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わたしの練習86葛西順一 人の2倍集中して練習することを心がけて

 私は小学5年から卓球をやりはじめました。一生懸命やろうと決めたのは、当時卓球部の顧問をなさっていた三上先生のていねいな指導を受けたことによります。先生からは、フットワーク・素振り・サーキットトレーニングが1番大切だ、ということを教わりました。小学校の講堂に備えられていた等身大の鏡に向かって、毎日素振りを何百回かやったことを記憶しています。そのころは、ボールを打つのがとにかく楽しみで、朝始業前に友達と1時間ほどやり、放課後5時までやり夕食をとってから8時まで三上先生とボールを打っていました。小学6年の後半、小学校大会のシングルスで優勝してから、ますますやる気が出て、卓球を中心とした生活をするようになりました。
 中学のころは、ゲーム練習を主体とし、フットワーク・ショート・ショート打ち・サービスと3球目攻撃をやりました。トレーニングは、ランニング・うさぎ飛び・腹筋ダッシュ・腕立て伏せなどを、毎日行いました。ランニングは特にがんばったので、3年のとき、駅伝の学校代表になれるようになりました。㊤(まるじょう)卓球スクールの佐藤先生には、技術面や精神面の細かいアドバイスを受けました。だが、中学時代の成績は、地区大会でも県大会でも万年3位というものでした。もっと強くなりたいと思ったので、県下で1・2位を争う弘実高に進学しました。

 ~満足な成績をあげられなかった中・高校時代~

 高校時代の練習の大半はシステム練習に費やしました。トレーニングは、ランニング5km、うさぎ飛び200m、腹筋60回、足あげ腹筋3分×3回、腕立て伏せ50回、ダッシュ50m×6~8回を毎回やっていました。高校のときは、東北大会やインターハイで満足な成績をあげることができなかったので、ぜひ大学に入ってよい成績をあげたいという気持ちが強くなりました。高校1年のときから、早稲田大学を志望していたのですが、なんとか合格することができました。
 早大に入学したときに、大学4年間一生懸命練習し、悔いのない卓球生活を送ろうと決心しました。4カ月間ぐらい満足に練習をしていませんでしたから、まず同級生たちに追いつき、追い越すことを念頭に置き人の2倍集中して練習することを心がけました。早大の規定練習は、午後2時30分から4時30分までで、30分間合同トレーニングがあり、その後フリーとなります。

 ~スマッシュを主体の前陣速攻型を目ざして~

 私が将来目ざすのは、フォアハンドスマッシュを主体とし、攻守兼備のバック系技術を合わせもつ前陣速攻型です。どんなタイプの選手に対しても、自分の力を発揮できる技術面と作戦面の幅を持つ選手になりたいと思います。この1年は、基礎固めに、多くの練習時間を費やしました。練習のときは、1本1本おろそかにしないようにし、全日本の合宿で、田中監督から、鉄の玉のつもりで打てと言われたことを心にとめて、打っています。集中力が落ちそうになるときは、自己に勝て、ここでくじけるな、と言い聞かせます。試合の1カ月前であれば、今度の大会での目標はベスト4だとか、決めて、そのことを意識して、ボールを打つように、心がけています。基礎練習は一番大切だから、という信念で、この1年間フットワークとショート打ちだけは、みっちりやりました。フットワーク練習は次の通りです。
 ①フォア・バック交互に動き、正確につなぐ練習
 ②ランダムで動き、正確につなぐ練習
 ③ランダムで動き、連続強打する練習
 ④N字型(前後左右)フットワーク練習
 いずれもフォアハンドやショートで相手に打ってもらいます。意識して、バックショートやバックハンドを使い、きりかえの練習も並行してやっています。フォアを早いタイミングでついてくるボールに対しては、前陣で腰を使い、踏みこんで打つことを注意してやっていきますが、うまくいきません。この点が今後の課題だと思います。
 ショート打ちは、フットワーク練習のときと同じように体から遠い位置にくるボールに注意してやっています。ショート打ちで、特にチェックするのは、次のようなことです。
 ①打球点を高くとらえ、常にスマッシュできる態勢から打つ ②1本1本、ステップイン・ステップバックをくり返す ③ボールをよく見て、つま先立ちで動く ④フリーハンド・腰・手首・ひじをうまく活用する ⑤インパクト時に最高のスピードの振りをする ⑥基本姿勢へのもどりを早くする
 スマッシュ後のもどりが遅いので、練習を積んで早くしていきたいと思います。

 ~スマッシュに結びつけた練習を主体に~

 サービスと3球目攻撃。これは、試合で使う最も大きい要素なので、試合前には特に多く時間をさいて練習します。私はロングサービスからの3球目攻撃が多いので、この練習(ロングサービスからのスマッシュ)は19-19、あるいはジュースのつもりでやります。カンのよい選手には、ロングサービスをヨマれるので、モーションやタイミングを意識して変えるようにしています。威力と安定性を高めるために、ロングサービスだけを練習したりしますが、常にサービスを出した後、基本姿勢にもどろうと心がけています。また、フォア前に下回転サービスを出して、相手にツッツキでオールサイドに返してもらい、オールスマッシュする練習。オールサイドにはらってもらい、オールスマッシュする練習もやります。この練習で、どこにどんなレシーブを返されたときに、スマッシュできないか、ということを重視し、長期的な課題練習のなかに組み入れるようにしています。3球目オールスマッシュの練習と並行して、スマッシュが無理なレシーブに対しては、ツッツキやドライブで、コースをつき、5球目にスマッシュする練習もします。練習相手には、ミスを考えずに強くはらってもらったり、コースをついてもらうようにしています。

 ~レシーブ技術は鍵本さんを目標に~

 レシーブと4球目攻撃。レシーブはすべてはらうことを目標にしていますが、作戦的にツッツキを入れる、という気持ちでやっています。大きいカットサービスやロングサービスに対しては、レシーブスマッシュを主体にし、ショートやドライブでコースや回転を考えて、相手に容易に攻撃させないようにします。私の場合、ナックル性サービスをスマッシュできるようになれば、攻撃力が強化するので、この練習が課題となっています。レシーブ技術でまずいのは、中途半端に返すことがある点です。これは判断力の甘さと、決断力の不足からくるものなので、練習量でカバーしていきたい、と思います。鍵本肇さんのレシーブ技術を目標としていますが、試合ではうまくゆきません。「レシーブはまずタイプを見ます。タイプによって攻め方が大体わかるから」という鍵本さんを見習って、試合前には、相手をよく見て、分析し、作戦をよくたててから試合に臨むようにしています。
 私が一番課題としている技術は、カット打ちです。カットマン対策として、①相手がミスするまで、伸びのあるボールでねばり続ける ②低く深いカットを連続強打 ③反撃を1本しのぐ ④ツッツキ打ち等の練習をしています。守備範囲が広く、カットの球質に変化があり、反撃のうまい選手に勝つために、一発の強打力を増すこと、変化のあるボールに対して適応力を増すこと、反撃に対して守備力を増すことを目標にしています。

 ~課題は多いが1日1日を精いっぱい~

 トレーニングは、4時30分から5時までの合同トレーニングと、下宿に帰ってからの自主トレーニングの二通りやっています。合同トレーニングは、ランニング3km、サーキットトレーニング3セット(腕立て伏せ、腹筋、バーピー、つま先立ち)、ダッシュ等をやります。自主トレーニングは、ランニング、素振り、腕立て伏せ、腹筋等をやります。自主トレーニングの量は、その日の体調、または試合のあるなしによって変えています。卓球を私生活に結びつけ、自分をきびしく戒めて、妥協しないようにしています。
 昨年の全日本学生では、ベスト8に入り、今年のネパール国際招待大会シングルスでは、優勝することができましたが、全日本選手権や最近の東京硬式選手権での3回戦敗退とう不本意な成績が示す通り、技術面作戦面において、まだまだたくさんの課題が残っています。
 田阪・今野両先輩や長谷川さんらの胸を借りて練習できるという、恵まれた環境のもとで、1日1日を精いっぱい悔いのないようにがんばっていきたいと思います。

かさいじゅんいち 早稲田大学


(1974年5月号掲載)
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