卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズは、「RISING Zhang Jike!」と題し、チキータを武器に世界の頂点へと駆け上がった張継科(中国)の名勝負の数々をお届けしている。
今回は、王励勤(中国)との2011年世界卓球選手権(以下、世界卓球)ロッテルダム大会男子シングルス準々決勝をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
世界卓球男子シングルス初出場の張継科が
世界王者3回のレジェンド・王励勤に挑む
2012年ロンドンオリンピック男子シングルス金メダルを筆頭に、数々のビッグタイトルを獲得した張継科だが、彼の名が一躍世界に広まったのは、2011年世界卓球ロッテルダム大会だ。
世界卓球の男子シングルスに中国代表として初選出された張継科は、3回戦でパワーヒッターの趙彦来(韓国)、4回戦でカット主戦型の朱世爀(韓国)と韓国勢を圧倒し、順調にベスト8へ進出した。
準々決勝の相手は、王励勤。恵まれた体躯を生かしたフォアハンドのパワードライブで、2001年大阪大会、2005年上海大会、2007年ザグレブ大会と世界卓球男子シングルスを3度も制したレジェンドだ。機を見て繰り出す回り込みシュートドライブは強烈で、王励勤の代名詞になっていた。
対する張継科も、シングルスは初出場とはいえ、大会前の世界ランキングは3位で優勝候補の一人に挙げられていた。
しかし、ベテランの域に差し掛かっていた王励勤は好調で、4回戦では当時若手の許昕(中国)を一蹴して難なく準々決勝まで勝ち上がってきている。加えて、上位に行けば中国選手同士の対戦が避けて通れない世界卓球を3度制した実績が物語るように、王励勤はここ一番での同士打ちに抜群の強さを発揮する。
いかに張継科に勢いがあるとはいえ、経験で勝り、同士打ちに強い王励勤が一枚上か。この予想通り、試合序盤は王励勤ペースで進み、張継科はゲームカウント1対2とリードを許す。「世代交代はまだ早い」と言わんばかりに、気迫の込もったプレーを崩さない王励勤はやはり強い。
しかし、ここから「(王励勤は)実力も経験も豊富な選手です。だから、自分は挑戦する立場なんだということを忘れずに戦いました。王励勤に対する準備もしっかりできたので、ゲームカウントを1対2とリードされても焦りませんでしたし、冷静に対応できました(卓球レポート2011年7月号より抜粋)」と語った張継科が、チキータと圧巻のフットワークで徐々に追い上げを開始する。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)