卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズは、芸術的なタッチで観るものを魅了する松平健太(ファースト)の名勝負の数々をセレクションしている。
今回は、サムソノフ(ベラルーシ)との2013年世界卓球選手権(以下、世界卓球)パリ大会男子シングルス4回戦をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
ヨーロッパの鉄人・サムソノフとの
ベスト8をかけた打撃戦は迫力満点!
2013年世界卓球パリ大会において、世界卓球で4大会連続となる男子シングルスに臨んだ松平健太(当時 早稲田大)。
2回戦で2008年北京オリンピック金メダリストの馬琳(中国)と対戦するという厳しいドロー(組み合わせ)になったが、圧巻のプレーで、馬琳に2009年世界卓球横浜大会で惜敗した借りを返し、3回戦へと駒を進めた。
3回戦では、江宏傑(中華台北)と対戦。前陣での高速ラリー戦が繰り広げられたが、松平が要所を締め、ゲームカウント4対2で江宏傑を退けて2大会ぶりに世界卓球男子シングルスでベスト16へと勝ち進む。
ベスト8入りをかけた4回戦で松平が対峙したのは、サムソノフだ。
サムソノフは、1997年世界卓球マンチェスター大会男子シングルス2位を筆頭に、長く国際大会で好成績を収め続けてきたヨーロッパの鉄人だ。
パリ大会当時のサムソノフは37歳とベテランの域に達していたが、ここまでの勝ち上がりを見る限り、年齢による衰えは感じられないどころか、プレーの無駄な部分がいよいよ削ぎ落とされ、円熟味が増した印象がある。
サムソノフのプレーでは、長身を生かしたスムーズな両ハンド攻守が目を引くが、彼と対戦したトップ選手たちが異口同音にすごいと舌を巻くのは、台上のうまさだ。特に、ストップするかのような雰囲気でゆったりボールに近づいてから、一転して相手コート深く押し込むツッツキは、誰もが体勢を詰まらせてしまう、サムソノフの知られざる必殺技だ。
松平も台上のうまさではひけを取らないが、豊富な経験に加え、台上で圧倒できないサムソノフは容易な相手ではない。
試合は、サムソノフが持ち味である台上のうまさとリーチの長さを生かした両ハンドで松平を翻弄し、第1ゲームをあっさり奪う。第2ゲームもサムソノフペースで中盤まで進むが、ここから松平が足を使って打撃戦を挑み、勝負は白熱してゆく。
持ち前のテクニックにパワーが加わった「ニュー健太」の真価が存分に表れた迫力のプレーをご覧いただきたい。
特に、サムソノフの台上と、その台上を松平がどうさばくのかに注目して見ると、この名勝負をより深く楽しめるだろう。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)