私は、高校1年生のときレシーブで随分と悩んだことがあった。中学時代は、指導者のいない弱いチームで、レシーブにスピードがなくても相手コートに返しさえすれば勝てたのでレシーブであまり悩むことがなかった。が、高校に進み自分より強い選手と対戦するようになって、互角のロング戦で勝てない不安感から「レシーブだけで決めてしまおう」または「レシーブで相手の態勢を大きく崩し、絶対優勢に持っていこう」と思って、相当無理なレシーブをはじめてから悩みだした。そのために、大会になるとふだんの練習試合で返せるサービスまでレシーブミスが出て、高校1年生の夏ごろまでは誰でも参加できる愛知県新人大会でも3回戦、4回戦で負け、大会終了後はいつも5厘刈りのクリクリの坊主頭にさせられた。
そのときの苦い体験を思い返してみると、レシーブのときに主として次のような欠点があった。
①レシーブで決めようとするため、相手のサービスにヤマをはるので逆をつかれることが多かったし、スタートが遅れた
②からだに力が入りすぎ、変化にもろかった
③レシーブだけで決めようとしたことから、レシーブ後の戻りが遅く次の構えが不十分で、4球目の攻守に凡ミスが多かった
④レシーブだけで決めなければ勝てない、という精神的な圧迫感で固くなったことから、力が入りっぱなしで、体力の消耗が激しかった
⑤これらのことからプレイ全体の調子まで崩すことになった。
...など一つもいい点がなく、レシーブだけで得点しようと考えていいたときは試合らしい試合はほとんどできなかった。毎日このような考え方で練習していたので「練習が楽しい」とか「このレシーブがよくなったな」とまったく感じられず、恐怖感ばかり先に立って気持ちに余裕がなく練習も試合もつまらなかった。振り返ってみると、日本の第一線でやっていたときでさえ、ときどき同じように考え同じ原因からのミスを犯したことがよくあった。このことは、おそらく私だけの誤りではないだろう。
では、私がどのような気持ちで臨み、そしてどう解決していったか述べよう。
ロング戦で勝つ気持ちで臨め
私は、高校1年生のとき幸運にも全日本選手権の愛知県ジュニア代表になった。本大会では1回戦で敗退したが、この出場をきっかけに「レシーブがうまくなければ、レベルが高い全国大会で勝ち進めない」とはっきり悟った。学校に帰ってから、少しずつだがレシーブの強化に力を入れた。しかし、毎日やる校内のリーグ戦であまりいい結果が出なかった。レシーブに回ると調子が崩れるのである。そこで私は悩みに悩んだ結果、国体に愛知県代表で2度出場したことがある東京に就職している長男に、レシーブに臨む心構えについて尋ねるために手紙を出した。
1週間ぐらいたって返事がきた。長男らしいやさしいことばのあと、次のようなことが書かれてあった。
「手紙を拝見すると、あまりにもレシーブで決めようとしているように感じる。応援にいった全日本選手権の試合を見ていてもそう感じた。レシーブだけで得点しようとすると、焦りがでていいレシーブができないものだ。試合は、やはり『ロング戦で勝つ』という気持ちを持って臨むことが大事ではないかな。そのほうがうまくレシーブできるし、卓球が楽しくなると思うよ」
私は、この返事を読んだとき「アッ、これだ!!!」と思った。まったく長男のいう通りであり、そう思うと気持ちがラクになった、と同時に「このことは、他の技術のときも同じだ」と強く感じた。
私は、その日からすべての練習のときに「ロング戦をやるんだ。ロング戦で勝つんだ」と心に言いきかせて打ち合った。その心の余裕から、フォアハンドやショート、ショート打ちなどすべての技術が安定していくのがよくわかった。そして私の卓球は、長男に返事をもらった日から大きく変わった。レシーブのときに変わったことは主として次のようなことだ。
①前日までは、焦りと精神的な圧迫感があったが、気がラクになったことから冷静になれからだの固さも取れ、苦手なバック側の回り込みがしやすくなった
②落ち着いたことから、相手の手首の動きがよく見え、変化が見分けられるので強く払えるボールか、つなぐボールかの判断が早くなった。と同時に、無駄な足の運びがなくなった
③筋肉に無駄な力が入っていたのがきれいに抜け、からだ全体に柔軟性が出て、回転の変化、スピードの変化に対応しやすくなった
④リキミがとれ、威力とコントロールがついたし、自分が望んだコースに打ちやすくなった
⑤精神的に非常に楽になり、疲れなくなった
⑥次の展開を考えるようになったことから、動きが早くなり無駄のない正確な戻りができるようになった。4球目の攻撃と守備もやりやすくなった。またこのことから、ミスが大幅に減りロング戦に強くなった。
技術的には大体以上のことだが、それよりもっとうれしかったのは、卓球の楽しさがよみがえり、練習によりいっそう身が入ってきたことだ。
この時の兄の手紙は、実にありがたい手紙であった。
このときから、私はレシーブ力とロング戦が急激に進歩し、7ヵ月後の京都インターハイでシングルス3位の好成績につながった。また「常にロング戦で勝つんだ」という気持ちで戦ったことが、大学1年生での全日本優勝や全日本10年連続ベスト4の安定した成績にもつながったように思える。
ロング戦=コートから離れることではない
しかし、ここで注意してほしいことは、ロング戦とすぐにコートから離れることとは違うということだ。カットマンなら、得意のカット態勢に持ち込むためにコートから離れてプレイするが、ロング対ロングの場合は先手必勝が定石。自分の得意のロング系技術がやりやすい位置で先手をとって攻めることだ。このことは非常に重要なことで、絶対に間違えてはならない。もし間違えると、攻めの遅い勝ちにくい卓球になるからだ。
また、ロング戦にするためになんでもかんでも安全第一の消極的なレシーブで返せ、ということでもない。ロング戦で勝つためには、先に攻めた方が有利に決まっている。積極的なレシーブがどうしても必要である。私がいいたいのは、レシーブに臨むときは、ロング戦に持ち込んで勝つんだと考え、少しでも楽な余裕のある気持ちで相手のサービスの難易に応じたレシーブをすべきだということである。このような気持ちで臨めば必ずスケールの大きい選手に成長する、と私は思う。
インパクト直前にあれこれ迷うな
試合でよく、インパクト直前に払うかツッツくかストップするか、とあれこれ迷っている選手がいる。これも絶対に禁物である。迷った場合、正確な角度、押しができないだけでなく次の対応も決まらないのでメチャクチャになってしまうからだ。やはり、相手がサービスを出した直後にどう処理するか早く決断することだ。
このことで、特に印象に残っている試合がある。'71年9月に北京で行なわれた、アジア・アフリカ友好大会の男子団体の対中国戦で、変化の分かりにくいフォアサービスと威力のある3球目ドライブ攻撃をもつショートもうまい大柄の郗恩庭選手('73年世界チャンピオン)と対戦したときのことだった。日本での日中交歓大会で苦戦していた私は試合前、変化サービスを払い3球目ドライブを封じる作戦を立てた。だがレシーブミスを恐れた私は打とうとする直前に迷ったために変化のない長いツッツキで返し、やすやすと3球目攻撃を浴びバックハンドを攻め込まれ団体戦全勝を飾ろうとした夢を打ち破られた。
しかし、個人戦の準決勝で再び郗恩庭選手と対戦することとなった。私は、少々ミスが出てもサービスを払っていく決意をして試合に臨んだ。彼のサービスは相変わらず変化の分かりにくいサービスであったが、私はボールをよく見て思い切って払い中陣での得意のロング戦に持ち込んだため、3対1で雪辱を果たすことができた。このときの勝因は、なんといってもレシーブの良さだった。相手がサービスを出した直後、払うか、ストップか決断して思い切ってレシーブしたことが、正確な押しと角度を引きだした。また、大学に入学してから大学3年で世界選手権で優勝するまでの、一番の登り調子のときも同様にレシーブに迷いがなかった。私の体験からも、相手がサービスを出した直後に決断することの重要性がいえる。打つ前に時間的に余裕ができるので、相手の動きをみて両サイドに打ちわけられるし、相手の3球目攻撃も読みやすいので4球目の処理もやりやすい。
反対に、打つ直前に迷ったり、迷いがあるまま打つとインパクトのときの振りが著しく鈍り、下切れのサービスのときはネットミス、サイド回転サービスやアップサービスのときはオーバーミスしやすい。このようなレシーブをしたときはだいたい負けている。そしてこのようになるのは、①自信のない時。②練習試合のとき、考えてレシーブしていないとき。③レシーブ練習がたりないとき。④集中力のないとき。⑤やる気のないとき...などが多い。
このようなときは、次のような練習をするとよい。
①同じところに同じ回転のサービスを出してもらい、納得がいくまで反復練習をする
②①ができるようになったら、ワンサイドに試合と同じようにサービスを出してもらい、納得がいくまで反復練習をする
③オールサイドに出してもらい、素早く相手のサービスの変化とコースを判断し、迷わず自信を持って思い切ってレシーブする。ゲーム練習のときも同じようにする
私は、大学1年生のとき、よく①~③の練習方法をしたが、練習時間が短いときやフットワーク中心の練習をした高校2年生のときのように、他の練習でレシーブ練習ができないときは、③のゲーム練習のときに意識してやる方法をとった。このようにやったときは、自分でも上達していくのがわかるほど効果があった。やはりゲームの中で使っていくと覚えるのが実に早い。練習時間の少ない選手は、ぜひこのようにやって練習不足をカバーして欲しい。これは上達のコツでもある。
コースは打つ前に決めろ
レシーブをするときに、もう一つ大事なことがある。それは打つ前にはっきりとコースを決めておくことである。少しうまい人になれば、ふつうレシーブの構えに入る前に「このサービスが来たときはこう返す。これはこう返す。ここに出されたのはこう返す」と作戦を立ててからレシーブの構えに入る。そして相手がサービスを出した直後、払って返すかストップで返すか、ロングサービスであれば強ドライブでいくかスマッシュかつなぎのロングで返すか...と決める。またこのときにだいたいコースを決めてしまうが、遅くともバックスイングをとる前にはコースを決めることが必要である。ラリー中相手のロングやカットを正確なスマッシュや正確なパワードライブで攻めるときには打つ前にコースも打球法もはっきりと決めておく必要があるのと同じように、レシーブのときもコースを打つ前に決めておくべきである。しかし、これはあくまでも予定であって決定でないことはもちろんである。
すると予想通りのサービスがきたときに正確なバックスイングが取れてレシーブミスが大幅に減り、安定性が増す。そればかりか、強く払う構えから短く止めるとか、フォアへ払う構えからバックに流すとか、その逆とかといった、からだをうまく使った逆モーションレシーブをする余裕ができ、レシーブに威力も増すからである。レシーブのうまい伊藤繁雄選手('69年世界チャンピオン)、河野満選手('77年世界チャンピオン)のレシーブも、打つ前にコースを決めていたことから逆モーションになるレシーブが実にうまかった。また、足の構えもしっかりすることから安定感もあった。打つ前にコースを決めることは、レシーブ力をつけるためにも非常に重要なことだ。
そのときの苦い体験を思い返してみると、レシーブのときに主として次のような欠点があった。
①レシーブで決めようとするため、相手のサービスにヤマをはるので逆をつかれることが多かったし、スタートが遅れた
②からだに力が入りすぎ、変化にもろかった
③レシーブだけで決めようとしたことから、レシーブ後の戻りが遅く次の構えが不十分で、4球目の攻守に凡ミスが多かった
④レシーブだけで決めなければ勝てない、という精神的な圧迫感で固くなったことから、力が入りっぱなしで、体力の消耗が激しかった
⑤これらのことからプレイ全体の調子まで崩すことになった。
...など一つもいい点がなく、レシーブだけで得点しようと考えていいたときは試合らしい試合はほとんどできなかった。毎日このような考え方で練習していたので「練習が楽しい」とか「このレシーブがよくなったな」とまったく感じられず、恐怖感ばかり先に立って気持ちに余裕がなく練習も試合もつまらなかった。振り返ってみると、日本の第一線でやっていたときでさえ、ときどき同じように考え同じ原因からのミスを犯したことがよくあった。このことは、おそらく私だけの誤りではないだろう。
では、私がどのような気持ちで臨み、そしてどう解決していったか述べよう。
ロング戦で勝つ気持ちで臨め
私は、高校1年生のとき幸運にも全日本選手権の愛知県ジュニア代表になった。本大会では1回戦で敗退したが、この出場をきっかけに「レシーブがうまくなければ、レベルが高い全国大会で勝ち進めない」とはっきり悟った。学校に帰ってから、少しずつだがレシーブの強化に力を入れた。しかし、毎日やる校内のリーグ戦であまりいい結果が出なかった。レシーブに回ると調子が崩れるのである。そこで私は悩みに悩んだ結果、国体に愛知県代表で2度出場したことがある東京に就職している長男に、レシーブに臨む心構えについて尋ねるために手紙を出した。
1週間ぐらいたって返事がきた。長男らしいやさしいことばのあと、次のようなことが書かれてあった。
「手紙を拝見すると、あまりにもレシーブで決めようとしているように感じる。応援にいった全日本選手権の試合を見ていてもそう感じた。レシーブだけで得点しようとすると、焦りがでていいレシーブができないものだ。試合は、やはり『ロング戦で勝つ』という気持ちを持って臨むことが大事ではないかな。そのほうがうまくレシーブできるし、卓球が楽しくなると思うよ」
私は、この返事を読んだとき「アッ、これだ!!!」と思った。まったく長男のいう通りであり、そう思うと気持ちがラクになった、と同時に「このことは、他の技術のときも同じだ」と強く感じた。
私は、その日からすべての練習のときに「ロング戦をやるんだ。ロング戦で勝つんだ」と心に言いきかせて打ち合った。その心の余裕から、フォアハンドやショート、ショート打ちなどすべての技術が安定していくのがよくわかった。そして私の卓球は、長男に返事をもらった日から大きく変わった。レシーブのときに変わったことは主として次のようなことだ。
①前日までは、焦りと精神的な圧迫感があったが、気がラクになったことから冷静になれからだの固さも取れ、苦手なバック側の回り込みがしやすくなった
②落ち着いたことから、相手の手首の動きがよく見え、変化が見分けられるので強く払えるボールか、つなぐボールかの判断が早くなった。と同時に、無駄な足の運びがなくなった
③筋肉に無駄な力が入っていたのがきれいに抜け、からだ全体に柔軟性が出て、回転の変化、スピードの変化に対応しやすくなった
④リキミがとれ、威力とコントロールがついたし、自分が望んだコースに打ちやすくなった
⑤精神的に非常に楽になり、疲れなくなった
⑥次の展開を考えるようになったことから、動きが早くなり無駄のない正確な戻りができるようになった。4球目の攻撃と守備もやりやすくなった。またこのことから、ミスが大幅に減りロング戦に強くなった。
技術的には大体以上のことだが、それよりもっとうれしかったのは、卓球の楽しさがよみがえり、練習によりいっそう身が入ってきたことだ。
この時の兄の手紙は、実にありがたい手紙であった。
このときから、私はレシーブ力とロング戦が急激に進歩し、7ヵ月後の京都インターハイでシングルス3位の好成績につながった。また「常にロング戦で勝つんだ」という気持ちで戦ったことが、大学1年生での全日本優勝や全日本10年連続ベスト4の安定した成績にもつながったように思える。
ロング戦=コートから離れることではない
しかし、ここで注意してほしいことは、ロング戦とすぐにコートから離れることとは違うということだ。カットマンなら、得意のカット態勢に持ち込むためにコートから離れてプレイするが、ロング対ロングの場合は先手必勝が定石。自分の得意のロング系技術がやりやすい位置で先手をとって攻めることだ。このことは非常に重要なことで、絶対に間違えてはならない。もし間違えると、攻めの遅い勝ちにくい卓球になるからだ。
また、ロング戦にするためになんでもかんでも安全第一の消極的なレシーブで返せ、ということでもない。ロング戦で勝つためには、先に攻めた方が有利に決まっている。積極的なレシーブがどうしても必要である。私がいいたいのは、レシーブに臨むときは、ロング戦に持ち込んで勝つんだと考え、少しでも楽な余裕のある気持ちで相手のサービスの難易に応じたレシーブをすべきだということである。このような気持ちで臨めば必ずスケールの大きい選手に成長する、と私は思う。
インパクト直前にあれこれ迷うな
試合でよく、インパクト直前に払うかツッツくかストップするか、とあれこれ迷っている選手がいる。これも絶対に禁物である。迷った場合、正確な角度、押しができないだけでなく次の対応も決まらないのでメチャクチャになってしまうからだ。やはり、相手がサービスを出した直後にどう処理するか早く決断することだ。
このことで、特に印象に残っている試合がある。'71年9月に北京で行なわれた、アジア・アフリカ友好大会の男子団体の対中国戦で、変化の分かりにくいフォアサービスと威力のある3球目ドライブ攻撃をもつショートもうまい大柄の郗恩庭選手('73年世界チャンピオン)と対戦したときのことだった。日本での日中交歓大会で苦戦していた私は試合前、変化サービスを払い3球目ドライブを封じる作戦を立てた。だがレシーブミスを恐れた私は打とうとする直前に迷ったために変化のない長いツッツキで返し、やすやすと3球目攻撃を浴びバックハンドを攻め込まれ団体戦全勝を飾ろうとした夢を打ち破られた。
しかし、個人戦の準決勝で再び郗恩庭選手と対戦することとなった。私は、少々ミスが出てもサービスを払っていく決意をして試合に臨んだ。彼のサービスは相変わらず変化の分かりにくいサービスであったが、私はボールをよく見て思い切って払い中陣での得意のロング戦に持ち込んだため、3対1で雪辱を果たすことができた。このときの勝因は、なんといってもレシーブの良さだった。相手がサービスを出した直後、払うか、ストップか決断して思い切ってレシーブしたことが、正確な押しと角度を引きだした。また、大学に入学してから大学3年で世界選手権で優勝するまでの、一番の登り調子のときも同様にレシーブに迷いがなかった。私の体験からも、相手がサービスを出した直後に決断することの重要性がいえる。打つ前に時間的に余裕ができるので、相手の動きをみて両サイドに打ちわけられるし、相手の3球目攻撃も読みやすいので4球目の処理もやりやすい。
反対に、打つ直前に迷ったり、迷いがあるまま打つとインパクトのときの振りが著しく鈍り、下切れのサービスのときはネットミス、サイド回転サービスやアップサービスのときはオーバーミスしやすい。このようなレシーブをしたときはだいたい負けている。そしてこのようになるのは、①自信のない時。②練習試合のとき、考えてレシーブしていないとき。③レシーブ練習がたりないとき。④集中力のないとき。⑤やる気のないとき...などが多い。
このようなときは、次のような練習をするとよい。
①同じところに同じ回転のサービスを出してもらい、納得がいくまで反復練習をする
②①ができるようになったら、ワンサイドに試合と同じようにサービスを出してもらい、納得がいくまで反復練習をする
③オールサイドに出してもらい、素早く相手のサービスの変化とコースを判断し、迷わず自信を持って思い切ってレシーブする。ゲーム練習のときも同じようにする
私は、大学1年生のとき、よく①~③の練習方法をしたが、練習時間が短いときやフットワーク中心の練習をした高校2年生のときのように、他の練習でレシーブ練習ができないときは、③のゲーム練習のときに意識してやる方法をとった。このようにやったときは、自分でも上達していくのがわかるほど効果があった。やはりゲームの中で使っていくと覚えるのが実に早い。練習時間の少ない選手は、ぜひこのようにやって練習不足をカバーして欲しい。これは上達のコツでもある。
コースは打つ前に決めろ
レシーブをするときに、もう一つ大事なことがある。それは打つ前にはっきりとコースを決めておくことである。少しうまい人になれば、ふつうレシーブの構えに入る前に「このサービスが来たときはこう返す。これはこう返す。ここに出されたのはこう返す」と作戦を立ててからレシーブの構えに入る。そして相手がサービスを出した直後、払って返すかストップで返すか、ロングサービスであれば強ドライブでいくかスマッシュかつなぎのロングで返すか...と決める。またこのときにだいたいコースを決めてしまうが、遅くともバックスイングをとる前にはコースを決めることが必要である。ラリー中相手のロングやカットを正確なスマッシュや正確なパワードライブで攻めるときには打つ前にコースも打球法もはっきりと決めておく必要があるのと同じように、レシーブのときもコースを打つ前に決めておくべきである。しかし、これはあくまでも予定であって決定でないことはもちろんである。
すると予想通りのサービスがきたときに正確なバックスイングが取れてレシーブミスが大幅に減り、安定性が増す。そればかりか、強く払う構えから短く止めるとか、フォアへ払う構えからバックに流すとか、その逆とかといった、からだをうまく使った逆モーションレシーブをする余裕ができ、レシーブに威力も増すからである。レシーブのうまい伊藤繁雄選手('69年世界チャンピオン)、河野満選手('77年世界チャンピオン)のレシーブも、打つ前にコースを決めていたことから逆モーションになるレシーブが実にうまかった。また、足の構えもしっかりすることから安定感もあった。打つ前にコースを決めることは、レシーブ力をつけるためにも非常に重要なことだ。
筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1978年6月号に掲載されたものです。