卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
「100年に一度の大激戦」として卓球ファンの間で語り継がれる2001年世界卓球選手権(以下、世界卓球)大阪大会男子団体準決勝の中国対韓国戦をお届けするシリーズも最終回。
ラストは、5番の劉国正(中国)対金擇洙(韓国)の試合を紹介しよう。
※当時の団体戦のルールは1ゲーム21ポイント制の3ゲームスマッチ。サービスは5本交替
■ 観戦ガイド
歴史的大戦はいよいよクライマックスへ
筋書きのないドラマの結末を見届けよ
中国が2対1リードで迎えた4番の孔令輝(中国)対呉尚垠(韓国)は、地力で勝る孔令輝が難なく勝って決勝進出を決めるかと思われたが、呉尚垠が覚醒。呉尚垠は、「アジアの大砲」と呼ばれた強烈な両ハンドドライブで孔令輝にストレート勝利し、韓国がラストに望みをつないだ。
一方、中国は、頼みのエースがまさかの2点を落とし、一転して雲行きが怪しくなった。
「100年に一度の大激戦」と評される試合は、いよいよクライマックスを迎える。
勝敗が決まる5番、中国は1番で先制点を挙げた劉国正。対する韓国は、エースの金擇洙だ。
2対2のラストまで至れば多少の実力差は関係がない。そうした一般論を踏まえても、2番で孔令輝を圧倒した出来やこれまでの実績から金擇洙が優位だ。
これは中国が負けるのではないか。4番で勝負ありとの見立てが崩れ、会場の空気が再び引き締まる中、運命のラストが始まった。
第1ゲームは予想通り、金擇洙が先制し、第2ゲームも金擇洙の勢いは衰えず、劉国正は3-8と引き離されてしまう。会場の誰もが韓国勝利を予感した時、中国の蔡振華監督が、後に「蔡振華マジック」と評されるタイムアウトを取ってから、試合は筋書きのないドラマを紡いでいく。
この試合を現地の大阪市中央体育館で生観戦する幸運に恵まれたが、映像を見て、決着に向かって徐々に張り詰めていく当時の会場の空気や高まっていく熱気をありありと思い起こすことができた。
この試合に言葉はいらない。己のプライド、ベンチの期待、国家の威信。たくさんのものを背負った二人の必死の攻防に、心を揺さぶられてほしい。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)