張本の劇的な勝利をコートサイドで見たのは何度目だろうか。
2016年ジャパンオープンの21歳以下男子シングルス優勝、世界ジュニア選手権ケープタウン大会男子シングルス優勝、世界卓球2017デュッセルドルフ男子シングルス2回戦での水谷隼に対する勝利、世界卓球2018ハルムスタッド選考会優勝、平成29年度全日本選手権大会男子シングルス優勝、そして今回のライオン荻村杯ジャパンオープン男子シングルスの優勝だ。
最初に張本智和の写真を撮ったのは彼がバンビの部2連覇を達成した2011年の全日本ホープス・カブ・バンビの部のことだった。それから何枚の写真を撮ったのか、もはや数えることもできない程シャッターを押してきた。そして、その撮影は常に驚きとともにあったが、今回のジャパンオープンの馬龍と張継科を破っての優勝には、数ある勝利の中でもトップクラスの衝撃を感じた。
2人の世界チャンピオンから大金星を挙げたという結果だけではなく、今回のジャパンオープンではあらためて張本のプレーに驚かされるという体験をした。ここでは撮影者の視点から彼の強さの一端を紐解いてみたい。
バックハンドの打球点が早いことで知られる張本だが、今回、それを強く感じたのは張本の対戦相手を撮影している時だった。通常、一方の選手をファインダーに捉えるとき、プレーの全体像が見えなくなるため、私は、見えている選手の動き(視線の動きや準備動作)や打球音などから相手のボールを予測し、打球の瞬間を捉えるように心掛けている。
準々決勝の張本対馬龍戦で、馬龍を撮影していた私は、サービスを出した馬龍が面食らうような早さで張本のレシーブが返ってくるというシーンを何度も体験した。馬龍のインパクトの瞬間を狙うシャッターが全く間に合わないのだ。もちろん、それは私だけではなく、サービスを出し、相手の動きが見えているはずの馬龍ですらレシーブのコース、スピードを予測できずに後手に回ってしまう。その多くは張本がチキータレシーブをしたケースだ。
おそらく、こんな経験をしたことがなかったのだろう。近年、自信にあふれていた馬龍のプレーは萎縮し、表情からは勝利を確信する王者の威厳が消え去っていた。決してフロック(まぐれあたり)ではないこの勝利、そして、復調を感じさせた張継科を激戦の末に破っての劇的な優勝に沸いたのは日本のメディアだけではない。世界のメディアがどのようにこの「事件」を報じたのか、その一部をご紹介しよう。
ITTF Tomokazu Harimoto lifts trophy with dramatic win in Kitakyushu
北九州で劇的な勝利を挙げた張本智和がトロフィーを掲げる
https://www.ittf.com/2018/06/10/tomokazu-harimoto-lifts-trophy-dramatic-win-kitakyushu/
韓国 「月刊卓球」 중국 이긴 일본탁구! 세계탁구 지각변동 일어나나!?
中国を倒した日本!世界の卓球に地殻変動か!?
http://www.thepingpong.co.kr/news/articleView.html?idxno=4000
中国 「新華社」 张继科再负张本智和,称强大对手让中国队今后比赛不再寂寞
張継科またしても張本に敗れる、強敵の出現で中国は孤独から救われた
http://m.xinhuanet.com/sports/2018-06/11/c_1122965471.htm
ドイツ 「フランクフルター・アルゲマイネ」 Sensation im Tischtennis : Das Wunderkind schlägt zu
卓球界にセンセーション:大会を制した天才少年
http://www.faz.net/aktuell/sport/mehr-sport/tischtennis-wunderkind-harimoto-besiegt-ma-long-und-zhang-jike-15633045.html
スペイン 「ムンド・デポルティーボ」 Harimoto gana su segundo título ITTF con 14 años
14歳の張本がITTFの大会で2つ目のタイトルを獲得
https://www.mundodeportivo.com/otros-deportes/20180610/444293247106/harimoto-gana-su-segundo-titulo-ittf-con-14-anos.html
(写真・文=佐藤孝弘)