女子シングルスは伊藤美誠(スターツ)、女子ダブルスは伊藤美誠/早田ひな(スターツ/日本生命)、混合ダブルスは早田ひなと張本智和(木下グループ)と、結果だけを見れば優勝候補と目されていた選手たちが順当に優勝した感のある今回の全日本だが、昨年の10月からNT(ナショナルチーム)女子の指揮を執る渡辺武弘監督の目には、どのように映ったのか。
女子の全日程を終え、大会の傾向や今後に言及した渡辺監督の会見を紹介する。
ーまず、優勝した伊藤選手(伊藤美誠)のプレーはいかがでしたか?
非常に落ち着いてプレーしていたように見えました。どの技術も一つ一つ丁寧に技を繰り出して、自分のペースに比較的早めに持っていく安定したプレーぶりで、相撲で言えば横綱相撲のようなプレーだったと思います。
ー全体的にはどのような印象を持たれた大会だったでしょうか?
全日本は国際大会や世界選手権と違って年に1回、みんなが全力で向かってくる大会なので、必ずしも世界選手権に出た選手が確実に勝てる大会ではありません。特に、代表選手にはみんなが向かっていくので、世界選手権に出た選手たちも苦戦を強いられたり、負けたりしました。
ただ、伊藤選手や早田選手(早田ひな)は、向かってきた選手をうまくはねのけて決勝まで行けたことは本人たちの自信につながったと思います。
ー女子のプレーでトレンドのようなものは見受けられましたか?
全日本はトーナメントで日本一を決める大会なので、全体的に緊張感だったり硬さはあったと思います。コロナの感染防止など神経を使うことがいろいろあったので、ちょっと全体的に硬い中でプレーをしているような感じがしました。
その中で、伊藤選手は世界選手権と違ったサービスの出し方をしていたり、早田選手もかなり両ハンドでぐいぐい押し込んでいくようなプレーをしていて、それぞれ世界選手権の反省を生かして取り組んでいるなという感じが見受けられました。
ー混合ダブルスで伊藤選手が出ないことについて、所感をお聞かせください
本人がそのようなコメントをしているのは、私も見ました。今後、ずっとそういう考えで行くのか、あるいは時期が来れば出てみたいと思うのか、今後の状況次第でしょう。私も、本人に直接話を聞いたわけではないので、今の段階では東京オリンピック後ということで、すぐには「また混合で」というようには、なかなか気持ちが向いていないのかもしれません。
ただ、先々ペアリングが良くてメダルを狙えるようになった場合は、監督としては出てほしいなとは思います。
ー張本(張本智和)/早田が世界選手権でも今回も結果を出しました。彼らへの期待はいかがですか?
世界選手権は決勝までいって実績を上げましたが、ペアリングとしてはまだまだ練習をやり込んで、いろいろな技術の安定感やコンビネーションにさらに磨きをかけていかないと、なかなか中国は倒せない。これからいろんな大会を経験して全体的にレベルアップしていってもらいたいと思っています。
ー(張本/早田は)パリ五輪混合ダブルスの1つのオプションという理解でよろしいですか?
今の段階ではそうですね。
ー早田選手は惜しくも三冠はなりませんでしたが、監督から見て早田選手がシングルスで成長した点は?
サービスレシーブは厳しくなってきましたし、経験もたくさん積んできているので試合の戦術が良くなり、技術以外の部分で非常に試合がうまくなってきていると思います。
パワーはもともとある選手なので、そういった戦術がしっかりついてきて、それがかみ合ってきているんだと思います。
ー3月から始まるパリ五輪選考会の展望をお聞かせください
おそらく選手たちは選考会からスタートダッシュをかけたいと思いますので、相当熾烈な選考会になると思っています。
約2年間競うわけですから、その中で若手も選考会を通してぐいぐい力を付けてくる選手が出てくると思います。今のトップ選手も揉まれながら成長できるし、若手の選手もいろいろ成長できると思うので、私としては非常に楽しみにしています。
ー加藤選手(加藤美優)の活躍はどのようにご覧になりましたか?
今シーズンのTリーグでかなり活躍していましたので、その調子をそのまま全日本につなげましたね。もともと器用な選手で試合も上手な選手だったので、そこに技術がうまくかみ合ってきていると思います。
ーそのほか、注目された選手はいましたか?
やはり、木原選手(木原美悠)がジュニア女子で優勝して、一般でも佐藤選手(佐藤瞳)に0対3から大激戦で大逆転したのは非常にいい試合で、木原選手の成長を感じ取ることができました。
それから、張本選手(張本美和)ですね。こちらもジュニア女子で2位、混合ダブルス3位と本当にすごく力をつけてきているので、張本選手も今後、すごく楽しみな選手です。
(まとめ=卓球レポート)