卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体準々決勝の韓国対デンマークの2番、グロート(デンマーク)対張禹珍(韓国)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
グロートが丁寧な台上からの鮮烈カウンターで
地元開催に燃える張禹珍に牙をむく
世界卓球2024釜山ではメダルを懸けた準々決勝で熱戦が相次いだが、その中から今回は韓国対デンマークにスポットを当てたい。
地元開催に燃える韓国は、グループ3を全勝で1位通過すると、決勝トーナメント2回戦では強豪のインドを3対0のストレートで下し、順当にメダル決定戦まで勝ち上がってきた。
対するデンマークは、今大会のシンデレラチームと呼んで差し支えないだろう。グループ4をフランスに次いで2位通過すると、決勝トーナメント1回戦ではハンガリーに勝利。続いて、不利と見られていたヨルジッチを擁するスロベニアとの決勝トーナメント2回戦では、ラストまでもつれる大熱戦を制して8強入りし、勢いに乗っている。
試合は、1番が韓国は林鐘勳、デンマークはリンドの対戦になり、林鐘勳が質の高いチキータからの鋭い両ハンドで世界卓球2023ダーバン男子シングルスベスト8のリンドを退け、韓国が先制する。
続く2番で、張禹珍(韓国)とグロート(デンマーク)が対峙(たいじ)した。
張禹珍は2013年世界ジュニア選手権ラバト大会男子シングルス優勝を皮切りに、長く韓国代表の中軸として活躍している選手だ。快足を生かした、ここぞという場面での必殺の回り込みフォアハンドドライブを大きな武器とする。これまで、何度も日本代表の前に立ちふさがってきたことから、世界の強豪として張禹珍を認識している日本の卓球ファンは多いだろう。
一方、グロートはサウスポー(左利き)のシェーク攻撃型で、華々しい実績はないものの、2018年ヨーロッパトップ16男子シングルス3位を筆頭に、近年では2023年WTTフィーダー ドーハ2で優勝するなど着実にキャリアを積んでいる選手だ。丁寧な台上技術と、どこからでも打てる両ハンドでラリー戦にめっぽう強い。また、少なからぬ影響を受けていると思うが、柔らかくて自由度の高そうなグロートのスイングは、同じデンマーク出身の名選手メイスによく似ている。
世界ランキングは張禹珍が14位で、グロートは29位。世界ランキングに加え、これまでの実績を踏まえると張禹珍が優位と見られた一戦だったが、グロートが確実性を重んじる台上技術からの展開で主導権を握る。
グロートが見せた充実のプレーの中でも、張禹珍の鋭い攻撃を弱めるディープツッツキと、そこからの鮮やかなカウンターは白眉で、試合で勝つための得点パターンの1つとして大いに参考になるだろう。
(文中敬称略。世界ランキングは大会時)
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(文/動画=卓球レポート)