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全日本ジュニア男子優勝 
吉山和希インタビュー前編

 昨年の全日本卓球2024のジュニア男子決勝松島輝空(木下グループ)との同級生対決で熱戦の末に敗れ、惜しくも初優勝を逃した吉山和希(岡山リベッツ)が、全日本卓球2025、最後の全日本ジュニア男子で念願のタイトルを手に入れた。
 現代卓球の申し子と言わんばかりの前陣で繰り広げる両ハンド速攻で難敵を連破し2年連続の決勝進出を決めると、決勝では全中王者の川上流星(木下アカデミー)をストレートで退け栄冠を手にした吉山に、優勝までの道のりを振り返ってもらった。
 インタビュー前編では、全日本に臨むに当たっての準備とジュニア男子の試合の模様について詳しく聞いた。



自分が優勝するしかないと思っていた

----ジュニア男子では昨年、決勝でゲームオールの接戦の末に松島輝空選手に敗れ(松島輝空 3,-7,9,-9,8 吉山和希)、優勝を逃しました。今年は最後のジュニア男子に臨むに当たって、どのような心境でしたか?

吉山和希(以下、吉山) 去年2位だったので、もちろん優勝以外は目指していませんでした。松島選手は出ないと聞いてからは、自分が優勝するしかないと常に思っていました。

----松島選手が出ないと分かった時にはどのような心境でしたか?

吉山 松島選手を倒したいというのはもちろんありましたし、松島選手が出るなら勝つための準備を100%やるつもりでしたが、出ないと分かった時点で、自分以外には優勝させられないというか、自分以外の優勝はプライド的にもいい気分にはなれないと思いました。最後の全日本ジュニアということもあり、これを逃したら二度とチャンスはないと思って臨みました。

昨年のジュニア男子では決勝で松島に惜敗し、優勝を逃した

----警戒している選手はいましたか?

吉山 年下の選手がすごい強くて、川上選手(川上流星/木下アカデミー)や岩井田選手(岩井田駿斗/野田学園中)、渡部選手(渡部民人/JOCエリートアカデミー/星槎)、決勝に来るとすれば絶対にその3人の誰かだなと思っていました。中でも、最近の安定感や勢いを見ていると、川上選手が来る確率が一番高いし、怖いなと感じていました。

----今挙げた3選手との対戦成績は?

吉山 全員に勝ち越してはいますが、やはり全日本となると全然分からないというか、独特な雰囲気、緊張感があるので、自信はありましたが、怖さもありました。

----全日本を控えてどのような準備をしましたか?

吉山 12月の世界ユース選手権大会が終わってすぐ、邱さん(邱建新/邱卓球塾)のところで練習させてもらいました。以前も行かせてもらうことはありましたが、試合があってたまにしか行けませんでした。
 今回は12月から全日本までずっと邱さんのところへ行かせてもらって、そこで邱さんが練習メニューも考えてくださって、いっぱい練習ができたので、そこは自信になったと思います。すごいいい状態でした。

多くの名選手が指導を仰ぐ邱建新の門を吉山もたたいた

----邱さんの指導を受けるようになったのはいつからですか?

吉山 去年の8月ですね。邱さんに見てもらっている選手ってすごい選手ばかりじゃないですか。それもあって、個人的に毎日見てくれるコーチがほしいと思って邱さんにお願いしてみたら、快く受け入れてくれて、よかったです。
 邱さんは、練習の意図を選手にしっかり伝えてくれたり、選手の褒め方がすごいうまくて自信をつけてくれるところがいいですね。「これはこうだから、こうすればできる」みたいに具体的に教えてくれるのでとても分かりやすいです。

----具体的にはどこを強化してきましたか?

吉山 ここ1カ月半くらいはフォアハンドを結構多く練習してきました。以前はフォアハンドのボールが少し軽いのが課題でしたが、全日本ではフォアハンドがすごい得点につながったので自信になりました。
 打つポイントだったり、しっかり足を使って打つフットワーク練習だったり、力いっぱい打つ練習をしていたら、自然に体に染みついて強く打てるようになりました。

川上選手には松島選手に近い怖さがある

----ジュニア男子のトーナメントを振り返って、苦しい試合やポイントになった試合はありましたか?

吉山 序盤では4回戦の増田選手(増田凌志/静岡学園高)です。ジュニアの場合は、相手はもちろんですが、一番は自分との戦いだと思っていて、どうしても勝たなきゃいけないというプレッシャーを絶対に感じてしまうので、対戦相手みんなを強く感じるような今までにない緊張感がありました。
 相手からしたら、ほぼノンプレッシャーでやってくるので、何をしてくるか分からない怖さがあって、危なかったなと思います。4回戦も相手に先に10点取られたり、増田選手がペンホルダーということもあって意外性もすごくありました。
 苦戦しましたが、調子は悪くなかったので、調子どうこうではなく、気持ちの問題だったと思います。

----向かってくる選手に対してどのようにプレーするかは自分の中では確立されていますか?

吉山 やっぱり出足で、1ゲーム目を取りたいですね。1ゲーム目を取れば、気持ち的にも楽になるというか、落ち着けるので、1ゲーム目を取りたいと思ってプレーしていますが、今回は1ゲーム目を取るのは簡単ではありませんでした。4回戦と準々決勝が3対1でしたが、どちらも落としたのは1ゲーム目でした。

----ジュニア男子を通してスコア的には苦しい試合はなかったように見えますが、実際はどうでしたか?

吉山 ジュニア男子最終日の3試合は全部重要な試合でしたが、一番は決勝ですね。川上選手は2歳下ですが、最近の成長度を見ていても、練習相手をしても、すごい強くて、中学生とは思えないほど完成度が高いですし、やってて怖さを覚える選手です。

----具体的にはどのあたりに怖さを感じますか?

吉山 川上選手は松島選手に近いものがあると思っていて、バックハンドの感覚やチキータの質なんかが怖いですね。入ったときはしようがないと思わざるを得ないボールが多いので。ただ、川上選手の場合は結構淡々とやってくるのが分かっていたので、気持ちで絶対に負けないようにしようと思っていました。
 戦術としては、どうやったらワンテンポでも相手の対応を遅らせられるか、サービスのタイミングとかで相手を崩せるかを考えていました。それはある程度自分の思うようにできたと思います。お互いがやることも得意なところも分かっていたので、どうやって逆を突いて勝負をするかというところで点数が取れたと思います。

----相手のプレーをワンテンポ遅らせるために具体的にはどのような工夫をしたのですか?

吉山 相手がチキータに入るのをワンテンポ遅らせるために、サービスをハイトスで出したりロートスで出したり、コースを散らしたりしました。あとは、自分がレシーブのときも結構点数が取れたので、そこでも相手にプレッシャーを与えることができたと思います。
 サービスは邱さんのところに行くようになってから、毎朝、練習の前にサービスを見てもらっていたのが、すごく生きたと感じました。サービスを出す場所については邱さんから結構細かく指導されましたね。

サービスも練習の成果を発揮することができた

----試合前に邱建新コーチとはどのような話をしましたか?

吉山 邱さんは「大きいラリーだったら自信を持って大丈夫、絶対に負けないから」と言ってくれました。川上選手はサービス・レシーブもチキータもすごくうまいし、ロングサービスの処理もすごくうまいですけど、チキータさせないのは無理でもワンテンポ遅らせたらこちらも全然取れるので、それだけを心掛けてプレーしました。

----ベンチコーチとしての邱建新さんはどのような印象ですか?

吉山 すごく安心感があるので、言われたことを素直にやるだけだと思っていて、実際に、タイムアウトを取った後はほぼ100パーセント点数になっていたので、そういう面では「マジすげえ」と思っています。

----優勝を決めた瞬間はどのような心境でしたか?

吉山 「やっと終わった。よかった」という気持ちで、本当に解放された感じがしました。
 初めて本当に勝ちたいと思ったのは、中学3年生の時に準決勝で松島選手に負けて、「このままじゃちょっと厳しいな」と思った時でした。去年は本当に優勝を狙っていて、決勝で松島選手とああいう試合ができたので、今年こそはもう絶対に取らなきゃいけないと思っていたので、うれしかったですね。

優勝の瞬間は「本当に解放された」と吉山。悲願のタイトルを手中に収めた

後編に続く

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(取材=卓球レポート、文=佐藤孝弘)

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