卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズは、豪快なプレースタイルで「小さなヘラクレス」と称されたクレアンガ(ギリシャ)の名勝負をお届けする。
今回は、サムソノフ(ベラルーシ)との2003年世界卓球選手権(以下、世界卓球)パリ大会男子シングルス4回戦を紹介しよう。
■ 観戦ガイド
優勝候補の一角・サムソノフとのクロスゲームは
好試合続出のパリ大会の中でも指折りの名勝負
何志文(スペイン)の速攻に苦しみながらも男子シングルス2回戦を切り抜けたクレアンガは、続く3回戦で実力者のケーン(オランダ)に豪快なフルスイングで快勝すると、4回戦へと駒を進めた。
世界卓球男子シングルスベスト8入りを賭け、4回戦でクレアンガが対戦するのはサムソノフ(ベラルーシ)だ。
今なお若手の壁としてそびえ立つサムソノフは、トップ選手としての力と世界ランキングを長く保ってきた畏怖すべき鉄人だが、このパリ大会当時の年齢は27歳で、彼が最も脂が乗っていた時期だったといえる。世界ランキングも3位(2003年5月1日発表)につけており、サムソノフは紛れもない優勝候補の1人として男子シングルスにエントリーしていた。
台上やブロックがうまく、ラリー戦に抜群の強さを見せるサムソノフは、クレアンガにとって激戦必至の相手だ。
試合は、クレアンガのフルスイングと、クレアンガの剛球を受け止め、機を見て反撃するサムソノフのプレーとが拮抗し、予想通りのクロスゲームになる。
しかし、この大会の5年前に行った卓球レポートのインタビューで「サムソノフは現在、すべてのトップ選手にとって大きな壁になっている。確かに僕はサムソノフに何度か勝っているけど、負けたこともあるし、勝った試合はいつも接戦だった。
僕が彼に対して相性がいいからといって、僕が彼より強い選手だとは思わない。また、今後どうなるかも分からない。
今までサムソノフに勝てたのは、おそらく僕のスタイルが彼の卓球に合わなかったからだろう(卓球レポート1998年9月号)」と、サムソノフの力を認めつつも相性のよさを語っていたクレアンガが、大詰めになってフルスイングを加速させていく。
7日間でのべ10万人もの観客を会場のオムニスポーツパレス(現 ベルシー・アリーナ)に動員した2003年世界卓球パリ大会は、選手たちが大観衆の熱気に背中を押されたのか、好ラリー、好試合が続出したが、その中でも指折りの名勝負を堪能してほしい。
(文中敬称略)
(文/動画=卓球レポート)