卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体グループリーグ日本対中華台北の1番、張本智和(日本)対高承睿(中華台北)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
グループリーグ首位通過をかけた大一番
エース張本と新鋭の高承睿が先取点を激しく争う
世界卓球2024釜山はグループリーグと、グループリーグを勝ち上がったチームによる決勝トーナメントで優勝が争われる。
グループリーグは8つのグループに分けられ、それぞれのグループに5チームずつが振り分けられて総当たり戦を行い、1位から3位までが決勝トーナメントに進出する。1位通過チームにはシードが与えられ、2位、3位のチームは決勝トーナメント1回戦を戦う。このレギュレーションを踏まえると、上位を目指す上では、決勝トーナメントで強豪チームのシード下に入る可能性が低い1位通過が必須になる。
前回の世界卓球2022成都に続くメダルを目指す日本男子は、中華台北、ナイジェリア、チェコ、マダガスカルと同グループに入った。日本男子が1位通過を目指す上で最大のライバルが中華台北だ。絶対エースの林昀儒に大ベテランの荘智淵、成長目覚ましい高承睿の陣容は強力で、その力は日本と比べても遜色がない。
そして、予想通り、日本対中華台北の一戦は全グループリーグの中でも随一の熱戦になる。
グループリーグ首位通過を懸けた大一番、日本のトップは張本智和。今年の1月に行われた全日本卓球選手権大会男子シングルス決勝で戸上隼輔との球史に残る激闘を制し、名実ともに日本のエースとして今大会の先陣を任された。
前回ともに活躍した盟友の戸上がインフルエンザで離脱したことにより、今大会の男子日本代表で世界卓球の団体戦経験者は張本ただ一人。それだけに、張本にかかる期待とプレッシャーは大きい。
対する中華台北は、19歳の高承睿を起用してきた。中華台北が大きな期待を寄せる若手で、荘智淵が私費を投じて開いた卓球場で力をつけてきた選手だ。レシーブの安定感とバックハンドの多彩さは非凡で、思い切りもよく、2023年アジア卓球選手権平昌大会男子団体決勝では王楚欽(中国)をあと一歩まで追い詰め、その存在を世界に知らしめた。グループリーグの高承睿の戦いぶりを見ると、アジア選手権時に比べて体の線が少し太くなったせいか、パワーが増した印象だ。
地力では張本が上だが、躍進目覚ましい高承睿の勢いも侮れない。首位通過を占う上で重要な一戦は、高承睿が格上の張本に対してアグレッシブに攻め、それを張本が受けて立つ展開でもつれるが、「(世界卓球団体戦経験者として)自分が背中を見せる立場」と今大会の日本チームを引っ張る覚悟を固めていた張本が、粘り強く得点を重ねていく。
(文中敬称略)
↓動画はこちら
(文/動画=卓球レポート)