元日本代表の経歴を持ち、その真摯な人柄から「卓球界の賢人」として名高い上田仁が、確かな実力と経験に裏打ちされた深く鋭い洞察力で世界卓球2023ダーバンの攻防を読み解く。
今回は世界卓球5日目に行われた張本智和対荘智淵(中華台北)、馬龍(中国)対K.カールソン(スウェーデン)の男子シングルス3回戦を解説してくれた。
▼男子シングルス3回戦
張本智和(日本) 7,9,5,7 荘智淵(中華台北)
昨日、難敵のフレイタス(ポルトガル)をストレートで退けた張本の3回戦の相手は、20年以上にわたって世界のトップで活躍する中華台北のレジェンド・荘智淵でした。もちろん荘智淵は強い相手ですが、張本にとってはやりやすいのではと予想を立てていましたが、その通りの試合展開でしたね。
基本的に何でもできる荘智淵に対し、真っ向から打ち合っても負けませんでしたし、相手に強打されてもブロックとカウンターでしっかり対応ができていました。荘智淵も素晴らしいボールを何本も打ち込みましたが、張本がことごとく上回り、ストレートで快勝しました。
荘智淵は決して悪い内容ではありませんでしたが、それ以上に張本のプレーの質が素晴らしく、荘智淵からするとどうやって点数を取ればいいのか分からなかったのではないでしょうか。また、見どころでも触れましたが、この試合の張本は、チキータと見せかけたバックハンドでのストップが効果抜群でした。荘智淵は張本のチキータを警戒するあまり、ストップへの対応が遅れたところを張本に突かれてしまいました。
今大会、張本は1ゲームも落とさず勝ち上がっており、状態の良さがうかがえます。決して油断はないと思いますが、1ゲームも落としてないからこそ、ゲームを落とす展開があってもあわてずにこの試合のようなプレーを続けてほしいと思います。
▼男子シングルス3回戦
馬龍(中国) 4,1,6,-12,1 K.カールソン(スウェーデン)
4度目の世界卓球制覇を目指す馬龍は、K.カールソンと対戦しました。過去2大会はスウェーデン勢が男子シングルスの決勝まで勝ち上がり、その強さをアピールしていましたが、今大会では世界卓球2017ブダペスト2位のファルク、世界卓球2019ヒューストン2位のモーレゴードらが相次いで敗れ、スウェーデン勢で残っているのはK.カールソンだけになってしまいました。スウェーデン勢の3大会連続決勝進出をかけてK.カールソンは絶対王者の馬龍に挑みましたが、馬龍が強すぎましたね。
まるで精密機械のようにミスをせず、隙のない馬龍はあっという間に3ゲームを連取します。なんとかゲームを取り返したいK.カールソンは、あまり見慣れないバックハンドサービスを使ってようやく1ゲームを返しましたが、続く5ゲーム目は、ゲームを取られたことでさらにギアを上げた馬龍がK.カールソンの攻撃を完璧に封じ込めて勝利しました。
K.カールソンの敗戦により、スウェーデン勢の3大会連続決勝進出はかないませんでしたが、それ以上に馬龍の脅威的な強さが印象に残る試合内容でした。
※文中敬称略
(まとめ=卓球レポート)