第三章 卓球の炎をかかげて
九 ママさんと少年育成
三月の東京選手権大会が今回オープンとなり、韓国、中華台北(中国台北)、インド選手団を迎えた。中華台北男子がベスト八に一人、韓国男子がベスト四に二人入った。注目の韓国女子は複に優勝したが単では第二位に止まった。外国勢をくい止めたのは男子の前原、女子の嶋内。さすが全日本選手権者、両者の技術は一段と鋭く冴えてきた。両選手の特技がもう一段鋭さを増せば、来春の東京大会の大活躍に通じるだろう。
さて、最近活況のママさん活動を報告しよう。全国家庭婦人連盟の有志五〇名が一昨年韓国遠征、昨年は五〇名が中国遠征した。今年五月は日本五〇名、中華台北ママさん三〇名が韓国を訪問して親善行事が開かれる。戦後強くなったのは女性と靴下などというのはもう古い。ウーマンリブとも違う。健康と親睦の旗印に、家庭にとじこもり勝ちな婦人の健康な社会活動のワクを守りながら、各県各地の家庭婦人スポーツは盛んになっている。卓球、バレー、テニス、バドミントンがその四天王といわれるが、家庭的、経済的、全天候的な卓球がさかんになり、親子の対話向上や、少年非行化防止に役立つ形での発展が望まれる。
神奈川県家庭婦人卓球連盟(加藤妃生子会長)は発足してから九年目になるが、当初数百名の会員はいま三〇〇〇名をこえた。年会費二〇〇円でさかんな大会や講習会を行なっている。年二回の全県大会(団体戦)はいま参加者二〇〇〇名を越えた。一日では不可能、四〇台のコートを使い三日間(毎週)の楽しい大会となっている。加藤会長以下、各郡市選出の多数の役員は全員女性。行事は教委など公的機関を活用、化粧品会社から参加賞を受け、大新聞と地方新聞に後援を依頼、翌日の新聞には優勝者二〇〇名の名前が掲載される。なぜ二〇〇名の優勝か。この大会はAA、A、B、C、D、E級の六階級に分かれ、各級とも約五組のリーグ戦が行なわれ、合計三六チームが優勝する仕組みだ。約二〇〇名のママさんが「お母ちゃんは今日優勝したのよ」と言って、小さいトロフィーを持ち帰る。純粋なアマ・スポーツとして、このやり方は発展的。全国各地でも大会のやり方を工夫されたら如何。
一方、日本強化の長期対策として、素材の発掘、少年育成が必要だ。隣りの韓国では七年前から全国小学生大会が創始され、今は年六回も開催されているが(但し出場は一人三回まで)、これは中国対策の一つ、日本でもこの議論が出て久しいが実行はまだである。小学生対策に熱心な県からは中・高校のよい選手が出るのが当然だろうが、全国小学生大会が始まれば、全国各地での少年育成活動の火が燃え広がることであろう。日本卓球協会は昨年からこれを課題にとり上げているが、実行は来年夏からと決まった。
来夏の全国小学生大会をどんな形式で開催すのが望ましいか。これをテーマとし五月にはメーカー有志と共催の形で研究会が開かれる。全県大会のさかんな青森県から佐藤久蔵氏、熊本県から御厨常夫氏らの体験報告が叩き台にされる。
ハンガリーに女子英才訓練道場が出来て一年になる。六才の女子を新聞で募集、運動能力、頭脳、音楽才能もテストされる。選考の上、六カ月の二次テスト期間内にはピアノに合わせた打球テストもある。さて日本の将来対策はどうするのか。わが自由な国日本では、これらを協会だけに依存するのでなく、情熱のある優れた指導者の手づくり作業も進めたいものである。
(卓球レポート一九八二年六月号)
[卓球レポートアーカイブ]
「卓球は血と魂だ」 第三章 九 ママさんと少年育成
2013.09.23
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