卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、男子団体グループリーグのドイツ対カザフスタンの2番、ゲラシメンコ(カザフスタン)対オフチャロフ(ドイツ)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
充実のプレーで大きな存在感を見せたゲラシメンコ
強敵オフチャロフに対し、丁寧な台上でペースを奪う
3人で5試合を戦う世界卓球の団体戦は、1人の選手が活躍したからといってチームが勝ち上がれとは限らない。しかし、上位に勝ち上がることができなかったチームの中にも際立ったプレーを見せる選手が現れる。
今大会の男子団体では、その筆頭がゲラシメンコ(カザフスタン)だ。
ゲラシメンコは、ドイツ、イングランドら強豪チームがそろうグループ2において7戦全勝でカザフスタンのグループリーグ突破をけん引し、決勝トーナメントに入っても、チームは敗れたもののインドから2点を奪い、今大会9戦負けなしと大きな存在感を見せた。
そのゲラシメンコのプレーの充実ぶりを、グループリーグのドイツ戦から紹介する。
2大会連続で決勝に進出しているドイツの布陣は、ダン・チウ、オフチャロフ、フランチスカ。いまなお世界トップの力を持つボルが大会直前の故障で不参加というアクシデントに見舞われたものの、他チームがうらやむ豪華トリオだ。
ドイツ対カザフスタン戦のトップは、今大会ドイツでエース起用されているダン・チウが、カザフスタンの若手・クルマンガリエフにストレートで快勝し、2番のオフチャロフ対ゲラシメンコを迎えた。
オフチャロフは強豪ドイツの支柱の一人であり、東京オリンピック男子シングルス銅メダルを筆頭に数々の栄光を築いてきた選手だ。個性的なバックハンドサービスから繰り出される両ハンドは安定性と威力を兼ね備えており、ラリー戦に抜群の強さを誇る。
一方のゲラシメンコは、ドイツのブンデスリーガを主戦場に力をつけてきた選手だ。プレースタイルは、現代卓球のスタンダードともいえる両ハンドに隙のないシェーク攻撃型で、オフチャロフ同様、打ち合いに強い。年齢は27歳で、ジュニア時代から世界で活躍し、世界ランキングは40位とトップ選手の中では中堅的なポジションに位置している。
試合が始まると、ゲラシメンコがストップを中心とした丁寧な台上プレーで主導権を握る。柔らかいタッチから繰り出す回転の強弱や打球スピードの緩急も巧みで、経験豊富で対応力の高い格上のオフチャロフを引き離していく。
チキータをほとんど使わず、ストップ主体に試合を進めていくゲラシメンコのプレーは安定感があり、そこから学ぶべき点は多い。特に、勝負を決めた最後の1本には、ゲラシメンコのタッチの良さが鮮明に表れている。
(文中敬称略。年齢、世界ランキングは大会時)
↓動画はこちら
(文/動画=卓球レポート)