前回は、ドライブ対カットのラリー中に絶対守らなくてはならない基本として「しっかり振り切った後、すぐ攻撃も守備もしやすいラリー中の基本姿勢に戻る」ことの大切さを紹介した。
この基本を身につけ、どちらにも打てる体勢から球威(スピード・回転・打球点)のあるドライブで、コース・回転に変化をつけて粘れば、いかに攻撃力のあるカットマンを相手にしても、そう簡単にはラリー中にスマッシュで狙い打たれるものではない。
しかし、近年の攻撃のうまいカットマンは、カット対ドライブのラリーから強弱のドライブにスマッシュをまじえた多彩な反撃をしてくる。今回は、その曲がるドライブでカットマンが様子をみにきた時、強ドライブで思い切った攻撃をしてきた時などにどのように対処したらよいかを考えてみよう。
つなぎのドライブはチャンス
まず初めは、世界選手権での陳新華や明大の渋谷選手がよく使う、曲がるドライブ対策だ。
このドライブ自体は「攻撃」というより、カットマンがフォアサイドに強弱のドライブで粘られた時「変化」の意味で使うことが多い。
しかし、このボールを当てるだけのロングで返してばかりいると、中陣からの連続攻撃を浴びてしまう。
この様子をみてくる曲がるドライブに限らず、カットマンがドライブしてきた時に大切なことは「イヤだな」と思わず「チャンス」と思うことだ。
なぜなら、気持ちの準備と体勢の準備(攻守兼備の姿勢にすぐ戻る)ことさえできていれば、カットマンのドライブはそう恐れることはないからだ。
いくらよいカットマンでも、攻撃選手以上の連続攻撃は難しいし、用具の関係でロングマンほど威力のあるドライブは出しずらい。そう考えてみれば、ドライブはカットより回転の変化がわかりやすいし、バウンドも高い。様子みの曲がるドライブなど、考えてみれば絶好のスマッシュチャンスといえる。しかし、うまくスマッシュできないのはカットを連続して打っているところに急に逆の前進回転のボールを打たされるので、スイングの変更ができないこと、そして気持ちの準備ができていないため、台との距離が近すぎたり、曲がるボールに対する予測が悪かったりするからだ。
世界選手権で陳新華がフォアへくる難しいドライブをこの曲がるドライブで返球、ドライブしかできないヨーロッパ選手が軽いロングで合わせてしまうため、またカットのラリーに戻ったり、陳にパワードライブで狙い打たれた。
その時、団体戦でこの曲がる陳のドライブをつないだため惜敗した日本の宮崎選手が、個人戦ではこのドライブをスマッシュで狙い打ってみごと陳を破った。
この例からもわかるように、カットマンが打点を落とし、ドライブマンのドライブ回転を利用した曲がるドライブで様子をみてきた時は、まずスマッシュを念頭においておくこと。そして、次は曲がるドライブがくるな、と予想し、その通りきた時は思い切ってスマッシュする。ちゅうちょせず思い切ってスマッシュすれば入る率が高い。ただし、予想していない時や、低く難しいコースにきた時はコースをついて再びラリーにもどる。また、スマッシュする時は、足をしっかり動かし、ドライブの回転量をよく判断して打つ。練習をしっかりし、試合で相手ドライブのクセをよく見極めれば、スマッシュで狙えるようになる。
強ドライブも恐くない
次にカットマンが攻撃選手のドライブを強ドライブで反撃してきた時の対策を考えてみよう。
強ドライブによる反撃は、曲がるドライブの場合と違い、そう簡単にはスマッシュで狙い打てない。が、スマッシュで反撃された時と違い、自信をもって対処すれば、恐れるにはたりない。いけないのは「うわっ、反撃された!」と思い、こわごわやっと返す当てるだけの打法(ショート、ロング、ロビング)だ。また逆にカットマンの攻撃力をあなどり「一本入れておけば、次はミスするさ」と同様に当てるだけの打法で返すのもまずい。最近のカットマンは小さいころから連続攻撃の練習をつんでいるので、当てるだけのショートでは、連続攻撃を浴び打ち抜かれるのがおちだ。では、どうしたよいか?というと、自分の戦型にあった技術で、対ロングマンのドライブを処理するのと同じ打法で処理するのがよい。
前陣型の選手であれば、基本はプッシュ(押しぎみのショート)またはハーフボレ―で早い打点をとらえ処理する。フォアへ打たれてもバウンド直後をとらえたハーフボレ―で処理する。そうすれば、カットマンは連続攻撃はおろか、バックへ回り込むとフォアを抜かれると思って簡単には反撃できなくなる。
また、ドライブに対し、カット性ショートや横回転を入れたショートで低く返すのが得意な選手は、得意な打法で連続攻撃を防ぐ。
そして、中陣ドライブ戦の得意なドライブマンであれば「相手が中陣強ドライブで攻撃してくるな」と読める時は、ドライブ対ドライブのラリー戦に持ち込む作戦もよい。
前にも述べたように、練習量、用具の関係でカットマンのドライブよりドライブマンのドライブのほうが威力のあるのが普通だ。それがカットマンのドライブに押し負けてしまうのは「うわ、打たれた」と驚いたり、カットマンに逆をつかれたりするからだ。「さあドライブしてこい」と待ちうけ、十分なドライブ戦に持ち込めればカットマンは押されて甘いカットになる。そこを正確にスマッシュで決める。
この基本を身につけ、どちらにも打てる体勢から球威(スピード・回転・打球点)のあるドライブで、コース・回転に変化をつけて粘れば、いかに攻撃力のあるカットマンを相手にしても、そう簡単にはラリー中にスマッシュで狙い打たれるものではない。
しかし、近年の攻撃のうまいカットマンは、カット対ドライブのラリーから強弱のドライブにスマッシュをまじえた多彩な反撃をしてくる。今回は、その曲がるドライブでカットマンが様子をみにきた時、強ドライブで思い切った攻撃をしてきた時などにどのように対処したらよいかを考えてみよう。
つなぎのドライブはチャンス
まず初めは、世界選手権での陳新華や明大の渋谷選手がよく使う、曲がるドライブ対策だ。
このドライブ自体は「攻撃」というより、カットマンがフォアサイドに強弱のドライブで粘られた時「変化」の意味で使うことが多い。
しかし、このボールを当てるだけのロングで返してばかりいると、中陣からの連続攻撃を浴びてしまう。
この様子をみてくる曲がるドライブに限らず、カットマンがドライブしてきた時に大切なことは「イヤだな」と思わず「チャンス」と思うことだ。
なぜなら、気持ちの準備と体勢の準備(攻守兼備の姿勢にすぐ戻る)ことさえできていれば、カットマンのドライブはそう恐れることはないからだ。
いくらよいカットマンでも、攻撃選手以上の連続攻撃は難しいし、用具の関係でロングマンほど威力のあるドライブは出しずらい。そう考えてみれば、ドライブはカットより回転の変化がわかりやすいし、バウンドも高い。様子みの曲がるドライブなど、考えてみれば絶好のスマッシュチャンスといえる。しかし、うまくスマッシュできないのはカットを連続して打っているところに急に逆の前進回転のボールを打たされるので、スイングの変更ができないこと、そして気持ちの準備ができていないため、台との距離が近すぎたり、曲がるボールに対する予測が悪かったりするからだ。
世界選手権で陳新華がフォアへくる難しいドライブをこの曲がるドライブで返球、ドライブしかできないヨーロッパ選手が軽いロングで合わせてしまうため、またカットのラリーに戻ったり、陳にパワードライブで狙い打たれた。
その時、団体戦でこの曲がる陳のドライブをつないだため惜敗した日本の宮崎選手が、個人戦ではこのドライブをスマッシュで狙い打ってみごと陳を破った。
この例からもわかるように、カットマンが打点を落とし、ドライブマンのドライブ回転を利用した曲がるドライブで様子をみてきた時は、まずスマッシュを念頭においておくこと。そして、次は曲がるドライブがくるな、と予想し、その通りきた時は思い切ってスマッシュする。ちゅうちょせず思い切ってスマッシュすれば入る率が高い。ただし、予想していない時や、低く難しいコースにきた時はコースをついて再びラリーにもどる。また、スマッシュする時は、足をしっかり動かし、ドライブの回転量をよく判断して打つ。練習をしっかりし、試合で相手ドライブのクセをよく見極めれば、スマッシュで狙えるようになる。
強ドライブも恐くない
次にカットマンが攻撃選手のドライブを強ドライブで反撃してきた時の対策を考えてみよう。
強ドライブによる反撃は、曲がるドライブの場合と違い、そう簡単にはスマッシュで狙い打てない。が、スマッシュで反撃された時と違い、自信をもって対処すれば、恐れるにはたりない。いけないのは「うわっ、反撃された!」と思い、こわごわやっと返す当てるだけの打法(ショート、ロング、ロビング)だ。また逆にカットマンの攻撃力をあなどり「一本入れておけば、次はミスするさ」と同様に当てるだけの打法で返すのもまずい。最近のカットマンは小さいころから連続攻撃の練習をつんでいるので、当てるだけのショートでは、連続攻撃を浴び打ち抜かれるのがおちだ。では、どうしたよいか?というと、自分の戦型にあった技術で、対ロングマンのドライブを処理するのと同じ打法で処理するのがよい。
前陣型の選手であれば、基本はプッシュ(押しぎみのショート)またはハーフボレ―で早い打点をとらえ処理する。フォアへ打たれてもバウンド直後をとらえたハーフボレ―で処理する。そうすれば、カットマンは連続攻撃はおろか、バックへ回り込むとフォアを抜かれると思って簡単には反撃できなくなる。
また、ドライブに対し、カット性ショートや横回転を入れたショートで低く返すのが得意な選手は、得意な打法で連続攻撃を防ぐ。
そして、中陣ドライブ戦の得意なドライブマンであれば「相手が中陣強ドライブで攻撃してくるな」と読める時は、ドライブ対ドライブのラリー戦に持ち込む作戦もよい。
前にも述べたように、練習量、用具の関係でカットマンのドライブよりドライブマンのドライブのほうが威力のあるのが普通だ。それがカットマンのドライブに押し負けてしまうのは「うわ、打たれた」と驚いたり、カットマンに逆をつかれたりするからだ。「さあドライブしてこい」と待ちうけ、十分なドライブ戦に持ち込めればカットマンは押されて甘いカットになる。そこを正確にスマッシュで決める。
筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960~70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1986年8月号に掲載されたものです。