卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
このシリーズでは、9月に韓国の平昌で開催された第26回アジア卓球選手権大会(以下、アジア選手権)での熱戦をセレクトして紹介する。
今回の名勝負は、樊振東(中国) 対 黄鎮廷(香港)の男子シングルス準々決勝をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
樊振東の戦術転換と黄鎮廷の奮闘が光る
シェークハンド対ペンホルダーの頂上決戦
シェーク攻撃型が大半を占める現代卓球では、シェーク攻撃型同士の対戦が圧倒的に多く、それ以外の試合を見るのはまれだ。世界ランキング50位以内のうち、47人がシェークハンドを使用する選手で占めるトップ層ではなおさらである(2023年8月29日発表の世界ランキング)。
そうした現状において、今回取り上げる樊振東(中国)と黄鎮廷(香港)のシェークハンド対ペンホルダーの対決は興味深い一戦であり、期待以上の熱闘になった。
世界卓球2021ヒューストン、世界卓球2023ダーバンと世界卓球男子シングルス連覇中の樊振東は、言うまでもなく今大会の優勝候補筆頭だ。男子団体では各チームのエースたちの挑戦を苦しみながらもはねのけて中国の優勝に大きく貢献。シングルスに入っても3回戦で吉山僚一(日本)、4回戦でNo.アラミヤン(イラン)に迫力のプレーでストレート勝ちし、順調な勝ち上がりを見せている。
対する黄鎮廷も4回戦で地元期待の張禹珍(韓国)との大激戦を制し、勢いは申し分ない。
シェークハンドとペンホルダー、それぞれの第一人者同士の試合は、黄鎮廷が持ち味であるフォアハンドドライブと鋭い裏面打法で第1ゲームを先制する。第2ゲームも序盤から激しい打ち合いを制した黄鎮廷がポイント3-1とリードしたところで、樊振東がたまらずタイムアウトを取る展開。
うなる音が聞こえてきそうな黄鎮廷のフォアハンドドライブの出来から、このまま黄鎮廷が一気に突き抜けるかと思われたが、タイムアウト明けから樊振東がYGサービス(逆横回転系サービス)を起点に試合の流れを自分の物にしていく。
不利な展開を打開する樊振東の戦術転換とそれを実行する能力はさすがの一言だが、世界王者に肉薄し、ペンホルダーがシェークハンドに対抗するためのなんたるかを体現している黄鎮廷のプレーも見事な名勝負だ。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)