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強者のグリップ ダン・チウ

 ラケットを直接操作するグリップ(ラケットの握り)は、技術の精度に大きく関わります。強い選手たちはラケットをどのように握り、どのように力を入れて打球しているのでしょうか。強者のグリップから、上達のヒントをつかんでください。
 今回はダン・チウ(ドイツ)のグリップに迫ります。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーをモデルにしています

※2025年2月時点での用具

ダン・チウのグリップ
フォアハンドと裏面が打ちやすいようバランスよく握る

現代ペンドライブ型の第一人者ダン・チウが自身のグリップを解説

表面のグリップ

裏面のグリップ

--ダン・チウ選手のグリップを紹介してください。

ダン・チウ(以下チウ) まず、完全にニュートラルな(バランスの取れた)グリップというものは存在しないと思います。なぜなら、選手それぞれでグリップが異なるからです。ですから、「最終的にこれがニュートラルなグリップだ」と言い切ることはできません。
 ですが、個人的には自分のグリップはかなりニュートラルだと思います。王皓(中国/2009年世界チャンピオン。裏面打法のパイオニア)のグリップも、とてもニュートラルでした。
 例えばですが、ニュートラルなグリップとは、裏面の指(中指・薬指・小指)を軽くまるめるようなグリップです。裏面の指を真っすぐ伸ばすようなグリップではありません。ちなみに、裏面の指を真っすぐ伸ばすようなグリップはフォアハンドが打ちやすくなります。
 一方、裏面の指を小さく丸めすぎるグリップもニュートラルとは言えませんが、このグリップは裏面打法に適しています。
 その点、裏面の指を軽く曲げるようにラケットを握ると、両ハンド(フォアハンドと裏面打法)がバランスよく打ちやすくなるため、ニュートラルなグリップだと言えます。
 表面では、人さし指をグリップ(柄)の部分に回すように曲げて握ります。このとき、人さし指を深く曲げると、よりフォアハンドが打ちやすいグリップになります。これは、少し前の世代のペンドライブ型の選手に多いグリップですね。
 私の場合は、フォアハンドと裏面打法がバランスよく打てるよう、人さし指を深く曲げすぎず、かといって浅くもないニュートラルな感じで握っています。

ダン・チウのフォアハンドのグリップ
全体的にバランスよく指に力を入れてラケットを握る

--フォアハンドを打つときのグリップについて教えてください。

チウ 少し前までは、親指と中指と薬指でしっかり押さえるようにラケットを握ることが重要だと言われていました。そうすることで、フォアハンドのスイングがしやすくなるからです。これは、裏面にラバーを貼らない時代の頃で、裏面にラバーを貼って両ハンドでプレーをする今は、人さし指にも力を入れて全体的にバランスよく握ってフォアハンドを打ちます。
 裏面にラバーを貼らない頃のペンドライブ型の主なバックハンド技術はショートですが、ショートとフォアハンドを切り替える際にグリップも切り替える必要があり、特に人さし指に柔軟性が求められました。しかし、裏面打法を使う今は、グリップを切り替える必要がなくなりました。

--サービスを出すときにグリップは変えますか?

チウ それほど変えません。フォアハンドや裏面打法を打つときとほとんど同じです。サービスで重要なのは、親指だと思います。親指に少し力を入れて、ラケットを持つような感じです。
 サービスは自分の感覚によるところが大きいので、いろいろ試してみるとよいでしょう。

ダン・チウのフォアハンドドライブ



ダン・チウの裏面打法のグリップ
人さし指に力を入れてスイングの動きを止める

--裏面打法を打つときのグリップを教えてください。

チウ 裏面打法を打つときも、フォアハンドと同じようにバランスよく全体的にラケットをしっかり握ります。
 とはいえ、それは私の感覚で、皆さんが私のグリップを参考にしたとしても、ラケットを持つ感覚が良くなかったり、打球時に力が伝えにくかったりするようなら、それは良くありません。ラケットをしっかり握る感覚があり、力を生み出せるのであれば、それが最適なグリップです。
 ただし、一般的な裏面打法では、人さし指をしっかり握ることが重要です。なぜなら、裏面打法は斜め上方向へスイングするため、最終的にその動きを人さし指で止める必要があるからです。そして、親指や中指、薬指も含めて、全体的にバランスよく握ることが重要です。

ダン・チウの裏面打法



ダン・チウの用具
ラケットやラバーを長く使い続けるほど、
より良い感覚が得られると信じている

--続いて、用具について聞かせてください。なぜ、アリレート カーボンペン(特注)を使っているのですか?

チウ これはヘルムート・ハンプルのおかげだと思います。私が19歳か20歳くらいの頃、ドイツにはジュニアとシニアの間にU-23のナショナルチームがあり、その時のコーチがハンプルでした。ハンプルは非常に有名なドイツのコーチで、ティモ・ボルフランチスカのコーチも務めていました。
 ティモはずっとアリレート カーボンのラケットを使っていますが、ハンプルが私にこう言ったのを覚えています。「ああダン、アリレート カーボンはとても良いラケットだよ。試してみるべきだ。スピンもパワーもすごいんだ!」と。試してみたところ、気に入るようになりました。それ以来、10年くらい使い続けていると思います。

--アリレート カーボンを使い続ける理由を聞かせてください。

チウ この数年間で、新しいブレードや新しい形状を試してみて、より良いものやより良い感覚を見つけようとすることもありました。しかし、最終的には、ラケットやラバーを長く使い続けるほど、それらに慣れて全体的により良い感覚が得られると信じています。
 用具を頻繁に変えるのは良くないと思います。なぜなら、勝ち負けに依存するようになってしまうからです。例えば、ある用具で勝てば「この用具が良いんだ」と思うかもしれませんが、それはどちらかというとメンタル面の問題です。今使っている用具に良い感覚があるなら、それを使い続けるべきです。そうすれば、将来的にさらに良い感覚が得られるようになるはずです。

--チウ選手は負けても同じ用具を使い続けますか?

チウ その通りです。負けた原因はほとんどの場合、用具ではありません。相手が自分より強かったか、自分の調子が悪かったかのどちらかです。技術や戦術が十分でなかったことが原因です。原因はいろいろあるかもしれませんが、普通は「ラバーが悪かったからドライブがネットを越えなかった」というようなことはほとんどありません。こうしたことはめったに起こらないので、通常は用具のせいではありません。
 選手たちは若い頃に、用具のせいにしてはいけないということを学びます。責任は自分にあるのです。

--続いて、ラバーについて聞かせてください。両面にディグニクス09Cを使っていますが、どのあたりが気に入っていますか?

チウ 以前は表面にテナジー05ハードを使っていましたが、ディグニクス09Cが発売されたとき、すぐに使い始めました。裏面は長い間ディグニクス05を使っていましたが、その後ディグニクス09Cを試し、再びディグニクス05に戻し、そして今は両面でディグニクス09Cを使っています。
 私は、常にグリップのあるラバー(ボールをつかむ感覚が得られ、球持ちが良いラバー)が好きでした。最も重要なのはグリップとスピンです。時間があれば、より威力を出すことができるので、09Cは私の能力以上の高い質のボールを打つことができます。私の意見としては、09Cは他のラバーよりもスピン性能に優れており、私が必要とする最高の結果を生み出すことができます。
ほかのラバーと比べてもスピンが多いと思いますし、自分が求めるスピンと質を最も良い形で実現できます。

--ラケットの削り方について聞かせてください。人さし指の当たるところを親指側よりもやや深く削っているようですが?

チウ 人さし指は曲げてグリップ(柄)にかけますが、親指はただ真っすぐ置くだけです。もちろん、親指のところも削りますが、人さし指が当たる部分はもっと深く削っておく必要があります。そうしないと、長い時間練習したときに手が痛くなるかもしれません。そのため、人さし指を置くあたりはとてもソフトにする必要があります。

--親指と人さし指の股が当たる部分を薄く削っているようですが、理由を教えてください。

チウ その部分を削ってラケットを握ると、すぐに指先に感覚が伝わるからです。

全体的に浅めの削りだが、人さし指側の方が親指より削りが深い

親指と人さし指の股が当たるあたりを薄く削っているのが特徴的。「こうすると感覚が良い」とダン

↓動画はこちら

(取材協力=邱卓球塾 取材/まとめ=卓球レポート)

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