卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、およそ半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、2月に韓国の釜山で開催された第57回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2024釜山)で繰り広げられた激闘の軌跡をたどる。
今回は、女子団体決勝の中国対日本の5番、陳夢(中国)対張本美和(日本)の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
世界卓球史に残る名勝負もいよいよフィナーレ
世界一を託された二人の必死の攻防の行方は?
日本が2対1と王手をかけて迎えた4番の孫穎莎対早田ひなのエース対決は、2番で陳夢を下したプレーの出来から早田にも分があると思われたが、そんな期待に冷や水を浴びせるように孫穎莎が圧倒的なプレーで早田にストレート勝利し、世界一の行方はラストに委ねられた。
中国対日本の決勝は、この世界卓球2024釜山で5大会連続となるが、過去4大会はいずれも日本が敗れている。加えて、過去4度の決勝のうち、日本が勝ち点を挙げたのはわずか1(2018年ハルムスタッド大会の1番で伊藤美誠が劉詩雯に勝利)と、中国をなかなか追い詰められない試合が続いていた。
しかし、今大会では、1点を取ることすらままならなかった中国に対し、先に2点を奪って王手をかけた。4番で早田が決められなかったとはいえ、中国の牙城を激しく揺さぶっている状況だ。
世界一を決めるラストを戦うのは、中国が陳夢、日本は張本美和。
客観的に見れば、15歳の張本にとって、実績十分の陳夢は荷が重い相手だ。しかし、躍進を続ける張本の力がさらに覚醒する可能性はあることに加え、絶大なプレッシャーがかかるラストは実力差が最も影響しにくいポジションだ。ラスト勝負は、格上の中国を倒す上で日本が持っていきたかった形の1つであり、張本にも十分勝機はある。
運命のラストが始まると、「先輩方が笑顔で送り出してくれた。こんな経験は自分にしかできない。ただ頑張ろうという一心だった」と言う張本が、バックハンドでの思い切ったストレート攻撃を軸に陳夢を圧倒し、第1ゲームを先制する。
第2ゲームも陳夢と互角に打ち合う張本のプレーは勝利を予感させるものだったが、しかし、中国の最後の砦(とりで)となった陳夢もフォア前へのサービスを起点に引き下がらない。
一心不乱に両ハンドを振って強敵に立ち向かう張本と、絶対に負けられないプレッシャーをこらえながら得点を重ねる陳夢。
決着を任された二人の懸命なプレーが胸に迫る、世界卓球史上に残る名勝負のフィナーレを見届けてほしい。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)