夏になると、学生の皆さんには、「夏休み」という重点的に練習できる絶好のチャンスがあります。夏をどのように過ごすかで、その後の卓球は変わってくるはず。夏を有意義に過ごすためには、どんなことに留意すればよいのかを、卓球レポート1995年8月号「特集 夏に伸びる(文=渋谷五郎)」より抜粋して紹介しましょう。
得意技術を伸ばす
課題練習では、自分の短所の部分を良くしようと、一生懸命になる選手が多い。
短所を直すには、技術的に見ても、体で覚えるために反復練習に時間をかけることが要求される。また精神的にも、自信を持つまでにはかなりの時間が必要となる。
欠点を直すことは必要であるが、このように時間がかかり、しかもなかなか満足感を得ることが大変だ。またもしかしたら失敗して、ますます落ち込む羽目にもなりかねない。
練習のウエート配分を、自分の得意技術をさらに伸ばすことに多く置こう。長所が伸びれば短所がカバーされていくものだ。
精神面でのストレスなどを考えても、得意技術を練習した方がはるかに良いに決まっている。
ただし調子に乗り過ぎないことだ。乗り過ぎると惰性になる。惰性は不調になる原因となる。
新しい技にチャレンジ
夏休みは、自分にとって新しい技にチャレンジするチャンスだ。
技術レベルが高かろうと低かろうと関係ない。
これまでの枠から外れたところにある、新しい技に取り組むことにより、自分の卓球のスケールが一段と広がる。
すなわち、仮に新しい技をマスターできなくても、何か貴重なヒントを得たり、プレーの技術幅が広がる可能性があるのだから、大いにチャレンジする価値がある。
新しい技をマスターしても、実際に緊張した試合で使えるには、最低2~3カ月かかると思っておくことだ。そういう意味からも、夏は新技術にチャレンジする1年間のラストチャンスになろう。
サービス、レシーブ、ドライブの種類、スマッシュ、バックハンドと、チャレンジする技はいくらでもあるはずだ。
サービスでは、必ず反対になる出し方を意識し、セットにして覚えれば良い。
例えば、下回転とナックルか上回転、相手のバック側への長いサービスとフォア前への短いサービスを、できるだけ同じモーションで出す。
レシーブでは返すコースを考え、逆コースへはフェイントモーションを使ったり、考えれば簡単なものから複雑なものまで、数多くあり、事欠かない。
サービスは自分一人でできるから、簡単に取りかかりやすい。しかもゲームで1番得点に結び付けられる技術なのだ。それでありながら、平凡なサービスを出して、逆に相手にレシーブから主導権を奪われたりしている光景を多く見る。<第4回に続く>