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「卓球は血と魂だ」 第三章 十 頂点を高く、底辺は広く

第三章 卓球の炎をかかげて

十 頂点を高く、底辺は広く

 カナダで開催されたマスターズ国際大会に小野(日本楽器)、坂本(日産自動車)両選手が参加し、アペルグレン(スウェーデン)、ヨニエル(ハンガリー)、パク(韓国)ほかをすべて打ち破り、見事に小野選手が優勝したことは、久しぶりの快報だ。監督として参加された育ての親、樋口竣一氏は、「小野選手の足腰の故障がやっと回復、これから再び心・技・体ねり直して東京大会に備えさせたい」と語られ、小野選手自身も再びスパートする自信を燃やしてきたことは喜ばしい限りだ。

 世界選手権東京大会はあと七ヵ月余に迫ってきたが、日本卓協主脳や、候補選手をもつ大学や実業チームの母体指導者の意気込みも感じられる。日本の卓球をよくするにはまず何としても強くならなければならない。日本の卓球選手層は厚く、指導者も多いのである。一人の超人的選手の出現奮闘によって全体の士気が高まる。選手、指導者の一層の奮励を期待してやまない。

 一方、日本の卓球向上のためには底辺の卓球活動を大切に育てなければならない。近年ママさん大会が各地でさかんになり、またベテラン層の卓球も隆盛になってきた。さる五月、スウェーデンで開催された第一回世界ベテラン大会には、日本から山本弥一郎団長以下五一名の選手団が参加し、英国の国際卓球本部を訪問したりして欧州卓球界を驚かせた。また全国各地では少年層の掘り起こしのために熱心な活動を進めている指導者も多いが、その地方活動の一例をお伝えしよう。

 山口県の東部に大島という人口三万人の島がある。インターハイや国体女子部で多数の優勝記録をもつ名監督として全国に知られた中村清二氏(八二歳、元柳井高校教論)が会長をしておられる山口県卓協大島支部主催で、郡内の各種大会がさかんに行なわれている。

 さる六月二〇日開催された第三回大会では小学生男女、中学一・二年生男女、同三年男女、一般男女、ベテラン男女の一〇種目のシングルスが行なわれ、合計三五〇人の選手が出場した。一一月には広島、山口各地から招待選手を受入れるオープン大会があり、やはり四〇〇人近くが参加する。人口三万人の島内で三五〇人以上出場の大会が他にあるだろうか。しかも、まだ不慣れであるためか、ベテラン女子部には出場者がない。潜在的にはママさん卓球は行なわれており、来年以後はこの種目がふくれあがっていくことが明らかである。

 大島郡卓球界は三年前から中村先生を押し立てて卓球振興を志す若手指導者が多数現れてきた。岡村博臣、平井淳二、麻村善克、小原勇、伊藤秀行氏ほか多数、そしてその奥さん方の強力もある。若いリーダーたちはスポーツ卓球を通じての教育を心がけ、また将来の日本を背負うような小中学生の育成をも楽しみに活動しておられる姿に頭が下がる。

 近頃外国を旅して感じることの一つは各国の政治家が再びスポーツを見直しはじめていることだ。一つには若者の不良化防止対策もあり、若人の心身の強化とか愛国心の昂揚の目的もあったりする。私たちはスポーツを通して人と人との親睦と友情を深める意義を感じているし、それが世界の平和に通じる道でもある、と確信している。老若男女、いつでも手軽に楽しめるすぐれた特性をもつ卓球を一層さかんにしていきたいものだ。そして立派な選手育成にも努力して、日本人の誇りを高めたいものだ。
(卓球レポート一九八二年九月号)

 

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