ついに、樊振東(中国)が卓球レポートに登場!この特別企画では、パリオリンピック金メダルを筆頭に数々のビッグタイトルを獲得し、名実ともに卓球界の頂点に君臨する樊振東が、自身の強さのもとになっている基本打法のポイントを丁寧に解説してくれる。
最終回となる第4回は、ツッツキ(下回転のボール)に対するバックハンドドライブを紹介しよう。
樊振東が身に付けている基本打法、それすなわち、原点にして頂点だ。世界最強の基本打法を、とくとご覧あれ。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーをモデルにしています
ボールをしっかり摩擦できるよう低い重心で準備する
樊振東 ツッツキに対するバックハンドドライブは、私にとって試合で最も使う確率が高い技術です。
この技術を試合で使う上では、相手のツッツキによって早いタイミングで打つのか、それとも少し遅いタイミングで打つのかを判断することが重要になります。飛んでくるツッツキのスピードによって、どのタイミングで打球すると最も合理的にスイングできるかが変わってくるからです。
具体的には、相手のツッツキのスピードが速いときは、下回転が強くかかっている可能性が低いので、その場合には早いタイミングでバックハンドドライブします。そうすると、体の前に打球するための空間を確保することができるので体勢が詰まりにくくなります。また、相手がスピードの速いツッツキを送ってくるときは、こちらのストップ(ボールをネット際に短くコントロールする台上技術)に対してツッツキするケースがほとんどです。ストップをツッツキするということは、相手が台の中に踏み込んでいるということなので、そのときに早いタイミングでバックハンドドライブすると、相手を前後に揺さぶることができます。
一方、相手のツッツキのスピードが遅い場合には下回転が強くかかっていることが多いので、打球するタイミングを少し遅らせます。そうすると、ボールをしっかり摩擦できるのでツッツキの下回転に負けにくくなり、なおかつ強く回転(前進回転)をかけることができます。そのため、ラリーの主導権を握りやすいでしょう。また、打球タイミングを遅らせることによって、次のプレーへの連係にも余裕が生まれます。
ここまでは、私がツッツキに対するバックハンドドライブを試合で使う際に心掛けているポイントをお話ししましたが、この技術は難度が高い技術です。そこで、身に付けるためのポイントをいくつかアドバイスしたいと思います。
まず、ツッツキには下回転がかかっているので、前回紹介したロングボールに対するときと比べて、重心を低くして準備することがポイントです。そうすると、ボールを摩擦する空間を十分に取ることができるので、打球の軌道が弧線を描きやすくなり、相手コートに入る確率も高まるでしょう。
打球するときは、腕だけに力を入れるのではなく、足や腰の力を腕に伝えるようにスイングすることを意識してください。そうして、体全体を使ってスイングすることによって打球の安定性が高まります。
ツッツキに対するバックハンドドライブ(横から)
ツッツキに対するバックハンドドライブ(前から)
冒頭で語られている通り、ツッツキに対するバックハンドドライブは、樊振東が得点するときの起点になることが多い。この技術から両ハンドで畳み掛けたり、相手のカウンターをさらにカウンターで切り返したりするプレーは、樊振東の真骨頂だ。
つなぎの技術として有効なツッツキは使用頻度が高いため、試合では相手からツッツキを送られるケースが多いだろう。そのときにしっかり対応できるよう、樊振東が心掛けているポイントやアドバイス、連続写真の力強いスイングを参考にして、ツッツキに対するバックハンドドライブの精度を高めてほしい。
樊振東が教えてくれたポイントのほか、注目してほしいのは、フリーハンド(左腕)だ。準備で前に伸ばしたフリーハンドを打ち終わりまで保ったままスイングしているが、こうすると体のバランスを保ちやすくなり、それに伴って目測も正確になるので、スイングの力強さや打球の安定感が増す。
準備で大きくひねった手首をしっかり返しながらスイングしているところも参考にしよう。
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(取材/まとめ=卓球レポート)