卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今回は、石川佳純(全農/当時 ミキハウスJSC)との2009年世界卓球選手権(以下、世界卓球)横浜大会女子シングルス準々決勝をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
二度目の世界卓球制覇に挑む張怡寧
日本期待の石川佳純に対し、女王の風格を見せつける
2005年世界卓球上海大会女子シングルス決勝で郭炎(中国)との競り合いを、最後まで落ち着いたプレーで物にし、世界卓球初制覇を成し遂げた張怡寧。続く2007年世界選手権ザグレブ大会では、女子シングルス準決勝で後輩の郭躍(中国)に足をすくわれ、連覇はならなかったが、2008年北京オリンピックにおいて女子シングルス連覇を果たす。
余談になるが、張怡寧は北京オリンピックで選手宣誓の大役を任されている。国の威信をかけた一大事業で選手宣誓に抜擢されたという事実は、当時の彼女の名声の高さを端的に示すエピソードだ。
2度目の世界卓球制覇を目指し、横浜に乗り込んだ張怡寧は、無人の野を行くがごとく、順当にベスト8まで勝ち上がる。
準々決勝の相手は、地元・日本の石川佳純だ。
当時16歳の石川は、2回戦で帖雅娜(香港)、3回戦で福岡春菜(当時 中国電力)、4回戦ではユ・メンユ(シンガポール)と格上の選手を連破して勝ち上がってきており、勢いは十分だ。
特に、2回戦では、当時世界ランキング10位(2009年4月2日発表)の帖雅娜(香港)に、ゲームカウント0対3、ポイント3-9と敗戦寸前まで追い込まれたが、そこから奇跡的な逆転勝利を収めており、試合を経るたびに、力が覚醒している感がある。
今の石川の勢いなら、ひょっとすると張怡寧に迫れるかもしれない。そんな期待が会場の横浜アリーナに満ちていたが、試合が始まると「何をしても返ってきた」と試合後、石川が脱帽したように、張怡寧がさすがの強さを見せつける。オリンピック連覇を成し遂げ、風格がいっそう増した張怡寧のプレーを堪能してほしい。
また、敗れはしたものの、女王に対して果敢に打ち合い挑む石川の初々しいプレーにも注目だ。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)