卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズは、「RISING Zhang Jike!」と題し、チキータを武器に世界の頂点へと駆け上がった張継科(中国)の名勝負の数々をお届けしている。
今回は、ボル(ドイツ)との2011年世界卓球選手権(以下、世界卓球)ロッテルダム大会男子シングルス準決勝を紹介しよう。
■ 観戦ガイド
張継科自身がベストゲームに挙げる一戦
「取れないボールはなかった」というプレーは圧巻
2011年世界卓球ロッテルダム大会で世界卓球男子シングルス初出場を果たした張継科は、準々決勝で、初陣とは思えない堂々たるプレーで世界卓球を3度制している王励勤(中国)を下し、ベスト4へ勝ち上がった。
準決勝の相手は、世界ランキング2位(大会当時)のボルだ。現在でもそうであることに驚きを禁じえないが、当時のボルは今にも増して中国が警戒する選手で、中国選手の誰に対しても勝つ力を持っている。この大会でも準々決勝で陳杞(中国)に力の差を見せつける形で圧勝し、ベスト4へ勝ち上がってきた。加えて、ドイツの隣国オランダで開催の世界卓球ということで、ボルには地の利もある。
張継科にとっては、厳しい戦いになることが予想された。
試合が始まると、大観衆をバックにしたボルが充実のプレーで第1ゲームをあっさり奪う。一方の張継科は声援に気圧されたのか、凡ミスが目立つ。しかし、会場中がボルの決勝進出を後押しする中、張継科は逆襲に向けて確かな手応えをつかんでいた。
「1ゲーム目こそ観客の全員がボルを応援していたこともあって、その雰囲気に馴染めずに落としましたが、2ゲーム目以降は雰囲気にも慣れ、自分が持っているものをすべて出すことができました。
あの試合を振り返ると、すべてのボールをフォアハンドで取れるという自信がありました。打球地点に少し早めに着けてしまうほど動きに余裕がありました。取れないボールがない、というほど調子がよかったです。ビデオで見ても、驚くほど動けていました(卓球レポート2011年7月号より抜粋)」と振り返る張継科が、驚嘆の強さを見せつける。
後に張継科は、卓球レポート2013年9月号に掲載したショートインタビューで、この試合を自身のベストゲームに挙げている。
以降の栄光を約束するような張継科の圧巻のパフォーマンスを、とくとご覧いただきたい。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)