5月20〜28日までダーバン(南アフリカ)の国際展示場ICCダーバンで世界卓球2023ダーバンが開催された。
大会9日目の5月28日(最終日)は、男女シングルスの決勝が行われた。
男子シングルス決勝は、第1シードで前回王者の樊振東が、第2シードの王楚欽を下し、見事に2連覇を達成した。
▼男子シングルス決勝
樊振東(中国) -8,9,7,10,-11,3 王楚欽(中国)
男子シングルスは3大会ぶりに中国勢同士の決勝で、世界ランキング1位と2位という、まさに世界最高峰の戦いとなった。樊振東が勝てば中国勢として7人目の連覇。王楚欽が勝つと、中国男子として初めて左利き選手がシングルスのチャンピオンとなる。
立ち上がりは両者探り合いで4対4となるが、王楚欽が小気味よいフォアハンドとバックハンドの連係で、強打を決めて4対7とリードを奪う。今日はバックハンドのタッチが良くない樊振東にミスが続いて6対9となり、このまま王楚欽が押し切って8対11で第1シードを先行した。
第2ゲームは樊振東が巻き返しにかかって5対3とリードするが、今ひとつバックのタイミングが合わない樊振東は、感覚を探るように安全にラリーを展開。そこを王楚欽に突かれて流れを掴めず5対7と逆転を許す。樊振東は無理せず丁寧なプレーで王楚欽をミスを誘って8対8に引き戻すと、緊迫の場面で無心となってバックハンドの感覚がよみがえる。9対9で王楚欽が勝負をかけた回り込みストレートドライブを懸命のカウンターブロックでフォアに決めると、続いて激しい打ち合いから王楚欽のフォアハンドドライブを中陣からのバックドライブでクロスに抜き去って、このゲームを11対9でもぎ取った。
互角の展開となり、第3ゲームは両者が勝機を探って5対5、7対7と競り合うが、プレーに不安がなくなった樊振東はどっしりと真ん中に位置取って主導権を握る。王楚欽は力で押しても優勢を取れなくなり、強引な攻めにミスが出る。ここから樊振東が4ポイント連取して、ゲームカウント2対1とリードを奪った。
どちらに流れが傾くのか、注目の第4ゲームも静かな立ち上がりとなるが、ともに体がほぐれてダイナミックな打ち合いが展開され始めて観客が沸く。互いにサービスを持った方が攻め込む展開で6対6となるが、王楚欽のバックに打ちミスが続いて9対6。しかし、王楚欽が開き直って両サイドに決めて9対8となったところで樊振東がタイムアウト。ここで王楚欽が回り込んでクロスに打ち抜いて9対9と譲らず、そのままジュースにもつれ込んだ。絶対に欲しいこのゲーム。樊振東がループからのバックハンドドライブをストレートに決めると、高く投げ上げたサービスでエースを決めて12対10で競り勝ち、一気に3ゲームを奪って栄冠に王手をかけた。
こうなると完全に樊振東の優勝ペース。距離感をつかんてまったく隙がなくなって5対1となり、王楚欽がタイムアウト。タオルで顔を覆ったのち、遠くを見つめる王楚欽。タイムが開けても樊振東が緩めない。中陣での両ハンドドライブが華麗に決まって8対2と引き離し、会場内はいよいよか?という雰囲気のため息。樊振東は一球一球かけ声を出しながら連続ドライブを放ち、10対5とチャンピオンシップポイントをつかんだ。
しかし、ここでドラマは終わらない。後がなくなった王楚欽はとにかく1本ずつ丁寧に送球すると、なんだか力が入らない樊振東に凡ミスが続き、10対10とまさかのジュース。なんとか追い付いた王楚欽に再び目の色が戻る。11対11から回り込みドライブをクロスに決めると、樊振東がまさかのレシーブミスで王楚欽が大逆転し、ゲームカウント2対3とひとつ戻した。
予想外の展開で第5ゲームを失った樊振東。取り返しが付かない事態にしたくない第6ゲームは大事にしっかり回転をかけて、ラリーの主導権を取り戻す。一方、攻めてもはね返される王楚欽は焦りが見えてミスが出る。樊振東は第5ゲームの轍を踏まず、じっくりと丁寧に連打で攻めて7対1と決めにかかると、今度は8本差を付けて10対2でチャンピオンシップポイントを手にした。ここでようやくドラマは終結の時を迎え、10対3から樊振東がチキータレシーブを決め、見事に栄冠をつかんだ。
男子シングルス決勝は樊振東が4対2で王楚欽を下し、2大会連続でセントブライド杯を手中に収めた。これで樊振東は中国男子で7人目、大会史上8人目の2連覇を達成。次回2025年大会で中国勢では荘則棟と馬龍しか成し遂げていない3連覇という偉業への挑戦権を得た。そして、未だ手にしていない五輪でのシングルス金メダルに向け、大きく視界が開けた勝利と言えるだろう。
一方、惜しくも敗れた王楚欽は、中国初の左利き選手の優勝を逃した。しかし、今大会は充実したプレーが光ってダブルスで二冠を達成するなど、最後まで大会を盛り上げた。
(まとめ=卓球レポート)