卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今回から、ファンタスティックなプレーで多くのファンを持つメイス(デンマーク)の名勝負を2試合紹介する。
初めに、王皓(中国)との2005年世界卓球選手権(以下、世界卓球)上海大会男子シングルス4回戦をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
「世界選手権大会という舞台を楽しみたい」
メイスの奔放さが、中国期待の王皓を圧倒する
前陣から後陣までエリアを問わず、型にはまらないプレーで卓球界に大きなインスピレーションを与えたメイス。独創的なプレーに加え、得失点時のエモーショナルな感情表現と、ワイルドさも少し入った甘いマスクも重なり、スター性のある選手だ。
メイスが、その名を一躍世界に轟かせたのは、2005年世界卓球上海大会である。以前から実力者として知られていたメイスだったが、この上海大会男子シングルスで中国選手を連破し、銅メダルを獲得したことにより、その名声は一気に高まる。
メイスが上海大会でブレークする鍵になった試合は、男子シングルス4回戦だ。
当時、世界ランキング19位(2005年4月5日発表)で男子シングルスに臨んだメイスは、4回戦まで順調に勝ち進み、王皓と対峙した。
当時の王皓はまだ線が細く、この2大会後の2009年世界卓球横浜大会で優勝する時ほどの迫力はないが、世界ランキング3位(2005年4月5日発表)で上海大会に臨んでおり、実力は十分だ。加えて、王皓には中国の大応援団がバックにつく。
メイスにとっては、かなり分の悪い試合になることが予想された。
しかし、試合が始まると、自国開催がプレッシャーに作用したのか、王皓のプレーからなかなか硬さが取れない。
一方、メイスは「あの試合の前まで、王皓には1度も勝ったことがありませんでした。そこで、試合の前夜にピーター(デンマーク監督のピーター・サーツ)と一緒に王皓の試合のビデオを見て、戦術を考え、とにかく自分のプレーに徹しようと決心しました。ベスト16まで勝ち上がっていましたから、非常にポジティブ(前向き)な気持ちで、早く試合をしたいと思っていました。ビッグゲームで勝ち上がれば、中国選手と対戦するのは当たり前。だから、僕は中国選手に勝つために毎日練習しています。そのため、王皓と対戦するのが楽しみでしたし、世界選手権大会という舞台を楽しみたいと思っていました(卓球レポート2005年11月号より抜粋)」と振り返った通り、序盤から生き生きとしたプレーを披露。
YGサービス(逆横回転系サービス)を起点に、速攻ありロビングありの自由奔放なプレーで王皓を圧倒していく。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)