卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
このシリーズでは、9月に韓国の平昌で開催された第26回アジア卓球選手権大会(以下、アジア選手権)での熱戦をセレクトして紹介する。
今回の名勝負は、田中佑汰(日本)対王楚欽(中国)の男子シングルス2回戦をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
「魔8」で起きた最大の衝撃!
田中佑汰が中国の次期エースを相手に躍動する
前回紹介した女子シングルス2回戦の早田ひな(日本)対李恩慧(韓国)戦同様、男子シングルスも序盤から熱闘が繰り広げられたが、中でもハイライトは田中佑汰(日本)対王楚欽(中国)の2回戦だ。
パリオリンピックシングルス選考ポイントで3位につけてアジア選手権男子シングルスにエントリーした田中は、1回戦でタイの選手に快勝すると、2回戦で王楚欽と対戦するという厳しいドローになった。
世界卓球2023ダーバン男子シングルス2位で世界ランキング2位、今大会も第2シードで優勝候補の王楚欽は、世界ランキング69位の田中にとって高き壁だ(2023年8月29日発表の世界ランキング)。精巧な両ハンド攻守で力をつけてきている田中だが、中国の次期エース候補筆頭である王楚欽にはさすがに厳しいか。
そんな安易な予想を立てている中で始まった試合は、王楚欽が巧みなサービスとレシーブから威力ある両ハンドにつなげ、第1ゲームをあっさり先取する。予想通り、力の差を感じさせる立ち上がりだったが、しかし、「自信はそこまでなかったけど、思ったより対応できた」と振り返る田中が第2ゲームのジュースを物にすると、多彩で正確なバックハンドとコンパクトなフォアハンドカウンターで王楚欽を徐々に追い詰めていく。
余談になるが、この試合が行われた第8コートは、直前の試合で張本智和(日本)がベテランのノルージ(イラン)に敗れたり、翌日には女子の陳幸同(中国)がA.ムカジー(インド)に敗北寸前まで追い込まれたりするなど、波乱が起きやすい魔の第8コート、通称「魔8(まはち)」と我々メディアに陰で呼ばれていた。
その魔8で田中が巻き起こした、場内はおろか世界中の卓球ファンを驚かせた衝撃を、ぜひ味わっていただきたい。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)