卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今回から、芸術的なタッチで観るものを魅了する松平健太（ファースト）の名勝負の数々を紹介していく。
初めに、吉田海偉（東京アート/当時 グランプリ大阪）との平成20年度（2009年1月）全日本卓球選手権大会（以下、全日本）男子シングルス準決勝をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
松平の「柔」と吉田の「剛」の
コントラストが映える激闘は必見
2006年世界ジュニア卓球選手権大会カイロ大会で、日本人初となる男子シングルス優勝という快挙を果たし、一躍世界にその名を響かせた松平健太。翌年に行われた2007年世界卓球選手権ザグレブ大会では日本代表に選出され、男子シングルスで実力者のコルベル（チェコ）を下して、その才能をあらためて証明する。
その後、手首の故障で平成19年度（2008年1月）全日本を棄権するなど長期離脱を余儀なくされるが、2008年の夏のインターハイ（全国高等学校卓球選手権大会）男子シングルスで優勝し、復活を果たす。
迎えた平成20年度（2009年1月）の全日本。当時、青森山田高校の2年生だった松平は、男子シングルス5回戦で坂本竜介（当時 協和発酵キリン）、6回戦で並木佑介（当時 シチズン）、準々決勝で大矢英俊（当時 青森大学）と強敵を連破。前年の全日本棄権の鬱憤を晴らすかのような集中力の高いプレーで、準決勝まで勝ち上がる。
準決勝の相手は、平成16年度（2005年1月）、平成17年度（2006年1月）と全日本男子シングルスを制している吉田海偉だ。吉田は、平成18年度（2007年1月）、平成19年度（2008年1月）の全日本男子シングルスでも決勝へ進出しており、その強烈なフォアハンドドライブと俊敏なフットワークは、日本のみならず世界にも轟いている。
試合が始まると、松平が芸術的な台上のタッチと柔らかい両ハンドドライブで先制する。しかし、新鋭に負けるわけにはいかない吉田も、十八番の剛腕ドライブと粘り強いロビングで松平の背中を捉えて離さない。松平の柔らかさと吉田の剛腕ががっちり噛み合った試合は、激しいラリーを繰り広げながらもつれにもつれていく。
松平の「柔」と吉田の「剛」のコントラストが効いた名勝負を、じっくりご覧いただきたい。
（文中敬称略）
（文/動画＝卓球レポート）
