何年かぶりに全日本マスターズの取材に行ってきた。私たち編集部が取材に行く大会ともなれば、競技レベルはトップクラスであることが多く、それに比例して選手たちの真剣度も高い。もちろん、卓球に真剣に取り組む選手たちのプレーこそが見る者の心を打つし、必然的に集中した選手たちのプレーはレベルも高くなる。そこからより多くのことを見て、学び、読者の皆さまにお伝えするのが私たちの仕事でもある。
そうした中で、「全日本」の名を冠しながらも「マスターズ」には独特の魅力があるとあらためて感じた。私たちが「卓球選手」として注目するトップアスリートとして活躍するためには多くの制約がある。年齢はその大きな1つだろう。30歳以上でないと出場できないマスターズは必然的にその制約を失っているといえる。だが、引き換えにとても大きな自由を手に入れているという気がする。かつて、日本の、世界の頂点を目指した選手も、仕事に就き、家庭を持ち、卓球を1度離れても、なおも頂点を目指せる。さらに、年齢が上のカテゴリーの中には、40歳から、50歳から卓球を始めたという強兵もいる。
もちろん選手たちは全日本チャンピオンの称号を目指して全国の予選を勝ち上がってきた猛者たちだ(エイティ、ハイエイティは予選なし)。だから、もちろん真剣だ。しかし、ミスしたときの表情や勝ったときの喜び、長年のライバルと握手を交わすときの笑顔には、どこか大人の余裕のようなものが漂う。一方で、大の大人がエッジの判定をめぐって対戦相手や学生審判に食ってかかるその姿もお手本にはならないかもしれないが、それもやはりとても魅力的だ。そして、その魅力は卓球の魅力でもある。
今後、卓球レポートは紙幅の制限のないウェブを主戦場としていく。その中で、より幅広く卓球というスポーツの魅力を伝えていくことができるのではないかと新たな可能性を感じている。
(卓球レポート編集部 佐藤孝弘)
[コラム]
笑顔のマスターたち
2017.11.10
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