試合で良いレシーブをするための心構え「レシーブに臨む心1~2」で、「自信を持って臨む」「勇気をもってレシーブする」「思い切り動く」「サービスに全神経を集中させる」「ボールをしっかり見てミートを強くする」ことが大切だと述べた。しかし、良いレシーブをするためのコツ、心構えとしては、まだ重要なことがいくつもある。
最後まで振り切れ
レシーブで大切なことの6番目は、必ず最後まで振り切る、ことだ。角度を合わせてただ入れるだけのレシーブはいけない。
ところが最近は、全日本選手権、インターハイ、全国中学大会等のレベルの高い試合でも、中途半端な振りのレシーブをする選手があまりにも多く見受けられる。そのため、攻撃されないようにコースを考えてレシーブしたつもりでも、ボールに威力がないため相手に狙いどおりの3球目攻撃を浴びて、連続失点する場面がよく見られる。
これでは、たとえどんなすばらしいサービスからの攻めを持っていたとしても、レシーブに回ったときにリズムを崩し、勝つことが大変むずかしい。特に相手が鋭い3球目攻撃を持っている場合は、どうしようもなくなってしまう。
ところが、自分で「こう打つ」と決めたとおりにしっかり振り切ってレシーブした場合は、レシーブしたボールが生きているので、相手はそれほど強烈な3球目攻撃ができない。多少のミスは恐れず、ツッツキでもドライブでも払う場合でもしっかり振り切り、ベストスイングすることが非常に大切なことだ。
オデコに強く当てる気持ちで
たとえば、攻撃対攻撃の試合で数多く出されるバック前の変化サービスを「フォアハンドで回り込みクロスに払う」と決めた場合、まず、ボールから目を話さないようにしながら、バウンドの頂点をとらえ、右腰を鋭く回して打てる位置まで素早く大きく回り込む。そして、打つときはボールをしっかり見て踏み込みながら(一般的には)おでこの左上までスパッと振り切ることだ。
次によく出される「フォア前の変化サービスをフォアに強く払う」と決めた場合。まず、バック前を攻めるときと同じように、バウンドの頂点を腰を鋭く使って打てる位置まで素早く動く。そして、やはり打つときにボールをしっかり見ておでこの左上までラケットをスパッと振り切ることが大切だ。
振り切るとオーバーミスをするような気がして怖いものだが、実際は振り切ったほうがコントロールがよく、4球目攻撃が大変にやりやすくなるものだ。また、思い切って振り切るレシーブをすることには、試合運び上、大変な利点がある。
伊藤・河野組の例
それについて、'68年、'69年の2年間、国内で無敵を誇った伊藤・河野組(当時専修大)を例にあげて紹介したい。
私が組んだダブルスは、このダブルスと何度も対戦して一度も勝てなかった。というのは、この二人のダブルスの戦術が非常にしっかりした考え方をもっていたからだ、と後になって二人に聞き、わかった。「はじめのレシーブのとき、たとえ少々ミスが出ても振り切って鋭く払ったほうが、次のレシーブの番から払うレシーブが確実に決まるようになり、中盤から必ず逆転できる」という信念を二人は持っていたのだ。そのため、彼らは試合の出足こそ固くなったり、変化を読み間違えたりで1-4、3-7とリードされることがしばしばあったが、次のレシーブ番からは固さがとれ、変化もわかり、払うレシーブを次々と決めていつも中盤で追いつき、終盤はもうぶっちぎりの感じで完勝していた。
このように、払うレシーブのときにしっかり振り切るようにすると前半ミスが出ても、調子をつかむのが早く、中盤からは自分の実力を確実に出せるようになる。ドライブやスマッシュなどのレシーブはもちろん、ツッツキ、プッシュなどのレシーブのときもフィニッシュまで鋭く振り切ろう。
無理な体勢のときは、第2、第3のレシーブ
しかし、このとき注意しなければならないことが一つある。よく「振り切れ」というと、何でもかんでも強く打って自滅する選手がいるが、このような試合のやり方が一番下手といえる。特に多いのが、フォア前、バック前の変化サービスを不十分な体勢なのに手先だけで強く打ち返す選手だ。このようなレシーブでは、たとえ振り切ってもかえって打ち方のリズムをこわし、調子を悪くする一方だ。
いくら振り切ることが大切であっても、相手のサービスを読み間違えて、打つ前の体勢が悪かったら第2、第3の戦法に切りかえることが大切だ。たとえば、フォア前の変化サービスをクロスに払うつもりが、逆をつかれた形になってできなかった場合は、バックに深くナックルボールで返したり、バックにツッツくと見せかけてフォアにツッツいたりする。そして、4球目をしのいで6球目から積極的に攻撃していく。無理な体勢のときにこのような戦法に切りかえられる選手は試合に強くなれる人だ。
払うとき、ダラッと手首を下げない
それともう一つは技術的な問題だが、台上のボールをフォアハンドで払うときに、ラケットの先端が下を向いたまま振っている選手が多いことだ。ラケットを下に向けるとコースは逆をとりやすいが、これではラケットの先端が回らず、威力のあるボールは打てない。台上のボールを鋭く払うには、日本式ペンの場合、ラケットの先端が真横か、少しさがっているぐらいがやりやすい。中国式ペンの場合は、グリップの関係からラケットの先端を斜め下に向け、ラケットの面を上に向けるようにするが、それでも手首を自然な形で使い、手前に深く折り曲げたりしない。ラケットの先端が極端に下に向いたり、手首がダラリと下がっている人は、それを直すことで払うレシーブがやりやすくなるだろう。
もどりを早くする
レシーブで7番目に大切なことは、もどりを早くすることだ。このことは鋭い4球目攻撃、あるいは守りに絶対に欠かせないことだ。が、意外と軽視する選手が多い。
しかし、このとき注意することは、4球目を考えすぎてしっかり振り切らないうちにもどったり、重心移動をしないうちにもどり始めたりしないことだ。あるいは「もどろう、もどろう」と考えて、ボールのところまでしっかり動かないで打ったりしてはなんにもならない。なぜなら、こういったレシーブのやり方では、正確に打っているつもりでもそうでないために、レシーブミスが多く出るし、入ったとしてもボールに威力がない。そのために、強烈な3球目攻撃を浴びてしまう。また、中途半端な返し方をした場合、逆にもどりがおくれ、攻守の基本となる構えが悪くなることが多い。
とにかくレシーブで大切なことは、しっかり振り切ってレシーブし、そのあと素早くニュートラル(ラリー中の基本姿勢、位置)にもどることだ。そのためには、レシーブの反復練習と体力トレーニングをたくさんやって、足腰、腹筋、背筋を鍛えなければ早いもどりができず、よいレシーブ+4球目攻守ができない。レシーブの反復練習と体力トレーニングをしっかりやろう。
最後まで振り切れ
レシーブで大切なことの6番目は、必ず最後まで振り切る、ことだ。角度を合わせてただ入れるだけのレシーブはいけない。
ところが最近は、全日本選手権、インターハイ、全国中学大会等のレベルの高い試合でも、中途半端な振りのレシーブをする選手があまりにも多く見受けられる。そのため、攻撃されないようにコースを考えてレシーブしたつもりでも、ボールに威力がないため相手に狙いどおりの3球目攻撃を浴びて、連続失点する場面がよく見られる。
これでは、たとえどんなすばらしいサービスからの攻めを持っていたとしても、レシーブに回ったときにリズムを崩し、勝つことが大変むずかしい。特に相手が鋭い3球目攻撃を持っている場合は、どうしようもなくなってしまう。
ところが、自分で「こう打つ」と決めたとおりにしっかり振り切ってレシーブした場合は、レシーブしたボールが生きているので、相手はそれほど強烈な3球目攻撃ができない。多少のミスは恐れず、ツッツキでもドライブでも払う場合でもしっかり振り切り、ベストスイングすることが非常に大切なことだ。
オデコに強く当てる気持ちで
たとえば、攻撃対攻撃の試合で数多く出されるバック前の変化サービスを「フォアハンドで回り込みクロスに払う」と決めた場合、まず、ボールから目を話さないようにしながら、バウンドの頂点をとらえ、右腰を鋭く回して打てる位置まで素早く大きく回り込む。そして、打つときはボールをしっかり見て踏み込みながら(一般的には)おでこの左上までスパッと振り切ることだ。
次によく出される「フォア前の変化サービスをフォアに強く払う」と決めた場合。まず、バック前を攻めるときと同じように、バウンドの頂点を腰を鋭く使って打てる位置まで素早く動く。そして、やはり打つときにボールをしっかり見ておでこの左上までラケットをスパッと振り切ることが大切だ。
振り切るとオーバーミスをするような気がして怖いものだが、実際は振り切ったほうがコントロールがよく、4球目攻撃が大変にやりやすくなるものだ。また、思い切って振り切るレシーブをすることには、試合運び上、大変な利点がある。
伊藤・河野組の例
それについて、'68年、'69年の2年間、国内で無敵を誇った伊藤・河野組(当時専修大)を例にあげて紹介したい。
私が組んだダブルスは、このダブルスと何度も対戦して一度も勝てなかった。というのは、この二人のダブルスの戦術が非常にしっかりした考え方をもっていたからだ、と後になって二人に聞き、わかった。「はじめのレシーブのとき、たとえ少々ミスが出ても振り切って鋭く払ったほうが、次のレシーブの番から払うレシーブが確実に決まるようになり、中盤から必ず逆転できる」という信念を二人は持っていたのだ。そのため、彼らは試合の出足こそ固くなったり、変化を読み間違えたりで1-4、3-7とリードされることがしばしばあったが、次のレシーブ番からは固さがとれ、変化もわかり、払うレシーブを次々と決めていつも中盤で追いつき、終盤はもうぶっちぎりの感じで完勝していた。
このように、払うレシーブのときにしっかり振り切るようにすると前半ミスが出ても、調子をつかむのが早く、中盤からは自分の実力を確実に出せるようになる。ドライブやスマッシュなどのレシーブはもちろん、ツッツキ、プッシュなどのレシーブのときもフィニッシュまで鋭く振り切ろう。
無理な体勢のときは、第2、第3のレシーブ
しかし、このとき注意しなければならないことが一つある。よく「振り切れ」というと、何でもかんでも強く打って自滅する選手がいるが、このような試合のやり方が一番下手といえる。特に多いのが、フォア前、バック前の変化サービスを不十分な体勢なのに手先だけで強く打ち返す選手だ。このようなレシーブでは、たとえ振り切ってもかえって打ち方のリズムをこわし、調子を悪くする一方だ。
いくら振り切ることが大切であっても、相手のサービスを読み間違えて、打つ前の体勢が悪かったら第2、第3の戦法に切りかえることが大切だ。たとえば、フォア前の変化サービスをクロスに払うつもりが、逆をつかれた形になってできなかった場合は、バックに深くナックルボールで返したり、バックにツッツくと見せかけてフォアにツッツいたりする。そして、4球目をしのいで6球目から積極的に攻撃していく。無理な体勢のときにこのような戦法に切りかえられる選手は試合に強くなれる人だ。
払うとき、ダラッと手首を下げない
それともう一つは技術的な問題だが、台上のボールをフォアハンドで払うときに、ラケットの先端が下を向いたまま振っている選手が多いことだ。ラケットを下に向けるとコースは逆をとりやすいが、これではラケットの先端が回らず、威力のあるボールは打てない。台上のボールを鋭く払うには、日本式ペンの場合、ラケットの先端が真横か、少しさがっているぐらいがやりやすい。中国式ペンの場合は、グリップの関係からラケットの先端を斜め下に向け、ラケットの面を上に向けるようにするが、それでも手首を自然な形で使い、手前に深く折り曲げたりしない。ラケットの先端が極端に下に向いたり、手首がダラリと下がっている人は、それを直すことで払うレシーブがやりやすくなるだろう。
もどりを早くする
レシーブで7番目に大切なことは、もどりを早くすることだ。このことは鋭い4球目攻撃、あるいは守りに絶対に欠かせないことだ。が、意外と軽視する選手が多い。
しかし、このとき注意することは、4球目を考えすぎてしっかり振り切らないうちにもどったり、重心移動をしないうちにもどり始めたりしないことだ。あるいは「もどろう、もどろう」と考えて、ボールのところまでしっかり動かないで打ったりしてはなんにもならない。なぜなら、こういったレシーブのやり方では、正確に打っているつもりでもそうでないために、レシーブミスが多く出るし、入ったとしてもボールに威力がない。そのために、強烈な3球目攻撃を浴びてしまう。また、中途半端な返し方をした場合、逆にもどりがおくれ、攻守の基本となる構えが悪くなることが多い。
とにかくレシーブで大切なことは、しっかり振り切ってレシーブし、そのあと素早くニュートラル(ラリー中の基本姿勢、位置)にもどることだ。そのためには、レシーブの反復練習と体力トレーニングをたくさんやって、足腰、腹筋、背筋を鍛えなければ早いもどりができず、よいレシーブ+4球目攻守ができない。レシーブの反復練習と体力トレーニングをしっかりやろう。
筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1984年3月号に掲載されたものです。