかなと思います。
ー決勝についてお聞かせください
伊藤選手はもともとサービス3球目やレシーブ4球目の精度が高く、技術や戦術もすごく多い選手なので、そこで自分がどれだけついていけるかでした。ラリーになったときは結構点数が取れていたので、そこは五分五分だなという感じでしたが、それ以上に回転で操られたり、自分のレシーブを完璧に読まれて狙い打たれたり、先手を取られる部分が多かった。自分がサービスで崩そうとしても、それ以上のレシーブで返ってきたりして、自分がうまく「これ」という戦術が明確に固まらないまま試合が終わってしまったかなと。そういった部分にちょっと迷いがあって試合をしていたというのはあります。
ーこの結果をどのように生かしていきたいですか?
結果からすると女子シングルスの決勝だけ負けて、成績としてはすごく良い成績に見えるかも知れないですけれど、自分の中ではほとんど悔しい気持ちの方が大きい。でも伊藤選手に対してこれだけ悔しい気持ちを持てたというのは、自分がもっとできたとか、もっとできるっていう自信があったからこそ悔しい気持ちが出てきたと思います。
伊藤選手や平野選手など、同世代として常に切磋琢磨してきた仲間とかライバルとこうやって全日本の決勝で戦えたので、そこで私ももっと頑張らなきゃって思いますし、この結果に満足せずにもっともっと頑張って、次こそは女子シングルスで優勝したいです。
ー今大会では17試合を戦いました。冷静に戦い抜くことをテーマに戦ってきたと思いますし、あらためてそれを示した印象ですが、そのあたりの成長について、ご自身ではいかがでしょうか?
今大会の女子シングルスで、カットマンの選手と後半3試合する場面があって、そこで(以前に)1回負けた時の反省を生かすことができ、食事の取り方や休憩のタイミングなどの反省を生かして勝利につなげることができました。
3種目出ることに対する準備がすごく良くなってきたというのは思っていて、伊藤選手との試合は準決勝で結構しんどい試合をしていたというのもあって、ちょっと頭の切り替えがうまく行かなかった部分はあります。でも、足もすごく動いていた感じですし、体力的には全然行けました。自分が3種目に出てこれだけ戦えるようになっているんだったら、あとは相手に対する戦術や、どう入って試合をすれば調子が上がっていくのかなど、そういった部分をもう少し見つめ直して試合ができるようになれば、もっと安定したり、格上の選手や自分にラリーをさせないようにしてくる選手にも、もっともっと戦えるようになるんじゃないかと思いました。
ーこれまでの伊藤選手との対戦とは違ったものがありましたか?
今回もチャレンジャーの気持ちで向かっていきましたが、今回は自分が世界選手権やアジア選手権で戦ってきて、もっとできたなっていうのがありました。前回は、言ってみれば「思い切ってやるだけ」という部分があって、自分の卓球をやるためにとか、自分のペースに持っていくためにどうするかで試合の展開を考えていました。なので、以前は何も考えずにといったらあれですけど、とにかく思い切ってやっていた感じで、今の方が自分の実力を出せるように戦術を作り上げてプレーしているので、それができなかった悔しさが今回は強かったかなと思います。
ー試合後にテーピングを外されていましたが、17試合の疲れはありましたか?
これは(テーピングは)完全にカット打ちを3試合した筋肉痛なので、出てもしょうがないかなという感じです。でも、昨日試合して筋肉痛がまあまあ強くなってきて、カット打ちした後にダブルスすると、ダブルスでフォアハンドを打つ量はシングルスに比べると桁違いなので、そういった部分で昨日は「明日、筋肉痛強くなるかもな」というのはありましたが、しっかり冷水と温水を繰り返してリカバリーも含めて、自分としては成長しているなと感じました。
17試合してこれだけの筋肉痛で終わられるのが、本当に嬉しいというか。だけど、伊藤選手なんかは本当に何もなくいつも大会を終えているので、それを自分が経験してみて、やっぱり美誠ってすごいなって思います(笑)
ー3月からパリ五輪の代表選考レースが始まります。秋には福岡でも選考会がありますし、2月にはTリーグで地元に帰ります。地元でファンに見せたいプレーは?
今回全日本に出てみて、苦しい試合はあったんですけど、実力として自分が強くなっている感覚はすごくありました。だけど、伊藤選手くらいのトップレベル、本当に世界でも通用するトップレベルの選手と試合するとなったときに、やっぱり自分の台上のちょっとしたコースの甘さだったりボールの高さ、低さっていう部分をもっともっと練習しなきゃいけないと思いましたし、これだけ全日本で異質の選手と当たって、異質の前後左右に入ってくる難しいボールに対しても自分のボールにして返せるように練習した方がいいというのはすごく思いました。
そういった部分を次の選考会とかTリーグに向けて少しでも練習して、ちょっとだけですけど「進化した早田ひなのプレー」を見ていただけたらなと思いますし、ラリーになったときの強さは日本でも世界でも通用する力があるので、それにプラスして台上の細かさなど、そういったところにも目を向けてくれたらうれしいなと思います。
ー伊藤選手との対戦で驚きのプレーはありましたか?
練習もしているので、あまり変わったなあという感じはお互いになかったと思いますが、でも世界選手権で一緒にダブルスを組んだり、シングルスでも練習したりしていて、世界選手権のときよりも、より美誠らしさが戻ってきて、本当に3球目5球目、もうサービス3球目で全部決めるくらいの気持ちで試合してきているなという感覚はありました。そこで決めるのは本当に質が高かったり精度が高くないとできないですし、(伊藤は)本当にたくさん練習して作り上げてきているなというのは今回感じました。
「あと1本」の勝負になったとき、どちらの選手の精度が高いかという試合にこれからなってくると思うので、私の場合は動ける範囲は大きいですが、細かい足の調整が難しかったり、自分の手の長さが把握できていなくて感覚が出なかったりという課題があるので、そういった部分をもっと細かく追求していきたいと思います。
ー伊藤選手と練習できることは強みでしょうか?
そうですね。でもやはり、お互い練習の中で試合で出していない技術とかもあると思いますが、試合でも練習と同じようなプレーを出せる伊藤選手は本当にすごいなあと思いましたし、私もそのくらいの気持ちで常に練習の時から緊張感を持ってやっていけたらいいなと思います。
(まとめ=卓球レポート)