卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
初回シリーズは、水谷隼(木下グループ)が全日本卓球選手権大会(以下、全日本)で繰り広げてきた激闘を厳選し、紹介している。
今回は、岸川聖也(ファースト/当時 スヴェンソン)との平成20年度(2009年1月)全日本男子シングルス準々決勝をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
卓球ファン垂涎のカードが実現
劣勢の場面で水谷が繰り出したサービスとは?
平成19年度全日本男子シングルス6回戦で坪口道和(当時 青森大)との接戦を切り抜け、2連覇を果たした水谷隼。青森山田高校から明治大学に進学した平成20年度の全日本では、男子シングルスV3を目指すが、準々決勝でまたも強敵を迎える。
相手は、岸川聖也。
水谷にとって岸川は、強敵であると同時に、自身が成長してきた過程で外せないキーパーソンでもある。
水谷より2歳年上の岸川は、その才能を見込まれ、当時あまり結果を出せずにいた日本男子の希望となるべく中学2年生からドイツへ渡り、ブンデスリーガで腕を磨いていた。
水谷も中学2年生の時、岸川の背中を追うように渡独。そうして、岸川と寝食を共にしながらプロリーグの試合や練習に身を投じたことが、水谷の成長を促進させていく。
多感な時期をドイツで過ごした水谷と岸川の二人が、世界ジュニア卓球選手権大会男子団体優勝をはじめ、世界選手権大会男子団体や男子ダブルスでのメダル獲得など、後に日本へ栄光の数々をもたらしたことは、多くの卓球ファンの知るところだろう。
その水谷と岸川の激突に、日本中の卓球ファンの視線が集中した。
互いに手の内を知り、日の丸を背負う自覚を持つ両者の試合は、今見ても時代を感じさせないほどハイレベルなラリー戦になる。
正確無比なバックハンドと広角に打ち分けるフォアハンドで水谷を揺さぶり、追い詰めようとする岸川。一方、ラリー戦の強さと機を見た速攻で一歩も引かない水谷。
終盤、岸川が主導権を握るが、「『水谷は大学生になって弱くなった』と言われるのだけは嫌だった」と当時の卓球レポートに振り返った水谷は、なんとしても全日本V3を果たすべく、意外なサービスから猛追する。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)