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わたしの練習85古川敏明 all-roundプレーヤーを目指して

 私は大学を卒業して6年目をむかえました。練習内容はオールラウンドプレーをめざしてやっているので毎年かわっているが、社会人になって練習時間は必然的に少なくなったので、学生時代よりも1分1秒をむだなく利用することを意識してやっています。
 私の練習場は、母校の日大と、中大・青卓会での練習が主です。試合が近づくとなるべく1つの練習場でやるようにしています。練習は午後5時30分か6時ごろから9時まで行います。練習内容は試合の1カ月前と、試合のない時とではちがいます。
 大会前に自分で決めた選手に対して統計を出してみる。統計は今まで練習から試合までの資料を基にして行う。自分が負けても試合は最後まで見るので資料は楽に作れる。負けた原因、勝った原因、そのほか人に聞いたりして、練習計画を作る。試合の1カ月前は、何と何を練習しようと決める。以前は16位にはいるだけとか、低い目標であった。低い目標は苦しい練習が中途半端になりただやっているだけで終わる。真剣に技術を覚えようとか、真剣に苦しい練習に向かうところがない。目標はいつも高く持たねばならないと思う。
 練習の心構えは。①新しい技術を1日で覚え、明日の試合にはつかうんだという気持ちで行う。②カットで100本続けようと思ったら、何時間、1日かかっても続ける。99本でミスすれば、また1本から始める。楽勝できる相手はいない。常に楽な面より困難な面が多いからである。この練習中、数を忘れたりすると少ない数から始める。常にミスするポイントが50本くらいのところなら、ミスするところから1本、2本とか数える。新たな気持ちでやるとミスは少なくなる。この練習は、精神面を強化するのによい練習だと思った。
 私の、卓球のスタイルは相手のラケットの角度を変化させミスを誘う。オール攻撃、攻撃と守備、またはオールカットで戦う。オールラウンドプレーが目標である。カットマンがロングをしてはいけないとか、逆にロングマンがカットをしてはいけないとか固定的な考えではなく、相手によってプレーを変えることができるようにすることである。私は練習試合で、カットで勝てる相手には、ロング戦でよく試合する。
 私の技術練習は上記の目標と結びつけて行っている。

 ~バックハンドループを使った3球目と5球目スマッシュ~

 バックハンドループをまぜる3球目・5球目攻撃。
 この技術は今までの卓球の幅を広げてくれた。方法はバックサービスを相手のフォア前に出し、3球目をバックループでフォアへドライブ、5球目をフォアハンドスマッシュで決める。最初はレシーブをツッツキで返してもらう。現在はレシーブを、はらわれたとき、2バウンドで返されたとき、フォア側へ返されたとき、ミドルに...と複雑になってきた。対戦相手を想定して練習は行う。3球目のドライブは、ドライブで返してもらったり、ショートで返してもらう。
 試合の1カ月前は3球目攻撃の練習を多くとり入れている。最初のレシーブは全部、フォアへ返してもらう。そして3球目をスマッシュする。逆に全部バック側へ返してもらいスマッシュする。最後はオールサイドへ返してもらい全部スマッシュする。この練習方法は、日本のある一流攻撃選手が、やっているのをみて自分もとり入れた。実際に効果はあったと思う。カットマンは、時間をかけて得点することと、簡単に得点できるもの、を持たねばならない。そのためには3球目攻撃は絶対必要である。日中交歓大会で李富栄選手が「日本のカットマンは3球目攻撃が少ない」といっていたのを思い出したからである。

 ~ストップされたボールの攻撃練習~

 私のカットは振りが速いため普通のカットより切れている。切ったボールを相手がから振りをしたときなど自分の位置へもどってくることがよくある。"ブーメラン"のようである。切れたボールを打つことが、困難であれば、相手は当然、ストップをかけてくる。また切らないカットで切れたモーションを起こせば、ストップはますます浮いてくる。ストップを打たないことは、切るカットをしたことの効果がない。切るカットが無意味となる。ときには無理だと思っても打つ場合がある。これは相手を"おどかす"ためで、ミスしても十分効果はある。ストップを打つときは、ストップが低くても打つくせをつける。最初はすこしネットより高めに上げてもらい、それをバックハンドで打つ。打てるようになったら低いボールを含めて、ストップは全部チャンスと思う気持ちで練習する。高校時代にある実業団選手から渋谷選手('59年全日本No.1)のストップ打ちについて聞いたことがあるが、「渋谷選手は台をネットと平行に半分に切り、浅くネット上に浮いたボールは絶対スマッシュする」という。現在の私もそのように心がけてやっている。ストップは、深いボールより、浅い方がはるかに打ちやすいと思う。相手のストップボールが台から出たときは、スマッシュか両ハンドでドライブをかけるようにしている。

 ~レシーブは先手をとるような気持ちで~

 レシーブ練習。原則としては、相手に楽に3球目をさせないことであり、逆に攻撃できることを目標にしている。ロングサービスや、台から出るサービスに対して、カットで返す場合とショートで返す場合、ドライブで返す場合がある。現在ロングサービスに対して、ショートで返す練習と、バックハンド、フォアハンドで回ってスマッシュで返すことを目標としている。またフォア前の台から出るか出ないかのボールに対して、早く判断し、バックハンドループ、フォアハンドドライブで返すようにしている。フォア前のサービスには小さく止めることとはらってレシーブすることを重点に練習をやっている。カットマンにとって、フォア前のレシーブは、勝負の鍵を握る重大な場合が多い。レシーブだけの練習は、20本連続返球するまで行う。前半はフォア前のみ、後半はミドルへあるいはバックへと分けて行う。このとき感じたことは、ただ返すだけでなく、相手に打たせないように返すことである。返すだけの練習は試合でどうしてもあまいレシーブとなり相手に気やすく3球目を打たれる。逆にレシーブを利用し自分から攻撃するくらいの気持ちでやると効果がある。また状況を考える。今、16-19で負けているとか、相手はバックへ回って攻めてくる、だからフォアへはらって返そうとか、切って返そうとか、考えながらやる方がよい。

 ~カットで相手を動かす練習~

 自分を含め、カットで相手を振りまわすケースが少ないと思う。相手にフォア側へドライブでねばってもらい、相手を動かす。バックカットでも動かす。この練習は、相手が山なりのボールでねばってきたとき、高い打球点のカットで動かすと仮想する。体の位置は台より1m30くらいで行う。台に近いので、ボールの返ってくるのが速いから、バックスイングを速く引き、ボールをよく引きつけることを注意してやる。ときにはボールにサイド回転を入れて行う。

 ~スマッシュの処理~

 以前はロビングの練習が多かったが、相手が強いと抜かれてしまうので、カットで処理するくせをつけている。当然と思われるが、1発目のスマッシュをショートで止め、次はロビングという方法も身につけるよう努力している。カットマンの生命はスマッシュ処理と思う。自分が今一歩伸びないのは、スマッシュを低く変化させて返せないからであると思う。今までスマッシュ処理はカットに変化をつけずに返球することに重点を置いていたが、先日合宿で藤井さんより、「スマッシュは連続して打ってくることが多いから、1発目からカットに変化をつけてねらって返すことがよい」とアドバイスされ、やってみたが、この方が効果があり、最初から変化をつけて返すように練習している。

 ~最後に1人でできる切るカット練習~

 卓球台の半分を立て片面へ向かって回転の大きいカットを送る。立てた台に当たったボールは、ドライブとなって返ってくる。切るカットの練習には効果はあった。切るカットのラケットの角度を覚えること。切れたときの打球感をおぼえること。打球点は高い位置をとる。振りは速くしないととんでいかないこと等を注意して1,000本続くまでやる。これは精神的な訓練になった。これからはフォアハンドのスマッシュとか、バックハンドのスマッシュを集中的にやった方がよいように思う。
 体力トレーニングはランニング20分くらい、腹筋150回、家に帰り行う。膝の屈伸500回、2日に1回鉄アレイ6kgを持ち行う。素振り1,000回。カットマンは膝を使ったプレーが多いので膝の柔軟性を重点的に行うべきである。素振りは振りを速くする。切るカットは振りが速くないと行えない。
 最後に全日本選手権の2カ月前は練習時間は少ないといつも感じる。自分のやる技術が多い割りに時間が少ない。1日終わると悔いの残る練習が多かったが、最後に思ったことは、卓球ができるだけでも幸せである。好きでもやれない人はたくさんいる。自分で1日精一杯やればそれでよいと思った。1日1日一生懸命やることを心がけている。日本での卓球の歴史や基礎をつくってくれた先輩方に感謝することと、世界で優勝できる新しい古川式卓球完成へベストをつくすつもりです。

ふるかわとしあき1973全日本3位
青卓会、27歳


(1974年3月号掲載)
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