卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
このシリーズでは、9月に韓国の平昌で開催された第26回アジア卓球選手権大会(以下、アジア選手権)での熱戦をセレクトして紹介する。
アジア選手権の熱闘を振り返るラストは、馬龍(中国)対樊振東(中国)の男子シングルス決勝をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
世界王者同士の究極バトル!
真の最強を決する勝負の行方は!?
韓国の冬のリゾート地・平昌で8日間のうちに男女団体、男女ダブルス、混合ダブルスの計7種目が行われたハードなアジア選手権も男子シングルス決勝の一試合を残すのみとなった。
組み合わせは、馬龍(中国)対樊振東(中国)。大会のフィナーレを飾るのにふさわしいカードだ。
馬龍は準々決勝で林高遠(中国)との息詰まる同士打ちをぎりぎりで制すと、準決勝では中国にとって最大のライバルの一人である林昀儒(中華台北)に完勝する充実のプレーで決勝まで勝ち上がってきた。
一方の樊振東は、準々決勝で黄鎮廷(香港)、準決勝で梁靖崑(中国)との打撃戦に打ち勝ち、こちらも順調な勝ち上がりを見せている。
両者はこれまで国内外で幾度も対戦しているが、世界卓球2017デュッセルドルフ、2017年全中国運動大会(世界卓球やオリンピックで勝つより難しいと言われる中国で4年に1度開催される大会)、そして東京オリンピックと、ビッグマッチの決勝では馬龍が樊振東をことごとく抑えている。
現世界王者の樊振東だが、初優勝を遂げた世界卓球2021ヒューストンに馬龍は不参加で、連覇を果たした世界卓球2023ダーバンでも馬龍とは対戦していない。そのため、なんとしても馬龍越えを果たし、自身が最強であることを証明したい一戦だ。
対する馬龍も、東京オリンピック以降はビッグタイトルから遠ざかっており、ここで世界王者の樊振東を倒して、あらためて力を示したいところだろう。
試合は探り合いの静かな立ち上がりでスタートするが、正確なストップからフォアハンドにつなげた馬龍が第1ゲームを先制する。
続く第2ゲームは、ラブオールで樊振東がチキータをミスしたところでタイムアウトを取るという意外な展開でスタートする。アジア選手権のタフな日程の疲れか、あるいは試合に集中しきれていない自分を戒めるためだったのか真意のほどは定かではないが、唐突なタイムアウトに場内がどよめく中、これを機に樊振東が精彩を取り戻すと、試合は白熱の度合いを一気に増していく。
現代卓球が生んだマスターピース、馬龍と樊振東。真の最強たらんと両雄が繰り出し合った技の数々には、今の卓球の全てが詰まっている。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)