パリオリンピック卓球競技5種目(混合ダブルス、男女シングルス、男女団体)が、パリ南アリーナ4(パリ・フランス)にて7月27日〜8月10日にて開催される。
競技14日目の8月9日は男子団体の銅メダル決定戦と決勝が行われた。
ここでは男子団体決勝の結果をお伝えする。
※写真は中国チーム
※写真提供=ITTF/ONDA、ITTF
▼男子団体決勝
中国 | 3-0 | スウェーデン | ||||
○ | 馬龍/王楚欽 | -8,4,3,-6,7 | ケルベリ/K.カールソン | |||
○ | 樊振東 | -10,8,9,-11,5 | モーレゴード | |||
○ | 王楚欽 | 9,5,-10,-10,2 | K.カールソン |
準決勝で日本との大接戦の末に決勝進出を決めたスウェーデンと、開催国フランスをストレートで退け、オリンピック5度目の決勝の舞台に勝ち進んだ中国との対戦が行われた。
両チームともダブルスのペアは全3試合と変えずに、不動のオーダーで臨んだ。序盤はスウェーデンペアが攻めのサービス・レシーブでチャンスをつくって攻め込み主導権を握った。ゲームポイントではケルベリがロングサービスでこのゲームを決めて先制。しかし、地力で勝る中国ペアが、攻守のメリハリの利いた台上プレーで第2、第3ゲームを連取。第4ゲームはK.カールソンのサービス、カウンターが冴え、勝負は最終ゲームに。
最終ゲームは中国らしいスタートダッシュで集中した馬龍/王楚欽に対してスウェーデンペアにミスが出て、5-2で折り返し。スウェーデンペアも好プレーを見せるが、6-4でタイムアウトを挟んだ中国ペアが4点連取で10-4とマッチポイント。スウェーデンペアはカールソンのチキータで2本しのぎ、ストップの応酬で王楚欽にミスがでるが、10-7から大きなラリーで馬龍がオープンスペースにフォアハンドドライブをたたき込んで中国が1点目を挙げた。
男子シングルス決勝の再現となった樊振東対モーレゴードは、モーレゴードのバックハンドプッシュを警戒した樊振東が回転量の多いドライブでモーレゴードのミスを誘い、モーレゴード劣勢かと思われたが、モーレゴードは柔軟に決定力ではプッシュに劣らないフォアハンドに切り替えて優勢に。バックハンドも決定打にはならずとも、ナックル性のプッシュをバック対バックのラリーに混ぜることで樊振東のミスを誘い、このゲームをモーレゴードが先制。
チャンスボールは果敢に攻めるモーレゴードと極力ミスを避けつつラリーで質の高いボールを送り続ける樊振東の攻防は、安定したバックハンドを軸に戦う樊振東がわずかに上回り、第2、第3ゲームを連取。
バックハンドプッシュのラケット面の角度が合ってきたモーレゴードが、随所で好プレーを見せて、第4ゲームを返し最終ゲームに。
樊振東はツッツキを持ち上げさせてのカウンターなど、基本的な戦術に立ち戻ると、5-1と大きくリード。モーレゴードのバックストレートへのプッシュにも素晴らしい反応を見せてカウンター。完全に流れをつかんだ樊振東の前に、さすがに集中力を欠いたかモーレゴードは奇抜なサービスなどでその場をしのぐが、最後は樊振東のやや浮いたストップレシーブをモーレゴードのフリックがネットにかかり、樊振東が今大会モーレゴードに2連勝で中国が金メダルに王手をかけた。
3番は王楚欽を2022年のWTTチャンピオンズ ヨーロッパ夏季シリーズで破っているK.カールソンが、世界ランキング1位の王楚欽に挑む。バックサイドの展開に強いサウスポーの両者の対戦は、準決勝で戸上を苦しめた縦回転サービスとストップ、ツッツキを多用するレシーブで、攻撃力の高い王楚欽に先手を取らせまいとするK.カールソンの戦術が効くが、拮抗する展開を王楚欽がロングサービスからの3球目攻撃で鮮やかに決める。
K.カールソンは下回転を強くかけた切ったツッツキや打球点を下げて思い切り持ち上げたループドライブなどで王楚欽に攻めさせないが、上回転の打ち合いになってしまうとどうしても王楚欽に分がある。王楚欽が強烈なチキータレシーブを決めて、11-5で中国の優勝に王手をかける。
第3ゲームで王楚欽は食い下がるK.カールソンに先んじて10-9でマッチポイントを握るが、ここから、K.カールソンが思い切ったロングサービスを機に逆転。
両者がサービスからの展開で点を取り合うが、攻撃のスイッチが入ったK.カールソンがリードし、10-7とゲームポイント。王楚欽も粘ってジュースに持ち込むが、K.カールソンにラッキーなネットがあって第4ゲームも連取。
3試合目のゲームオールは、ここでも最終ゲームの中国勢のスタートダッシュが決まった。K.カールソンはバック伸ばし連打で2-4と王楚欽を追うがここから王楚欽が怒涛(どとう)の攻めを見せて6本連取。最後は10-2から、K.カールソンがバックハンドロングサービスから3球目をフォアで狙い打ったボールが当たりそこねてアウト。レシーブがネットした王楚欽が両手を上げ、頭を下げK.カールソンに謝罪の意を示すと、振り返ってそのまま両手を広げ中国ベンチと観客に、4年に1度の優勝を逃さなかったことを噛みしめるように何度もアピールした。
中国の優勝は5度目。スウェーデンとフランスは初のメダル獲得となった。日本は惜しくもメダルを逃したが、男子団体の終盤戦はいずれも実力が拮抗した好勝負が続き、中国は無失点で終えることはできたが、決して安心できる状態でないことは身をもって実感していることだろう。
もはやアスリートの目標の定型句と化した「オリンピックでのメダル」だが、実際のそれが頂点を目指すアスリートの目標としては申し分ないものであることは、今大会の選手たちのプレーが証明した。それを目指すことでここまでのパフォーマンスが引き出されたという側面は間違いなくあるだろう。だが、勝敗の結果としてのメダルの有無が、素晴らしいプレーやアスリートたちの努力の価値をいささかもそこねるものではないということも、私たちが目にした事実ではなかっただろうか。
男子団体のトーナメント
詳しい大会の記録はこちら
公益財団法人日本卓球協会:https://jtta.or.jp/tour/24750
World Table Tennis:https://worldtabletennis.com/eventInfo?selectedTab=Results&eventId=2603
(まとめ=卓球レポート)