卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
第2回も、水谷隼(木下グループ)が全日本卓球選手権大会(以下、全日本)で繰り広げてきた激闘を紹介する。
今回は、坪口道和(当時 青森大)との平成19年度(2008年1月)全日本男子シングルス6回戦をピックアップしよう。
■ 観戦ガイド
楽勝ムードから一転して窮地へ
水谷は、この最大のピンチをどう乗り越えるのか
平成18年度全日本男子シングルス準決勝で田崎俊雄(当時 協和発酵)との激戦を乗り切り、決勝では吉田海偉(当時 日産自動車)をゲームオールで下して、当時の史上最年少記録となる17歳7カ月で全日本王者に輝いた水谷隼(当時 青森山田高)。
日本のエースとして認知された水谷は、平成19年度の全日本で男子シングルス連覇を目指すが、6回戦でピンチが訪れる。
相手は、坪口道和(当時 青森大)。坪口は、水谷より3歳年上の青森山田高校OBで、バック面に表ソフトラバーを貼るシェーク異質攻撃型だ。バックハンドでのミート打ちと、フットワークの速さを生かしたフォアハンドでの連続攻撃を得意とする。
試合は、序盤から水谷がサービス、レシーブで坪口を圧倒し、3ゲームを連取する。続く第4ゲームも水谷優位で試合が進み、ポイント8-5で水谷がリード。だが、ここで坪口がタイムアウトを取ってから、事態は一変する。
後がなくなったことで気持ちが吹っ切れた坪口は、得意の快足を生かしたフォアハンド連打で、水谷を逆に窮地へと落とし込む。
「勝てそうだ」と思った瞬間、その心のわずかな隙を相手に突かれて試合の流れを失ってしまう経験は、選手ならば一度ならずとも心当たりがあると思うが、この試合の水谷は、まさにそのケースに陥った。
楽勝ペースから一転、劣勢に転んでしまった状況を再び盛り返すのは並大抵のことではない。苦境を脱しようとする水谷のプレーやしぐさは必見だ。
一方、幾度となく水谷にリードされても、くじけずに食らいつく坪口の気迫の込もったプレーにも注目してほしい。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)