卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズは、芸術的なタッチで観るものを魅了する松平健太(ファースト)の名勝負の数々をセレクションしている。
今回は、馬琳(中国)との2013年世界卓球選手権(以下、世界卓球)パリ大会男子シングルス2回戦をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
パワーが増した新たなスタイルで
馬琳に2大会越しのリベンジを狙う
2009年世界卓球横浜大会男子シングルスに出場した松平は、2回戦で呉尚垠(韓国)、3回戦でガルドシュ(オーストリア)と格上の選手を連破するも、4回戦で2008年北京オリンピック男子シングルス金メダルの馬琳に惜しくも敗れた。世界卓球男子シングルスベスト8入りはならなかったが、台上のうまさや両ハンドからの速攻とブロックでオリンピック金メダリストをあと一歩まで追い詰めた松平のプレーは、世界に大きなインパクトを与えた。
横浜大会の活躍により、日本の主軸に名を連ねた松平は、2011年世界卓球ロッテルダム大会男子シングルスに出場したが、発熱による体調不良と試合中に右肩を痛めるアクシデントが重なり、1回戦でR.スベンソン(スウェーデン)に競り負ける。上位進出が期待され、本人としても狙っていただけに、松平にとってロッテルダム大会は不本意な成績で終わった。
そして迎えた2013年世界卓球パリ大会。松平は、世界卓球男子シングルス4度目の挑戦にして、強烈な輝きを放つことになる。
男子シングルス1回戦でリード(イングランド)に完勝した松平(当時 早稲田大)は、順調に2回戦へ進出する。
2回戦の相手は、2009年世界卓球横浜大会で惜敗している馬琳だ。2008年の北京オリンピックで金メダルを獲得した当時のピークを過ぎたとはいえ、馬琳のテクニックや試合巧者ぶりは健在で、松平にとっては難しい相手だ。
しかし、試合が始まると、2大会越しのリベンジを狙う松平が猛ダッシュをかける。
台上や両ハンドの柔らかさはそのままに、パワーが格段に増した松平のボールが面白いように馬琳を詰まらせ、時にその横を駆け抜けていく。横浜大会では松平のパワー不足につけ込んでラリーに持ち込み、なんとか逃げ切った馬琳だったが、このパリ大会では松平の球威の前にラリーの主導権を奪うことができない。
華麗なテクニックにパワーを融合させた「ニュー健太」が魅せる、圧巻のリベンジ劇に酔いしれてほしい。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)