卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
第1回は、「不屈の男」と題し、水谷隼(木下グループ)が全日本卓球選手権大会(以下、全日本)で繰り広げてきた激闘の数々を紹介していく。
初めに、田崎俊雄(当時 協和発酵)との平成18年度全日本男子シングルス準決勝をセレクトしよう。
■ 観戦ガイド
水谷に立ちはだかった最初の試練
田崎の目の覚めるような速攻にも注目
平成30年度の全日本男子シングルスで前人未到のV10を達成した水谷隼だが、もちろんその偉業への道のりは順風ではなく、数々の激戦を切り抜けた末に積み上げられてきたものだ。
今回紹介するカードは、V10への道程で水谷の前に立ちはだかった最初の大きな試練だといえるだろう。
平成18年度全日本当時、青森山田高校の2年生だった水谷は、男子シングルス初優勝を目指して準決勝へ進出。そこで、右ペンホルダー表ソフト速攻型の田崎俊雄と相まみえる。
田崎は長く日本を支えてきた選手であり、その切れ味鋭い速攻は世界でも恐れられていた。加えて、田崎にとって水谷は、水谷が中学2年生の時の平成15年度全日本で対戦して金星を許し、図らずも水谷の才能を世に知らしめた、因縁の相手でもある。
試合が始まると、「(水谷を)格上だと思って向かっていった」と当時の卓球レポートに語った田崎が、曇りのない速攻でペースを握る。一方、水谷は、持ち前のふところの深いプレーで田崎の速攻に必死に耐えるが、田崎の大胆かつ丁寧な攻めに押され、土俵際まで追い詰められる。
勝敗がスリリングにうつろう接戦を、水谷はいかにして切り抜けるのか。
また、当時「神の手」とたたえられた田崎の雷光のようなフリックやスマッシュにも注目だ。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)