「元気ですかーっ!」。優勝インタビューでプロレス界のレジェンドの名文句を言い放った戸上隼輔(明治大)は、まさに闘魂みなぎる両ハンドで張本智和(IMG)の堅守を打ち砕き、連覇を果たした。前回王者であるにもかかわらず、「優勝できるとは思っていなかった」と不安を感じながら臨んだという今大会。
その不安を払しょくして連覇を果たせた要因とこれから、そして大好きだというプロレス愛もあふれ出した戸上の記者会見の模様をまとめた。
--連覇おめでとうございます。今の率直なお気持ちをお聞かせください。
本当に優勝できると思っていなかったので、こうして優勝したんですけど、正直実感はなくて。本当に2連覇したのかなってちょっと疑心暗鬼な気持ちはあるんですけど、本当にうれしい気持ちでいっぱいです。
--張本選手との決勝は激闘でした。勝利することができた要因はどんなところにあると感じていますか?
前半、結構リードしていて後半に取られるようなゲームもあったり、本当に苦しい展開も多かったんですけど、最後までめげずに攻め切れたことが勝因かなと思っています。
--張本選手が、「(戸上に)バック対バックで上回られた」と話していましたが、そのあたりの手応えいかがですか?
ゲームを進めていく中で、どんどんバック対バックに自信を持ってプレーできたり、ときにはフォア対フォアになることも多かったんですけど、全ての技術に対して自信を持ってプレーできたので、特にバック対バックが本当に良かったなと思います。
--試合後のインタビューで「元気ですかー!」っておっしゃってましたけど、どんなお気持ちでしたか?
いや、本当にすっきりします(笑)。昨日、優勝した時にあの場所でプロレス関係で何か一言いえたらなと思ったんですけど、本当にプロレスが大好きっていうところに注目してもらいたいなと思って、みんなが知っているフレーズを言いました。
--猪木さん(故・アントニオ猪木)のフレーズを使われた理由をお聞かせください。
世界選手権の団体戦(世界卓球2022成都)のときに猪木さんがお亡くなりになられて、本当に猪木さんには勇気を与えてもらうことが非常に多かったので、こうやって結果で恩返しというか、自分の中で何か猪木さんに伝えられたらなと思っていて、優勝できたので一言、1番有名なフレーズをああやってお伝えできて良かったです。
--インタビューの直後にBGMで(アントニオ猪木のテーマ曲である)「炎のファイター」が流れましたが、あれはお願いしたのでしょうか?
サプライズですね。もう完全に運営側様からの配慮というか、僕もびっくりしました。ありがとうございます。
--連覇を達成されて大きな手応えが得られたと思います。今後、見据える目標を教えてください。
去年も優勝して流れがある中で海外に挑戦したんですけど、なかなか世界ランキングとか海外の結果で思うようなプレーができなかったりして、本当に自信も喪失してしまったんですけど、今年は本当に勝負の年、挑戦の年と自分の中で思っているので、この勢いのままもう1度立ち上がって、自分の中でもう1度世界で通用する選手を目指して頑張りたいなと思ってます。
--あらためて、去年全日本で優勝してからいろいろあったと思いますが、今回勝ち切って「もう一度自分が引っ張っていくぞ」という自信の程はいかがでしょうか?
去年と同じ1年間を今年は過ごしたくないと思っていて、もう本当に去年は苦しかったですし、なかなか世界で勝てなくて、周りのライバルの選手たちがランキングを上げていく中で僕だけが維持している形だったので、今年はやることも定まっている。自分の課題の自己分析が全日本前にうまくできたので、成長できる方法を自分の中で今回確かめられたなっていうのを感じたので、今年は本気で世界ランキング20位以内を目指して頑張りたいと思っています。
--ゲームのことでお聞きします。第3ゲーム、戸上選手が10点目を取った後、チキータでミスして失点した後もほぼ全部チキータだったと思いますが、「死ぬ気で」と優勝インタビューで言われていましたが、あの時のお気持ちをもう1度教えてください。
はい。ストップ対ストップの展開は非常に劣勢で、その中でバック側にツッツいてみたりはしたんですが、なかなか思うような展開にならなかったので、ミスしてもいいからああいう苦しい場面ではチキータでいって、そこから自分のプレーをやろうと思って、ずっとチキータでいきました。
--分かりました。チキータだったり後陣・中陣からのドライブだったりフットワークもそうですが、普段どういった練習で戸上選手の攻撃力が身についているんでしょうか?
(全日本直前にカタールで行われた)世界選手権のアジア予選が終わって日本に帰ってきてから、どうやったら自分の調子がいい時のプレーができる練習方法だったのかをもう一度改め直して自分の中で整理しました。その中で1つの方法としては、多球練習を多用することを自分の中で見つけて、本当にこの10日間毎日多球しましたし、ウエイトトレーニングもその中で入れました。休みの中でも自分の動画を見たりとか、本当に卓球づくしな10日間だったなと今振り返れば思っています。
ーーパリ五輪の選考についてお伺いします。残り1年、ポイントがさらに上がっていくというところで、どういうふうに戦いたいか、ということと、今回の優勝によるポイントが自分にどう生きてくるのかをお聞かせください。
優勝してポイントを大きく取れたというところでは、今後、優勢になってくると思いますし、こうやって選考会ではない全日本で優勝できたのも今後につながるなとは感じます。
今年1年間はポイントも倍になってきて、1ポイント、2ポイントが大事になってくる1年間になると思うので、1大会1大会、選考会だったり世界選手権の個人戦とかもポイントが入ってくると思うんですけど、本当にポイントを意識しながら大会に臨まないといけないので、まずは選考会っていうよりは世界選手権という大きな舞台で結果を残して世界にアピールしたいっていうのが、1つの大きな目標かなと思っています。
--昨年、優勝会見の時に、「卓球界の100年に1人の逸材になりたい」というお話がありましたけど、今回2連覇して現段階でどんな手応えがありますか?
今回、国内でこうやって優勝できて、正直、自分の中ではここからが勝負かなと思っていて、やっぱり海外で勝てる選手がオリンピックで通用する選手だと思っているので、本当にオリンピックで金メダルを取って100年に1人って言いたいです。
--今回の4強は年齢層がかなり低くて、戸上選手が最年長ということで、今後、日本の卓球界においてどんな存在になっていきたいのかを改めて聞かせてください。
僕はまだ21歳で、ベスト4の中で下は19歳で、本当に若い年齢が今、日本引っ張っていかないということを今大会気付かされて、自分が今回21歳でベスト4で最年長だったんですけど、立場的に言えば、日本で2、3、4番手というところなので、もっともっと成長して卓球の実力でも1番上になりたいなと思っています。
--昨年の世界選手権が終わって空港に帰国してきた時に「張本選手が中国の牙城を崩してくれて希望が見えた。自分も張本選手のように1本取れるように」とおっしゃっていました。そういった意味では張本選手に決勝で勝てたというのは、すごく大きな意味合いがあるかと思うんですけど、ご自身ではどういうふうに振り返られますか。
そうですね。僕の中では張本選手との直接対決では分が良いと思ってはいるんですよ。というのも、かなり相性的にも自信を持ってプレーできますし。ただ、対中国選手となったときに、僕はまだまだ実力を発揮できない部分があるので、その中では、張本選手の方が上手(うわて)だと思いますし、もっともっと海外経験を積んで、中国選手に勝てる、1本を取れる選手になりたいなと、今本気で思ってます。
--世界選手権から3、4カ月経ちますけど、経験で1番学んだ部分は何でしたか?
団体戦でしたが、個人戦でも前回(世界卓球2021ヒューストン)参戦させてもらって、本当に国際ツアーとは違うような海外選手の目つきだったり雰囲気だったり、緊張感っていうのを感じて、これが本当の舞台だなってひしひしと感じることが多かったです。その中でも自分のプレーを最大限発揮できる能力が僕にあるなっていうのを感じることができました。
--世界で勝つためにというところで2つほど聞かせてください。去年の世界卓球以降、試合の中で意外性とかひらめきがもう1つ自分には足りないということで、テーマに掲げてきたと思うんですけれども、今日のこの決勝の中でそれが出せたなという場面や戦術があれば聞かせてください。
今大会は非常に冷静に相手を分析してプレーできたなっていうのを感じて、世界選手権の時も団体戦の1番で出させてもらって、あの緊張感の中で冷静にプレーをすることができて、良い流れを持ってこれたなって思います。けれど、ここ最近、我慢強く辛抱強くプレーできていなかったなというのを感じて、やっぱりその差は調整力や自信につながると思うので、そのひらめきっていうのも練習が必要というか、今までやってこなかった練習をやってきました。その分、ひらめきだったり、ひらめいた時に自信を持ってプレーできたりしたところが良かったのかなと思っています。
--ここでポイントがほしいという場面でロングサービスが非常に効いていたと思いますが、サービスも課題だったと思います。今大会はどうだったでしょうか。
相手のことを分析して冷静にコース取りだったり、相手が嫌がっている回転だったりというところを見極められたので、それが非常に良かったと思います。これは世界に通じると思うので、もっともっとサービス力を磨いて、なおかつレシーブも強気に競った場面でもできるように練習を積みたいなと思っています。
--最後になりますが、今回は国内の大会でしたけれども、ブンデスリーガ挑戦で持ち帰ってきた物の中で、今大会に活かせた部分はありましたか?
はい。調整の仕方に尽きます。それが本当に自分の中で勉強になりましたし、ヨーロッパ選手と日本人選手の調整の仕方を目の当たりにすることができて、プロのヨーロッパの選手はこうやって調整しているんだ、というのが本当に勉強になりました。それがすごい良かったなと思っています。
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