卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今回は、9月に韓国の平昌で開催された第26回アジア卓球選手権大会(以下、アジア選手権)での熱戦をセレクトして紹介する。
ここでは、男子団体決勝中国対中華台北の2番、樊振東(中国)対林昀儒(中華台北)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
王者の意地と天才のひらめきが
火花を散らす至高のエース対決
1番は新鋭の高承睿(中華台北)が非凡なプレーで王楚欽(中国)に肉薄するも、王楚欽がからくも逃げ切って中国が先制点を挙げる。
続く2番は中国が樊振東、一方の中華台北は林昀儒を持ってきた。
世界卓球男子シングルス連覇(2021ヒューストン、2023ダーバン)の樊振東は、名実ともに世界最高の選手である。優れた技術や戦術に加え、樊振東は韓国との男子団体準決勝、林鐘勳との一戦でも示したように、相手が全力を引き出して向かってきても受け止め、はね返す対応力の高さと心の強さも備えており、心技体に隙のない最強中国のエースだ。
一方の林昀儒も、逸材として注目されたジュニア時代から順調に成長を遂げ、今や押しも押されぬ世界のトップ選手の仲間入りを果たした。特に、サービスとチキータは世界一と言って差し支えない威力を誇り、中国が最も警戒する選手の一人である。このアジア選手権の直前に行われたWTTコンテンダー アルマトイでは並み居る強豪を抑えて優勝しており、自信を深めて平昌に乗り込んできた。
勝敗の行方を大きく左右するエース同士の一戦は、予想通りハイレベルな激闘になる。
第1ゲームは得意のサービスとチキータを軸に林昀儒が先取するが、第2ゲーム、今度は樊振東が得意のラリーに持ち込んで打ち勝ち、すかさずタイに戻す。涼しい顔で鋭いボールを決める林昀儒と、世界随一の両ハンド攻守で一歩も引かない樊振東の試合はゲームオールまでもつれるが、10−8と林昀儒がマッチポイントを握り、サービスは林昀儒。林昀儒はここまで樊振東から実に10本以上のサービスエースを奪っており、これは中華台北が1点を返すか。そう思われた刹那、最強中国のエースとして勝利をあきらめない樊振東が渾身(こんしん)のプレーで猛追を開始する。
樊振東の王者としてのプライドと林昀儒の天才的なプレーがぶつかり合ったからこそ生まれた、今大会で一、二を争う名勝負を堪能してほしい。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)