卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今回は、9月に韓国の平昌で開催された第26回アジア卓球選手権大会(以下、アジア選手権)での熱戦をセレクトして紹介する。
ここでは、男子団体決勝中国対中華台北の1番、王楚欽(中国)対高承睿(中華台北)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
中華台北のホープが躍動!
最強中国の次期エースと白熱の先取点争い
男子団体の決勝は、準々決勝で日本、準決勝で韓国を下した中国と、準々決勝でイラン、準決勝でインドを下して勝ち上がってきた中華台北の争いになった。
中華台北には、中国の誰に対しても互角の勝負ができる林昀儒、経験豊富な42歳の鉄人・荘智淵がいるが、層の厚さでは世界卓球連覇中の樊振東、世界卓球2023ダーバン2位の王楚欽、同3位の梁靖崑、レジェンドの馬龍らを擁する中国が断然上だ。中国優位の見立てで始まった決勝だったが、試合が始まると中華台北の奮闘によって予想を大きく上回る熱闘が繰り広げられた。
そのきっかけをつくったのが、中華台北の1番を任された18歳の新鋭・高承睿だ。この名前に聞きなじみのある日本の卓球ファンはそう多くないと思うが、高承睿は小学6年生の頃より荘智淵が主催する卓球場の寮に入って腕を磨いた選手で、16歳からシニアのナショナルチーム入りを果たした中華台北期待の若手だ。2022年アジアジュニア選手権大会男子シングルス準優勝や2022年WTTユースコンテンダー ダーウィンU19男子シングルス優勝、2023年WTTコンテンダー リマ男子シングルス準優勝などの実績はあるが、シニアではまだ無名に近い。
大抜擢(だいばってき)ともいえる高承睿が相対するのは、王楚欽だ。中国次代のエースを確実視されている王楚欽は、サービス・レシーブに長け、両ハンドとも正確かつ多彩で、なおかつパワーもある。力や実績では王楚欽の方が一枚も二枚も上だ。
高承睿の体の線の細さも相まって、果たして、この中華台北の若手は王楚欽に太刀打ちできるのか。そんな声がささやかれる中、ラブオールの声がかかると、高承睿が新鋭とは思えぬ対応力と確かなテクニックで王楚欽を揺るがしていく。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)