元ナショナルチームコーチとして数々のトップ選手の指導に携わり、現在はTリーグの解説者としても活躍する渡辺理貴氏が、その卓越した観察眼で世界卓球2022成都を鋭く分析する企画。
今回は、男子に続き、女子予選リーグの模様をグループごとに詳しく解説してくれた。
【グループ1】中国が圧倒的な強さで盤石の1位通過
世界ランキング1位から4位の選手を擁する中国女子は、予選リーグの戦いにも一切のすきが見られず、4試合で落としたゲームはわずかに1(陳幸同がアメリカ戦でジャリに3対1)という完璧な内容で1位通過を決めました。
2位争いは、最終戦のプエルトリコ対アメリカとなり、3対2(ラストのリオス対ジャリは最終ゲーム11-9)という大接戦でプエルトリコが歓喜あふれる勝利で決勝トーナメント進出を決めています。
【グループ2】日本が危なげなく1位通過
中国チーム同様、対戦チームに圧倒的な差をつけた内容で危なげなく1位通過を決めた日本女子。2位は、最終戦でポーランドに勝利したスロバキアとなりました。世界ランキング48位のエース・バラゾバが攻撃的で安定感のあるプレーで2点を挙げ、ラストのククルコバが勝利して決勝トーナメント進出を決めました。
【グループ3】フランス戦を制した香港が首位通過
注目は、香港対フランス。やはり団体戦の勝敗を分けるのは、相手のエースに勝つ試合ごとヒロインの存在です。2番で対戦した香港の朱成竹(世界ランキング93位)とフランスのエース異質攻撃型のユアン・ジアナン(世界ランキング25位)の試合は、朱成竹が回転量の多いボールを使い分けてミスを誘う頭脳的なプレーでユアン・ジアナンを破った試合がチームの勝敗に大きく影響しました。香港が全勝で1位通過。フランスは2位で通過となりました。
【グループ4】混戦を勝ち抜いたシンガポールが首位通過
一番結果予測が難しいグループとなったグループ4。チームランキングで下位のチームが上位のチームを破った試合が4試合と波乱のグループとなりました。
中でもルクセンブルクは、59歳のエース倪夏蓮が大車輪の活躍で韓国戦では田志希、李シオンを、タイ戦では、J.サウェッタブート、パラナンに勝利してチームの決勝トーナメント進出に大きく貢献 した。
1位通過を決めたシンガポールは、エースのツォン・ジェンが全勝と安定した戦いでポイントを挙げた。他にも東京五輪で石川を苦しめたタイのパラナンの相手の逆をつくプレーや最後まで粘り強く戦った韓国のファイター、李シオンなど印象に残る選手が多いグループでした。
【グループ5】ドイツが辛くも全勝。多彩な選手をそろえたインドにも期待
ドイツが全勝でグループ1位を決めましたが、インドには3対2と接戦となりました。若いミッテルハムやヴィンターが苦しむ中で、エースのハン・インの安定した戦いぶりはチームに大きな安心感を与えていました。
世界チームランキング11位のエジプトは、エントリー選手全員が世界ランキング60位以内と期待感があり注目していましたが、エースのメシュレフが勝ち星に恵まれず、全敗で予選リーグを終えました。勝利は次回へ持ち越しとなりましたが、14歳のゴーダのプレーには将来を期待させるものがありました。
2位通過のインドは独特なプレースタイルの選手が多く、決勝トーナメントでも台風の目となる可能性もあります。
【グループ6】陳思羽が躍動した中華台北が1位通過
チーム力が接近している4チームでの戦いは、どの試合も大接戦となりました。
6試合中4試合 がラストまでもつれる試合となり、中には3時間を超える試合もありました。1位通過の中華台北は、頼みの鄭怡静の調子が上がらず苦しい状況を元気いっぱいの陳思羽が補う形でチームを勝利に導きました。
2位通過のポルトガルは、エースのユ・フが強豪ルーマニア戦で2点を叩き出して、 勝利を決定づけました。他にもスウェーデンのエース、ベルグストロムの積極的に攻撃を仕掛けるニュースタイルのカットは、印象的でした。
(まとめ=卓球レポート)